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一般・状況設定問題
全身麻酔下で胃全摘出術を受ける患者に対する無気肺の予防法はどれか。2つ選べ。
1
腹帯の装着
2
抗菌薬の使用
3
ハフィング法
✓ 正解
4
弾性ストッキングの装着
5
インセンティブ・スパイロメトリーの使用
✓ 正解
解説
術後の無気肺を予防するためには、肺をしっかり膨らませて喀痰を排出することが重要です。深く息を吸い込む訓練器である「インセンティブ・スパイロメトリー」の使用や、声門を開いたまま強く息を吐き出して痰を移動させる「ハフィング法」が有効です。
同じテーマの次の問題 インシデントレポートについて適切なのはどれか。2つ選べ。 この問題が収録された問題集 【合格ライン突破】 過去問5年分 本気の実戦問題 KRW 20,000
核心解説
この問題は、全身麻酔 (General Anesthesia) 後の合併症である 無気肺 (Atelectasis) の予防法を問うています。全身麻酔中は、気道の分泌物増加や咳嗽反射の抑制により、気道内分泌物が貯留しやすくなります。また、術後の疼痛による浅く速い呼吸(浅呼吸)や、横隔膜の運動制限により、肺胞が虚脱しやすくなることが無気肺の主な原因です。この病態生理を理解することが、予防法を選ぶ鍵となります。
1. 核心概念の分析 (Key Concept)
無気肺は、肺胞の虚脱によりガス交換が障害される状態です。術後は、麻酔薬の残存作用、疼痛、腹帯による腹部圧迫などが原因で、肺活量が減少し、特に背側や下葉の肺胞が虚脱しやすくなります。予防の基本は、肺を十分に拡張させ、気道内分泌物を効果的に排出すること です。
2. 正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ③番の ハフィング法 (Huffing) は、声門を開いたまま強く息を吐き出す咳嗽法であり、術後の疼痛を誘発せずに気道深部の痰を口側に移動させることができます。通常の咳嗽よりも胸壁への負担が少ないため、術後早期の排痰に非常に有効です。
最重要! ⑤番の インセンティブ・スパイロメトリー (Incentive Spirometry) は、視覚的フィードバックを得ながら深くゆっくりとした吸気を行い、肺胞を積極的に拡張させる訓練器具です。患者自身が努力することで、肺活量の維持・改善に効果的であり、無気肺予防のゴールドスタンダードとされています。
3. 誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番の腹帯の装着:腹部の創部を保護し疼痛を軽減する目的で使用されますが、腹部を過度に圧迫すると横隔膜の動きを制限し、むしろ無気肺のリスクを高める可能性があります。無気肺予防にはなりません。
②番の抗菌薬の使用:抗菌薬は術後感染症(創部感染、肺炎など)の予防や治療に用いられますが、無気肺そのものを予防する効果はありません。無気肺が遷延すると二次的に肺炎を発症するリスクはありますが、直接的な予防法ではありません。
④番の弾性ストッキングの装着:術後の 混同注意! 深部静脈血栓症 (Deep Vein Thrombosis, DVT) や肺塞栓症 (Pulmonary Embolism, PE) の予防法です。下肢の静脈還流を促進し血栓形成を防ぐ目的であり、呼吸器合併症である無気肺とは全く異なる病態に対する対策です。
4. 関連概念の整理 (Related Concepts)
術後呼吸器合併症の予防には、無気肺予防の他に、誤嚥性肺炎の予防(口腔ケア、頭部挙上)、肺塞栓症の予防(弾性ストッキング、フットポンプ、早期離床)などがあります。また、体位ドレナージや タッピング (Tapping) も排痰促進に有効な看護技術です。無気肺と肺炎は相互にリスクを高め合う関係にあり、術後は早期離床と呼吸理学療法の積極的な実施が重要です。
概念整理 : 全身麻酔後の無気肺は、肺胞虚脱によるガス交換障害。予防の基本は「肺を膨らませる」ことと「痰を出す」こと。インセンティブ・スパイロメトリーは肺拡張、ハフィング法は排痰促進に特化した方法です。
一目で比較! :
介入法 目的 混同しやすい疾患/合併症 インセンティブ・スパイロメトリー 肺拡張 (無気肺予防) 無気肺、術後肺炎 ハフィング法 排痰促進 (無気肺予防) 無気肺、誤嚥性肺炎 弾性ストッキング 静脈還流促進 (DVT/PE予防) 深部静脈血栓症、肺塞栓症 抗菌薬投与 感染予防・治療 創部感染、肺炎、尿路感染症
