核心解説
この問題は、
慢性閉塞性肺疾患 (COPD) の一種である
肺気腫 (Pulmonary Emphysema) における呼吸機能検査の異常パターンを問うています。Aさんは、21歳からの喫煙歴があり、労作時の息切れ(呼吸困難 (Dyspnea))が出現しており、典型的なCOPDの病態を示しています。
1.
核心概念の分析 (Key Concept):
肺気腫 の病態生理の本質は、
肺胞壁の破壊 とそれに伴う
末梢気道の虚脱 です。これにより、呼気時に気道が狭窄・閉塞し、肺内に空気が溜まりやすくなります。結果として、
肺の過膨張 (Hyperinflation) と
残気量 (Residual Volume, RV) の増加 が生じます。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): 選択肢②の「残気量」が正解です。肺気腫では、肺胞の弾性収縮力が低下し、さらに気道が狭窄しているため、最大限に息を吐き出しても肺内に残る空気の量(残気量)が増加します。これが肺の過膨張の原因となり、
増加 を示します。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ①
混同注意! 「1秒率 (FEV1.0%)」は、1秒間にどれだけの息を吐き出せるかの割合です。気道閉塞があるCOPDでは、息を吐き出すのに時間がかかるため、
低下 します。増加はしません。
- ③ 「1回換気量 (Tidal Volume, TV)」は、安静時に1回の呼吸で出入りする空気の量です。COPDでは呼吸数が増えることがありますが、1回換気量はむしろ正常範囲かやや減少傾向を示すことが多く、増加はしません。
- ④ 「動脈血酸素分圧 (PaO2)」は、動脈血中の酸素濃度を示します。肺気腫の進行により肺胞でのガス交換が障害されるため、
低下 します(低酸素血症 (Hypoxemia))。増加はしません。Room air(室内気吸入下)でのPaO2低下は、病態の進行を示唆する重要な指標です。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): COPDの呼吸機能検査は、閉塞性換気障害のパターンを示します。閉塞性換気障害の代表的な指標は「1秒率の低下」と「残気量の増加」です。これに対し、肺線維症などでは拘束性換気障害(肺活量の低下)を示す点を鑑別しておきましょう。また、
慢性気管支炎 (Chronic Bronchitis) と肺気腫はCOPDの2大疾患ですが、両者とも1秒率低下と残気量増加を示す共通点があります。
概念整理:
肺気腫 の呼吸機能は、
閉塞性換気障害 を示し、「1秒率 (FEV1.0%):低下」、「残気量 (RV):増加」、「肺活量 (VC):正常〜低下」が特徴です。肺胞破壊により肺の弾性収縮力が失われ、空気をうまく吐き出せなくなります。
一目で比較!:
| 病態 | 1秒率 (FEV1.0%) | 残気量 (RV) | 1回換気量 (TV) | PaO2 |
|---|
| 肺気腫 (COPD) | 低下 | 増加 | 正常〜やや低下 | 低下 |
| 肺線維症 (拘束性) | 正常〜増加 | 正常〜減少 | 低下 | 低下 |
看護過程ポイント:
アセスメントでは、呼吸機能検査の数値だけでなく、
呼吸困難の程度(修正MRC息切れスケールなど)、
SpO2モニタリング、
咳嗽や喀痰の性状、
栄養状態(呼吸筋力に影響) を総合的に評価します。Aさんの「坂道や階段を昇ると息切れ」という情報から、日常生活動作 (ADL) に影響が出始めていることがわかります。看護介入としては、
呼吸リハビリテーション(口すぼめ呼吸、腹式呼吸の指導) や
禁煙指導の強化、
薬物療法(気管支拡張薬)の服薬指導 が重要です。
暗記のコツ: 「COPD(肺気腫)=風船が伸びきって縮まないイメージ!」→ 風船の空気を一生懸命押し出そうとしても、ゴムが弱っているので、なかなか空気が出ていかず、風船の中に空気(残気量)がたくさん残ってしまいます。
国試頻出ポイント: COPDの呼吸機能検査の「増加」と「低下」の組み合わせは、毎年のように出題される基本中の基本です。特に「残気量増加」と「1秒率低下」のセットは必ず覚えてください。また、COPD患者の看護(体位、呼吸法、酸素療法、排痰法、栄養管理)も合わせて学習しておくと、事例問題で高得点が狙えます。