核心解説
この問題は、
閉経 (Menopause) に伴う
エストロゲン (Estrogen) 低下の影響を問うています。エストロゲンは女性の生殖器だけでなく、骨代謝、脂質代謝、血管機能など全身に広く作用するホルモンです。その低下により、様々な臓器に影響が現れます。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! エストロゲンは
膣粘膜の増殖と潤いを維持 する作用があります。閉経後にエストロゲンが低下すると、膣粘膜が菲薄化し、弾力性を失い、萎縮します。これは
萎縮性腟炎 (Atrophic Vaginitis) と呼ばれる状態で、腟の乾燥や性交痛の原因となります。したがって、②番の「膣粘膜の萎縮」が正解です。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ①番「骨量の増加」:
混同注意! エストロゲンは骨吸収を抑制する作用があります。閉経後にエストロゲンが低下すると、
骨吸収が亢進 し、骨量は減少します。その結果、
骨粗鬆症 (Osteoporosis) のリスクが高まります。
- ③番「脳血流量の増加」: エストロゲンには血管拡張作用や血流改善作用があるため、むしろ低下すると脳血流量は減少する傾向があります。閉経後にホットフラッシュ(のぼせ)が生じるのは、エストロゲン低下による体温調節中枢の乱れが原因です。
- ④番「血中LDLコレステロールの減少」:
混同注意! エストロゲンは
LDLコレステロール(悪玉)を低下 させ、
HDLコレステロール(善玉)を上昇 させる作用があります。閉経後はこの作用が失われるため、血中LDLコレステロールは増加し、動脈硬化のリスクが高まります。
関連概念の整理 (Related Concepts):
エストロゲンの主な標的臓器と作用を整理しておきましょう。
| 標的臓器・組織 | エストロゲンの主な作用 | 閉経後の変化 |
| 生殖器(膣・子宮) | 粘膜の増殖・分泌促進 | 膣粘膜萎縮、子宮萎縮 |
| 骨 | 骨吸収の抑制 | 骨量減少→骨粗鬆症 |
| 脂質代謝 | LDL低下、HDL上昇 | LDL増加、動脈硬化リスク上昇 |
| 体温調節中枢 | 安定化作用 | ホットフラッシュ、発汗 |
| 血管 | 血管拡張、血流維持 | 動脈硬化進行リスク |
概念整理:
エストロゲン は女性ホルモンとして生殖機能を維持するだけでなく、骨、脂質、血管など全身の恒常性維持に重要な役割を担っています。閉経によるエストロゲン低下は、これらの作用が一斉に失われる「多臓器への影響」として捉えることが重要です。
一目で比較!:
エストロゲン低下 vs プロゲステロン低下
| ホルモン | 主な作用 | 低下時の影響 |
|---|
| エストロゲン | 粘膜増殖、骨吸収抑制、脂質改善 | 膣萎縮、骨粗鬆症、LDL上昇 |
| プロゲステロン | 子宮内膜の分泌期への移行、体温上昇 | 無排卵周期、月経不順 |
暗記のコツ: エストロゲンの作用は「
エストロゲンは女性を美しく保つ」と覚えましょう。「肌(粘膜)を若々しく、骨を強く、血管をしなやかに、コレステロールをバランス良く」というイメージです。閉経後にこれらの機能が失われると考えれば、膣萎縮、骨粗鬆症、脂質異常が同時に生じる理由が理解できます。
国試頻出ポイント: 閉経に伴う身体変化として、以下の3つはセットで問われやすいです。
1.
膣粘膜萎縮(萎縮性腟炎)→ 性交痛、乾燥感
2.
骨粗鬆症 → 骨量減少、骨折リスク
3.
脂質異常(LDL上昇)→ 動脈硬化リスク
出題パターン注意!: 「閉経後に増加するものはどれか」という逆パターンの出題も頻出です。その場合、
LDLコレステロール、
骨吸収、
ホットフラッシュの頻度 などが正解になります。