核心解説
この問題は、
術後発熱 (Postoperative Fever) の原因を、与えられた患者情報から複数選択で鑑別する能力を問うています。
術後発熱の原因は多岐にわたりますが、「いつ(術後何日目か)」「どの程度(高熱か微熱か)」「他にどんな症状があるか」を統合してアセスメントすることが重要です。本問では「術後1日」「39.1℃の高熱」「左手の末梢血管内カテーテル刺入部の発赤・熱感」という3つの情報が鍵となります。
1.
正解の根拠 (Answer Rationale): 正解は
【4. 術後の吸収熱】 と
【5. カテーテル関連血流感染症 (Catheter-Related Bloodstream Infection, CRBSI)】 です。
最重要! 【4. 術後の吸収熱】: 手術による組織損傷に伴い、壊死組織や血腫の吸収過程で炎症性サイトカインが放出されることで生じる生理的な発熱です。通常、術後2~3日以内に38℃前後まで上昇しますが、39℃を超えることもあります。問題文に「術創部の感染兆候がない」ことから、この生理的反応を考慮する必要があります。
【5. カテーテル関連血流感染症 (CRBSI)】: 末梢血管内カテーテル刺入部に「発赤、熱感」という明らかな局所感染徴候があります。血液検査で
白血球11,900/μL(軽度上昇)、
CRP 11.4mg/dL(高度上昇) と全身性の炎症反応も認められるため、カテーテルを介した血流感染が強く疑われます。これが39.1℃の高熱の主因である可能性が高いです。
2.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! 【1. 肺炎】: 呼吸数18/分と正常範囲内、SpO2 97%と良好、胸部エックス線で異常所見なし、呼吸音にも異常がないため、否定的です。術後肺炎のリスクはあるものの、現時点でのエビデンスは不足しています。
【2. 腎盂腎炎】: 腰背部痛(腎部痛)なし、尿沈査に白血球(膿尿)を認めないため、否定的です。
【3. 術創部感染】: 問題文に「術創部の腫脹、発赤、熱感はない」と明記されており、局所感染徴候がないため、否定的です。
3.
関連概念の整理 (Related Concepts): 術後発熱の原因は、時期によって鑑別が異なります。一般的な鑑別として「5W's of Postoperative Fever」というフレームワークがあります。
| 時期 (Timing) | 原因 (Cause) |
|---|
| 術後24時間以内 | 吸収熱、無気肺 (Atelectasis)、輸血反応 |
| 術後24~72時間 | カテーテル関連感染 (Catheter-Related Infection)、肺塞栓症 (Pulmonary Embolism) |
| 術後3~5日 | 創部感染 (Surgical Site Infection)、尿路感染 (Urinary Tract Infection) |
| 術後1週間以降 | 深部静脈血栓症 (Deep Vein Thrombosis)、薬剤熱 (Drug Fever) |
本問では、術後1日目であり、カテーテル関連感染と吸収熱の両方を考慮する必要があります。また、CRBSIはカテーテル留置期間が長くなるほどリスクが上昇しますが、術後早期であっても刺入部の観察は必須です。
概念整理:
術後発熱 (Postoperative Fever)の原因鑑別。特に、生理的な
吸収熱と感染性発熱(CRBSI、創部感染、肺炎、尿路感染)を、症状・検査所見から鑑別する。
一目で比較!:
吸収熱 vs 感染性発熱:吸収熱は術後48~72時間以内に38℃前後で自然消退、局所所見はない。感染性発熱は持続・上昇傾向、局所所見(発赤、腫脹、熱感、膿性排液)や全身性炎症反応(高CRP、白血球増多)を伴う。
看護過程ポイント:
アセスメント:発熱の時期、程度、局所所見(創部、カテーテル刺入部、呼吸音、排尿状態)を系統的に観察。検査データ(WBC、CRP、尿検査、画像検査)と併せて原因を推定する。
看護診断:「感染リスク状態」または「術後回復遅延リスク状態」。
介入:CRBSIが疑われたら、直ちにカテーテル抜去の指示を仰ぎ、刺入部の培養検体を採取する。発熱に対する解熱処置(冷却、解熱剤投与)の適応を判断する。
暗記のコツ: 術後発熱の原因を覚える「
5W」:
Wind(無気肺)、
Wound(創部感染)、
Water(尿路感染)、
Walking(深部静脈血栓症/肺塞栓症)、
Wonder drug(薬剤熱)。術後早期(24-48時間)は
Wind(無気肺)とカテーテル関連感染も忘れずに。
国試頻出ポイント: 術後発熱の原因鑑別は頻出テーマ。特に、
吸収熱と
感染性発熱の違い、CRBSIのリスク因子と予防策(カテーテル挿入部の定期的な観察と早期抜去)は必ず押さえること。状況設定問題では、患者情報(発熱のタイミング、局所所見、検査値)から最も疑わしい原因を選択させる形で出題される。
出題パターン注意!: 「術後3日目に38.5℃の発熱。創部に発赤と圧痛あり。」→ 創部感染。 「術後1日目に39.0℃の発熱。カテーテル挿入部に発赤。呼吸音は清明。」→ CRBSIと吸収熱の両方を考慮。このように、発熱の時期と局所所見の組み合わせで正解が変わります。