核心解説
この問題は、外傷患者のショック状態(Shock State)の原因を、身体所見と検査所見からアセスメントする能力を問うています。ポイントは、
骨盤骨折 (Pelvic Fracture) が
後腹膜腔への大量出血 (Retroperitoneal Hemorrhage) を引き起こし、
循環血液量減少性ショック (Hypovolemic Shock) に至る病態を理解しているかどうかです。Aさんは、高エネルギー外傷(階段転落)後、殿部痛、低血圧・頻脈、貧血、そして尿潜血(+)を呈しており、これは骨盤骨折に伴う出血と、合併しうる泌尿器損傷を示唆しています。
正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢②
骨盤骨折 (Pelvic Fracture) が正解です。
Aさんの身体所見(
血圧76/38mmHg、脈拍100/分、呼吸数22/分)は、まさに
最重要! 循環血液量減少性ショック (Hypovolemic Shock) の初期兆候です。Hb 9.0g/dLと貧血がみられ、これはすでに相当量の出血があったことを示します。さらに、
尿潜血(+) は、骨盤骨折に合併しやすい膀胱破裂や尿道損傷(Urethral Injury)を示唆する所見です。殿部の激しい痛みも、骨盤輪の不安定性を反映しています。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①
敗血症 (Sepsis) は、感染症に続発するもので、発熱(体温上昇)や炎症反応(CRP上昇)が通常みられます。Aさんは
CRP 0.3mg/dLと正常であり、発症からの時間経過(30分)も短すぎるため、敗血症の可能性は極めて低いです。
③
硬膜下血腫 (Subdural Hematoma) は頭部外傷によるもので、意識障害や神経症状を呈しますが、Aさんにその記載はなく、ショック状態の直接的原因とはなりません。
④
腰部脊柱管狭窄症 (Lumbar Spinal Stenosis) は慢性疾患であり、外傷直後のショック状態を説明できません。間欠性跛行(Intermittent Claudication)などが特徴的です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
外傷患者のショック評価では、
外傷死の3徴 (Lethal Triad of Trauma) である「低体温 (Hypothermia)」「アシドーシス (Acidosis)」「凝固障害 (Coagulopathy)」も併せて意識する必要があります。また、骨盤骨折の初期管理としては、
骨盤バンド (Pelvic Binder) による骨盤輪の固定が出血抑制に有効です。
概念整理: 高エネルギー外傷後のショックは、まず「出血性ショック」を疑う。骨折部位の出血(特に骨盤・大腿骨)は、目に見えない後腹膜腔や筋肉内に大量出血しうることを常に念頭に置く。
一目で比較!: 外傷患者のショック分類
| ショックの種類 | 原因 | 主な所見 |
|---|
| 循環血液量減少性ショック | 出血、脱水 | 血圧↓、脈拍↑、皮膚冷感、Hb↓ |
| 心原性ショック | 心筋梗塞、心タンポナーデ | 頸静脈怒張、肺水腫、心音異常 |
| 神経原性ショック | 脊髄損傷 | 血圧↓(血管拡張)、脈拍↓(相対的徐脈)、温かい四肢 |
看護過程ポイント: アセスメントでは、ショックの早期発見と原因検索が最優先。観察項目として、バイタルサイン(特に血圧・脈拍のトレンド)、意識レベル、尿量(1時間ごと)、皮膚の色調と温感、出血の有無(創部・ドレーン・導尿の色)を徹底する。看護診断としては「
体液量減少リスク状態 (Risk for Deficient Fluid Volume)」または「
組織灌流異常 (Ineffective Tissue Perfusion)」が優先される。
暗記のコツ: 「低血圧 + 高エネルギー外傷 + 骨盤痛 + 尿潜血 = 骨盤骨折」とセットで覚えましょう。骨盤は「隠れた出血の巣」です。
国試頻出ポイント: ショックの分類(特に出血性 vs 心原性 vs 神経原性)と、それぞれの身体所見の特徴は毎年のように出題されます。事例問題では、バイタルサインと外傷部位からショックの原因を推測させるパターンが頻出です。
出題パターン注意!: 本問のような単純な原因推測から、発展して「看護師がまず行うべきことは何か(例:大口径ルート確保、酸素投与、骨盤バンド装着など)」という急性期介入の優先順位を問う問題に繋がります。