核心解説
この問題は、
脳神経 (Cranial Nerves) のうち、
声帯 (Vocal Cords) の運動と緊張度を調節する神経が、どの脳神経の分枝であるかを問うています。声帯の動きを支配するのは、
反回神経 (Recurrent Laryngeal Nerve)(下喉頭神経)と
上喉頭神経 (Superior Laryngeal Nerve) であり、これらは全て
迷走神経 (Vagus Nerve: 第X脳神経) の分枝です。したがって、正解は「迷走神経」です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 声帯の運動(開大・閉鎖)は
反回神経(下喉頭神経) が支配し、声帯の緊張度(発声時のピッチ調節)は
上喉頭神経 が支配します。これらは両方とも、
迷走神経 の分枝として頚部・胸部を下行する際に分岐します。例えば、甲状腺手術などで反回神経を損傷すると、声帯麻痺(嗄声・誤嚥)が生じるため、術後の観察項目として「声のかすれ」は非常に重要です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
三叉神経 (Trigeminal Nerve):
混同注意! 顔面の感覚と咀嚼筋の運動を支配します。声帯には関与しません。
②
顔面神経 (Facial Nerve):顔面表情筋の運動と舌前2/3の味覚を支配します。声帯運動には関与しません。
③
舌咽神経 (Glossopharyngeal Nerve):咽頭の感覚と運動、舌後1/3の味覚、唾液分泌に関与します。咽頭反射(嘔吐反射)の求心路ですが、声帯運動の直接支配は受けません。
⑤
舌下神経 (Hypoglossal Nerve):舌の運動(舌筋)を支配します。声帯には関与しません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
反回神経の走行をイメージすると覚えやすいです。右反回神経は鎖骨下動脈を、左反回神経は大動脈弓を回り込んで喉頭へ向かいます。そのため、
胸部大動脈瘤や肺癌によるリンパ節転移 が左反回神経を圧迫し、嗄声(声がれ)を引き起こすことがあります。また、
迷走神経 は咽頭・喉頭だけでなく、心臓・肺・消化管など広範囲を支配する重要な副交感神経であることも併せて押さえておきましょう。
概念整理: 声帯の運動(反回神経)と緊張度(上喉頭神経)は、どちらも迷走神経(第X脳神経)の分枝です。
一目で比較!:
| 脳神経 | 主な機能 | 声帯への関与 |
|---|
| 迷走神経 (X) | 咽頭・喉頭の運動・感覚、内臓の副交感神経 | あり(反回神経・上喉頭神経を分枝) |
| 舌咽神経 (IX) | 咽頭の感覚・運動、味覚 | なし |
| 顔面神経 (VII) | 表情筋運動、味覚 | なし |
看護過程ポイント: 甲状腺術後や頚部郭清術後の患者では、声帯麻痺の有無をアセスメントするため、
嗄声の有無、誤嚥の兆候(咳嗽・むせ) を観察します。必要時は耳鼻科医による喉頭ファイバースコープ検査が行われます。
暗記のコツ: 「声帯を動かすのは『迷子(迷走)になった反回神経』」と覚えましょう。反回神経は「喉頭へ戻る(反回する)」神経です。
国試頻出ポイント: 脳神経の機能とその障害時の症状は頻出です。特に「反回神経麻痺=迷走神経障害」という関係は、甲状腺疾患・手術と関連した問題でよく出題されます。
出題パターン注意!: 単純な脳神経の機能を問う問題から、「甲状腺手術後の患者に嗄声がみられた。障害されている神経はどれか。」のような状況設定問題へ発展します。