核心解説
この問題は、
人工股関節置換術 (Total Hip Arthroplasty, THA) の術後合併症、特に
脱臼 (Dislocation) を予防するための適切な肢位(ポジショニング)を問うています。Aさんは
最重要!肥満(BMI 33)であり、術後の安静度管理と合併症予防が特に重要です。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): 人工股関節置換術後、特に後方アプローチ(Posterior Approach)で手術を行った場合、股関節の
脱臼を予防する肢位が必須です。脱臼しやすい方向は「屈曲 (Flexion) + 内転 (Adduction) + 内旋 (Internal Rotation)」の複合動作(俗に「股関節の危険な三角」と呼ばれます)。これを避けるために、術後は股関節を
やや外転 (Abduction) 位に保ち、膝の間に外転枕(アブダクションピロー)を挟んで固定します。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): 正解は②番の
「外転 (Abduction)」です。これは、股関節を脚が開いた状態に保つことで、脱臼の原因となる内転と内旋を物理的に制限し、関節包や周囲筋の治癒を促進するためです。Aさんの肥満も脱臼リスク因子となるため、厳密な肢位管理が必要です。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ①外旋(External Rotation):これは禁忌ではありませんが、単独では不十分です。外転が優先されます。③内旋(Internal Rotation):
禁忌! 内旋は脱臼を誘発する危険な方向です。④内転(Adduction):
禁忌! 内転も脱臼を誘発するため、両脚を閉じる姿勢は避ける必要があります。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): 人工股関節置換術後の合併症予防では、他に
感染予防(創部管理、抗生剤投与)と
深部静脈血栓症 (DVT) 予防(弾性ストッキング、フットポンプ、早期離床)も同時に重要です。また、前方アプローチの場合は脱臼リスクが異なる(外旋・伸展が危険)ため、アプローチ法による違いも押さえておきましょう。
概念整理:
人工股関節置換術 (THA) 後、特に後方アプローチでは
「屈曲・内転・内旋」の複合動作が脱臼の原因。予防のための肢位は
「外転位(やや開脚)」が基本。
一目で比較!:
| アプローチ法 | 危険な方向(脱臼予防) | 術後肢位 |
|---|
| 後方アプローチ | 屈曲 + 内転 + 内旋 | 外転位(膝の間に枕) |
| 前方アプローチ | 伸展 + 外転 + 外旋 | 軽度屈曲位、外転制限 |
看護過程ポイント:
アセスメント: 術後の脱臼徴候(股関節部痛、脚長差、肢位の異常、動作制限)を観察。
看護診断: 「転倒リスク状態」「関節脱臼リスク状態」。
計画・実施: ベッド上で外転枕を装着し、患者に「足を組まない」「深く腰掛けない(90度以上の屈曲禁止)」「患側を下にして寝ない」などの生活指導を実施。
評価: 脱臼が発生していないか、患者が安全な肢位を保持できているか確認。
暗記のコツ: 「後方アプローチは後ろ(お尻)から入るので、前に曲げると外れる → 屈曲禁止」とイメージ。「内転・内旋は脚を閉じて内側に捻る動作。これを外転枕で物理的にブロック」と覚えましょう。
国試頻出ポイント: 人工股関節置換術後の脱臼予防は、看護師国家試験で毎年と言ってよいほど出題される核心分野です。単純な肢位だけでなく、「なぜその肢位が正しいのか」を病態生理と関連付けて理解しておくと、状況設定問題にも対応できます。
出題パターン注意!: 単純な「術後肢位はどれか」から発展して、「術後3日目の患者が自分で足を組んでいるのを発見。看護師の対応は?」「ベッドから車椅子への移乗で注意することは?」などの状況設定問題に応用可能。常に「危険な方向を避ける」視点を持ちましょう。