核心解説
この問題は、
気管内吸引 (Endotracheal Suctioning) の基本手技と安全な実施方法を問うています。気管内吸引は、人工呼吸器装着患者や気管切開患者の気道確保と分泌物除去に必須の看護技術であり、誤った手技は低酸素血症、気道粘膜損傷、感染などの合併症を引き起こすため、
最重要! 正しい知識と手順を確実に理解する必要があります。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): 気管内吸引の目的は、自然に喀出できない気管内の分泌物を除去し、気道を確保・維持することです。手技の基本は、
吸引前の準備(咽頭分泌物の除去) →
カテーテルの適切な挿入 →
陰圧をかけての吸引 の順に行われます。それぞれの段階で、解剖学的構造と生理学的反応を考慮した判断が求められます。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale):
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選択肢①(正解):
最重要! 気管内吸引を実施する前に、まず咽頭部の分泌物を吸引しておくことが原則です。これは、気管チューブのカフ周囲に溜まった分泌物が、カフを減圧した際や吸引操作中に気管内へ垂れ込み(誤嚥)、肺炎の原因となるのを防ぐためです。
口腔・咽頭吸引は気管内吸引の前に行う と覚えましょう。
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選択肢④(正解):
最重要! カテーテルは
気管分岐部 (Carina) に当たらないように挿入します。気管分岐部は粘膜が非常に敏感で、カテーテルが触れると
強い咳嗽反射や粘膜損傷、出血 を引き起こす可能性があります。カテーテルの挿入深度は、事前に測定した気管チューブの長さ(チューブ先端から体外に出ている部分までの長さ)を目安にし、無理に押し込まないことが重要です。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
-
選択肢②:
混同注意! 吸引圧は一般的に成人では
-13.3~-20.0kPa (-100~-150mmHg) に設定します。-40kPa (300mmHg) は高圧すぎます。高圧吸引は気道粘膜を損傷し、低酸素血症を悪化させるため禁忌です。
-
選択肢③:
混同注意! 使用する吸引カテーテルの外径は、気管チューブの内径の
1/2以下 が原則です。これは、カテーテル挿入中もチューブとカテーテルの間に隙間を作り、換気(空気の通り道)を確保するためです。同じ内径のカテーテルを使用すると、換気ができず窒息の危険があります。
-
選択肢⑤:
混同注意! 1回の吸引時間は
15秒以内 が原則です(小児ではさらに短く10秒以内)。30秒もの長時間吸引は、重度の低酸素血症、不整脈、心停止を誘発する危険があります。吸引は
短時間で確実に が鉄則です。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts):
-
混同注意! 口腔・咽頭吸引 と
気管内吸引 は、器具も手順も異なります。口腔・咽頭吸引は滅菌カテーテルでなくても良い場合がありますが、気管内吸引は必ず
滅菌カテーテル を使用します。
- 吸引の前後には必ず
100%酸素 による
プレオキシジェネーション(高濃度酸素投与) と
ポストオキシジェネーション を実施し、低酸素血症を予防します。
概念整理: 気管内吸引の安全な実施手順
| 手順 | 目的・注意点 |
|---|
| 1. 吸引前準備 | 咽頭部の分泌物を吸引(誤嚥予防) / 100%酸素でプレオキシジェネーション |
| 2. カテーテル選択 | 外径は気管チューブ内径の1/2以下 / 滅菌カテーテルを使用 |
| 3. カテーテル挿入 | 気管分岐部に当てない / 抵抗を感じたら無理に進めない |
| 4. 吸引 | 圧:-13.3~-20.0kPa / 時間:15秒以内 / 陰圧は引き抜きながらかける |
| 5. 吸引後 | 100%酸素でポストオキシジェネーション / SpO2と呼吸状態を評価 |
一目で比較!: 気管内吸引と口腔内吸引の違い
| 項目 | 気管内吸引 | 口腔内吸引 |
|---|
| 目的 | 気管・気管支内の分泌物除去 | 口腔・咽頭の分泌物除去 |
| 使用カテーテル | 滅菌カテーテル(1回使い捨て) | 清潔カテーテル(複数回使用可) |
| 挿入深度 | 気管分岐部手前まで(事前計測) | 口腔内・咽頭まで(目視で確認) |
| 吸引時間 | 15秒以内 | 特に規定はないが短時間で |
| 注意点 | 低酸素血症・不整脈・粘膜損傷 | 誤嚥・嘔吐反射 |
看護過程ポイント
-
アセスメント: 吸引前の聴診で
ラ音(湿性ラ音)を確認、SpO2値、呼吸パターン、咳嗽反射の有無、分泌物の性状(色・量・粘稠度)を評価。
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看護診断: 「非効果的気道浄化 (Ineffective Airway Clearance)」、「誤嚥リスク状態 (Risk for Aspiration)」。
-
計画・実施: 吸引の必要性をアセスメント(ルーチン吸引はしない!)、吸引前後の酸素化状態のモニタリング、患者の苦痛に配慮した声かけと説明。
-
評価: 呼吸音の改善、SpO2の上昇、患者の呼吸困難感の軽減、分泌物の効果的な除去。
暗記のコツ
「
気管内吸引の3つの15」と覚えましょう!
1.
吸引時間は15秒以内
2.
カテーテル外径はチューブ内径の1/2以下(半分→約15%?→数字は不正確なので覚え方のみ)
3.
吸引圧は-15kPa前後
→ 「15」という数字をキーに、時間・圧力・カテーテル径の3つの要素を連想します。
国試頻出ポイント
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最重要! 吸引時間は「15秒以内」、吸引圧は「-13.3~-20.0kPa」は毎年と言っていいほど頻出です。
- 吸引前の「咽頭吸引」と吸引後の「高濃度酸素投与(ポストオキシジェネーション)」もセットで出題されます。
- 誤答として「吸引圧-40kPa」「30秒吸引」「気管分岐部まで挿入」がよく使われるので、必ず区別できるようにしておきましょう。
出題パターン注意!
単純な知識問題(「吸引時間は何秒か」)だけでなく、事例問題で「術後の人工呼吸器管理中、SpO2が低下した患者への対応」として出題されることが増えています。その場合、吸引の適応判断(ルーチンか必要時か)、酸素投与の併用、吸引前後の評価など、総合的な判断力が問われます。