看護過程ポイント : 術後は「非効果的気道クリアランス」や「非効果的呼吸パターン」のリスク状態を看護診断します。アセスメントでは呼吸数、呼吸音(ラ音の有無)、SpO2、咳嗽の有無、痰の性状(量・色・粘稠度)を重点的に観察します。評価では、肺活量の改善や呼吸音の清明化を確認します。
暗記のコツ : 「ハフィング(排痰)」「スパイロメトリー(肺拡張)」と機能をセットで覚えましょう。「ストッキングは足」「抗菌薬はバイ菌」というイメージで他の選択肢と区別すると、国試で迷いません。
国試頻出ポイント : 術後合併症の予防法は毎年必出テーマです。特に「無気肺 vs DVT/PE」「無気肺 vs 誤嚥性肺炎」の予防法をセットで問う問題が多く出題されます。状況設定問題では、患者の状態(疼痛の程度、離床の可否)に応じて最適な方法を選ばせるパターンが頻出です。
臨床実践ガイド
胃全摘出術後の患者さんを受け持ったとします。術後1日目、患者さんは創部痛を訴え、呼吸が浅くなっています。臨床シナリオ (Clinical Scenario) 「70代男性、胃がんに対し全身麻酔下で胃全摘出術を施行。術後1日目、ベッド上安静。SpO2 95%(室内気)、呼吸数24回/分、浅く速い呼吸。『痰が絡むけど、痛くてうまく咳ができない』と訴えています。聴診で右背部に断続性ラ音(coarse crackles)を聴取。」
看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment) まず、最重要! 観察として、呼吸状態(呼吸数、リズム、深さ、SpO2)、咳嗽の有効性、痰の性状、疼痛スケール(NRS)を確認します。次にアセスメント:浅呼吸による肺胞虚脱と、気道内分泌物の貯留が疑われます。介入として、①疼痛コントロール(鎮痛薬の使用、創部保護のためのクッションの使用)②患者に「息を吸う機械(インセンティブ・スパイロメトリー)を使いましょう。ゆっくりと深く吸ってください」と指導し、実施を促します。③排痰のために「痛くないやり方で痰を出しましょう。口を開けたまま『ハーッ』と強く息を吐いてみてください」とハフィング法を指導します。評価:介入後に呼吸が楽になったか、SpO2が上昇したか、有効な咳嗽ができたかを確認します。効果がなければ、医師に報告し、吸引や気管支拡張薬の処方を検討してもらいます。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions) 創部痛を強く訴える患者に無理に咳嗽を促すと、創部離開や縫合不全のリスクがあります。ハフィング法は通常の咳嗽よりも創部への負担が少ないため、術後早期の排痰に適しています。また、インセンティブ・スパイロメトリー使用時は、患者が息を吸うタイミングに合わせて、創部を手で押さえてサポートすること(スプリント法)も有効です。酸素飽和度が低下している場合は、指示に従い酸素投与を行い、必要に応じて医師へSBARで報告します。
看護プロトコル : 観察項目(呼吸数、呼吸音、SpO2、痰の量・色・粘稠度、疼痛レベル)報告基準(SpO2 90%未満、呼吸数30回/分以上、新たなラ音の出現、痰が多量または膿性)記録のポイント(介入内容と患者の反応、SpO2の推移)家族への説明の留意点(無理に咳をさせず、痛みを我慢させないこと、呼吸訓練の重要性)
先輩看護師の一言 : 「術後の呼吸管理は看護師の腕の見せどころです!無気肺は放っておくと肺炎に進行する怖い合併症。『痛いから呼吸が浅い』→『肺が膨らまない』→『痰が貯まる』→『無気肺・肺炎』という悪循環を断ち切るのが私たちの役割です。国試でも、『なぜこの予防法が必要か』という病態を意識して勉強すると、現場でも応用が利きますよ!」
無気肺 — 肺胞の一部または全体が虚脱し、含気量が減少した状態。ガス交換が障害され、低酸素血症を引き起こす。ハフィング法 — 声門を開いたまま「ハーッ」と強く息を吐き出す排痰法。通常の咳嗽より疼痛が少なく、術後早期に適応される。インセンティブ・スパイロメトリー — 深い吸気を視覚的に促す呼吸訓練器。肺胞拡張と肺活量維持に効果的で、無気肺予防の標準的ケア。全身麻酔 — 薬剤により意識、痛み、反射を消失させる麻酔法。呼吸中枢抑制や咳嗽反射抑制により、術後に無気肺や誤嚥のリスクが高まる。弾性ストッキング — 下肢に圧迫を加え静脈還流を促進するストッキング。深部静脈血栓症(DVT)予防に用いられる。
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