核心解説
この問題は、
高齢者の日常生活動作(Activities of Daily Living: ADL)の評価指標、特に
基本的日常生活動作(Basic ADL: BADL)と
手段的日常生活動作(Instrumental ADL: IADL)の区分を理解しているかを問うています。
核心概念の分析 (Key Concept)
ADLは、人が自立して生活するために必要な動作を評価する指標です。これは階層構造を持ち、生命維持に直結する基本的な動作(BADL)と、より複雑で社会的な生活を営むための応用的な動作(IADL)に大別されます。この問題では、BADLに該当する動作を正しく選ぶ必要があります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は、①「整容」と③「階段昇降」の2つです。
①
整容(Grooming): 顔を洗う、歯を磨く、髪を整えるなど、身だしなみを整える動作です。これは食事、排泄、入浴、更衣と並ぶ基本的なセルフケア動作であり、BADLに含まれます。
③
階段昇降(Stair Climbing): 階段を上り下りする動作です。これは移動能力の一部として評価され、BADLの中でも特に「移動(Transfer / Locomotion)」の項目に含まれます。バランス機能や筋力が要求されるため、転倒リスクの評価にも重要です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ②「意思疎通(Communication)」は、言語的理解や表出の能力を評価する認知・社会的機能ですが、ADLの評価項目として直接的にBADLに含まれることは通常ありません。BADLはあくまで身体的な動作を中心としています。
④「金銭管理(Money Management)」と⑤「服薬管理(Medication Management)」は、
手段的日常生活動作(Instrumental ADL: IADL)の代表的な評価項目です。IADLは、電話の使用、買い物、食事の準備、家事、洗濯、交通機関の利用など、より複雑で高次な生活機能を評価します。これらはBADLよりも早期に低下が見られることが多く、認知機能の影響を強く受けます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
BADLとIADLの違いを理解することは、高齢者の介護度判定や、退院支援における在宅復帰の可否判断に直結します。例えば、BADLが自立していてもIADLが低下している場合、在宅生活で何らかの支援(訪問介護など)が必要となる可能性があります。逆に、BADLが低下している場合は、より濃厚な介護(例:特別養護老人ホームへの入所)を検討する必要があります。
概念整理
| 区分 | 評価内容 | 特徴 |
| BADL(基本的ADL) | 食事、排泄、更衣、入浴、移動(歩行・階段昇降)、整容 | 生命維持に直結する基本的動作。低下すると24時間の介護が必要になることが多い。 |
| IADL(手段的ADL) | 買い物、食事準備、洗濯、掃除、金銭管理、服薬管理、電話、交通機関利用 | 社会的・家庭内での自立した生活に必要な応用的動作。認知機能の低下や加齢によりBADLより先に低下する。 |
一目で比較!
BADL vs IADL:BADLは「生きるために必要な最低限の動作」、IADLは「社会で生活するために必要なより複雑な動作」と捉えると覚えやすいです。国試では、「整容」や「階段昇降」をBADLと即答できるか、「金銭管理」や「服薬管理」をIADLと分類できるかがポイントです。
看護過程ポイント
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アセスメント:入院時や高齢者の健康診査時に、BADLとIADLの両方を評価することが推奨されます。特に退院支援では、患者のADLレベルを正確に評価し、必要な社会資源(介護保険サービスなど)を検討します。
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看護診断:BADL低下に対しては「セルフケア不足症候群(Feeding, Bathing/Hygiene, Dressing/Grooming, Toileting)」、IADL低下に対しては「家事維持困難」や「転倒リスク状態」などが該当します。
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介入:BADL低下には、生活リハビリテーションや福祉用具の導入を検討します。IADL低下には、認知機能の評価と、家族や地域包括ケアシステムとの連携が重要です。
暗記のコツ
BADLは「食事、排泄、更衣、入浴、移動(歩行・階段)、整容」の6つと覚えましょう。「B=ベーシック(基本的)」の頭文字で覚えるか、「食事・排泄・更衣・入浴・移動・整容」の頭文字を取って「食排更入移整(しょく・はい・こう・にゅう・い・せい)」と唱えるのも良いでしょう。IADLは「手段的=応用的=頭を使う動作」と関連付けて、金銭管理や服薬管理をイメージしましょう。
国試頻出ポイント
このテーマは、「高齢者の生活機能評価」の文脈で頻出です。特に、介護保険制度における
要介護認定の調査項目(基本調査)にBADLとIADLの評価が含まれているため、関連付けて覚えると得点源になります。また、事例問題で「この患者さんは在宅復帰可能か?」を判断する際に、BADLとIADLのどちらが低下しているかを問う問題もよく出ます。
出題パターン注意!
単純な「BADLに含まれるのはどれか」という知識問題から、「
パーキンソン病(Parkinson's disease)の患者で早期に低下するのはBADLとIADLのどちらか」といった病態と結びつけた応用問題、さらには「大腿骨頸部骨折術後の高齢患者の退院支援において、最初に評価すべきADLはどれか」という臨床判断を問う問題へと発展します。