核心解説
この問題は、
溶連菌感染後急性糸球体腎炎 (Acute Post-Streptococcal Glomerulonephritis, APSGN) の経過中に生じる
高血圧性脳症 (Hypertensive Encephalopathy) の前駆症状と、進行した場合の危険症状を問うています。急性糸球体腎炎では、
糸球体の炎症 (Glomerular Inflammation) による糸球体濾過量 (GFR) の低下で、体内に
ナトリウム (Na) と水分が貯留 し、循環血漿量が増加します。これにより、急激な
高血圧 (Hypertension) が引き起こされます。
この急激な血圧上昇(本例では入院時の130/80mmHgから148/88mmHgへ上昇)は、脳の細動脈の自動調節能を破綻させ、
最重要! 脳血流の過剰な増加と
脳血管透過性の亢進 (Increased Vascular Permeability) をきたします。これが
高血圧性脳症 の病態であり、初期症状として激しい頭痛、嘔気・嘔吐が出現し、進行すると
意識障害 (Consciousness Disturbance)、けいれん (Convulsion) をきたす危険があります。
本症例では、既に「頭が痛い」「気持ち悪い」という前駆症状があり、血圧が急上昇しているため、
意識障害 が最も起こりうる症状です。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): 本問は
急性糸球体腎炎 (APSGN) の急性期合併症である
高血圧性脳症 の理解を問うています。病態の中核は、
循環血漿量増加 → 急激な血圧上昇 → 脳血管自動調節能破綻 → 脳浮腫 という一連の流れです。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): 高血圧性脳症が進行すると、
最重要! 意識レベル低下(意識障害)が生じます。これは脳浮腫の直接的な結果であり、緊急対応が必要な徴候です。頭痛と嘔気は初期症状であり、さらに進行した状態が意識障害です。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
-
混同注意! ①番の眼のかゆみはアレルギー症状であり、急性糸球体腎炎の直接的な症状とは関連が薄いです。
- ③番の耳漏は中耳炎などの感染徴候で、本例の病態とは無関係です。
- ④番の鼻閉もアレルギー性鼻炎や感冒症状であり、急性糸球体腎炎の合併症とは言えません。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): 急性糸球体腎炎の三大合併症は、①高血圧性脳症、②
急性腎障害 (Acute Kidney Injury)(乏尿・無尿)、③
心不全 (Heart Failure)(肺水腫)です。これらは全て循環血漿量増加が原因であることを覚えておきましょう。
概念整理:
-
急性糸球体腎炎 (APSGN): 溶連菌感染後1~3週間で発症。糸球体の炎症によりGFR低下、Naと水分貯留 →
高血圧、
浮腫、
血尿、
乏尿。
-
高血圧性脳症: 急激な血圧上昇により脳血管の自動調節能が破綻し、脳血流が増加し脳浮腫を生じる。前駆症状:頭痛、嘔気・嘔吐。進行症状:意識障害、けいれん、視力障害。
一目で比較!:
| 症状/所見 | 急性糸球体腎炎 | ネフローゼ症候群 |
|---|
| 血圧 | 高血圧 | 正常~低血圧 |
| 浮腫 | 眼瞼~全身(炎症性) | 全身(低アルブミン性) |
| 尿所見 | 肉眼的血尿、赤血球円柱 | 高度蛋白尿 |
| 血清補体価 | 低下(CH50, C3) | 正常 |
看護過程ポイント:
-
アセスメント: バイタルサイン(特に血圧は小児でも正確に測定)、尿量(乏尿の有無)、体重、浮腫の程度、神経症状(頭痛、嘔気、意識レベル)を経時的に観察。
-
看護診断: 【組織灌流不全(脳)のリスク】、【体液過剰】、【急性疼痛(頭痛)】などが優先される。
-
計画・実施: 床上安静の遵守、塩分制限食の提供、血圧が上昇した場合の安静保持、検温・血圧測定の頻回実施。医師への報告基準(血圧値、症状)を明確にしておく。
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評価: 血圧が安定し、頭痛・嘔気が消失、意識レベルが清明であることを確認。
暗記のコツ:
「
糸球体腎炎の三悪」=「
高血圧脳症(意識障害)、
心不全(肺水腫)、
腎不全(乏尿)」と覚えましょう。これらは全て「水と塩分が体に溜まる」ことから来ています。
国試頻出ポイント:
小児の急性糸球体腎炎では、「血圧上昇 + 頭痛・嘔気 → 高血圧性脳症 → 意識障害・けいれん」という流れが頻出です。特に「血圧148/88mmHg」という具体的な数値が示された場合は、高血圧の合併症を疑うクセをつけましょう。
出題パターン注意!:
本問のような状況設定問題では、「今のAちゃんに何が最も起こりやすいか」と「看護師は何を優先すべきか」に発展します。例えば「次の看護師の対応で適切なのはどれか」という問題に繋がり、医師への報告、安静保持、抗けいれん薬の準備などが選択肢になります。