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一般・状況設定問題
問題
高齢者の歩行時につまずきが見られる場合、筋力低下が考えられる筋肉はどれか。
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1
大殿筋
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2
前脛骨筋
✓ 正解
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3
下腿三頭筋
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4
大腿四頭筋
解説
歩行時につまずきやすくなるのは、足関節を背屈(つま先を上げる)させる働きを持つ「前脛骨筋」の筋力低下によって、足先が十分に上がらない(すり足になる)ことが主な原因です。
同じテーマの次の問題インシデントレポートについて適切なのはどれか。2つ選べ。
詳細解説
核心解説
この問題は、高齢者の歩行障害とそれに関連する筋力低下の部位を問うています。歩行周期 (Gait Cycle) の中でも、特に 遊脚期 (Swing Phase) において、足部が地面に引っかからないようにするためには、足関節を背屈(つま先を持ち上げる動き)させる筋肉が重要です。最重要! つまずきの原因は、足先が十分に上がらず、地面に接触してしまうこと(すり足、下垂足)です。この動作を司る主要な筋肉は 前脛骨筋 (Tibialis Anterior) です。この筋肉が萎縮・筋力低下すると、つまずきやすくなります。高齢者は加齢や活動量低下により、特にこの筋肉が弱りやすいため、転倒リスクが高まります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢2番の 前脛骨筋 (Tibialis Anterior) は、下腿前面に位置し、足関節の背屈(つま先を上げる)と内反(足底を内側に向ける)の主動作筋です。歩行の遊脚期にこの筋肉が収縮することで、足先が地面から離れ、スムーズな振り出しが可能になります。前脛骨筋の筋力低下 は、足関節の背屈が不十分となり、つま先が地面に引っかかる「つまずき」や「すり足歩行」の直接的な原因となります。これは高齢者の転倒リスク評価において非常に重要な観察項目です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
① 大殿筋 (Gluteus Maximus): 股関節の伸展と体幹の安定化に働く筋肉です。筋力低下は、立ち上がり動作の困難や、歩行時の骨盤の前方への突出(腰椎前弯の増強)として現れますが、直接的なつまずきの原因とはなりません。
③ 下腿三頭筋 (Triceps Surae): 腓腹筋とヒラメ筋からなり、足関節の底屈(つま先を下げる)の主動作筋です。この筋肉は歩行の 立脚期 (Stance Phase)
臨床シナリオ
臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
あなたは一般病棟で働く看護師です。80代女性、大腿骨頸部骨折の術後で、リハビリテーションを開始したところです。担当理学療法士から「歩行時に右足がつまずきやすく、転倒が心配です」と申し送りがありました。あなたが病室へ行くと、患者さんはベッドサイドで立ち上がろうとしています。足元を見ると、右足のつま先が少し下がっており、スリッパが脱げかかっています。
看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
1. 観察 (Observation): すぐに患者さんに声をかけ、座位を促します。バイタルサイン(血圧、脈拍)を測定し、めまいやふらつきがないか確認します。特に術後で安静が続いた後は、起立性低血圧 (Orthostatic Hypotension) に注意が必要です。足部の観察では、下垂足の有無、前脛骨筋の筋委縮、足背の知覚を確認します。
2. アセスメント (Assessment): 「つまずき」の原因を 前脛骨筋の筋力低下 による背屈制限とアセスメント。術後の長期臥床による筋力低下(廃用症候群)が強く疑われます。転倒リスクは非常に高いと判断します。
3. 報告 (Report): 医師と理学療法士に対し、SBAR (Situation-Background-Assessment-Recommendation) で報告します。「S: 〇〇さんが歩行時に右足をつまずく様子がみられます。B: 大腿骨頸部骨折術後、リハビリ開始。A: 右前脛骨筋の筋力低下による下垂足が疑われます。転倒リスクが高いです。R: 足関節の装具(短下肢装具など)の処方と、理学療法での筋力強化プログラムの検討をお願いします。」
4. 介入 (Intervention): 直ちに転倒予防策を強化します。①安全な靴(かかとが固定され、滑りにくい靴)の着用を促す。②足関節の背屈を補助する短下肢装具 (AFO) の適応を医師に提案する。③環境整備(病室内の障害物除去、夜間の足元灯の点灯)。④必要時、歩行補助具(歩行器やT字杖)の使用を徹底。⑤患者さんとご家族に、つまずきのリスクと予防策について説明します。
5. 評価 (Evaluation): 装具装着後の歩行の安定性、転倒の有無を継続評価。患者さんが安全に歩行できているか、苦痛なく運動できているかを確認します。
患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
最重要! 高齢者の転倒は 骨折や頭部外傷 に直結し、その後の生活の質 (QOL) を大きく低下させます。つまずきやすい患者さんに対しては、安易に「足を上げて歩きましょう」と声かけするだけでなく、装具や靴の調整など、環境と身体的要因の両面からアプローチする必要があります。また、転倒事故は重大なインシデントとなるため、転倒リスクアセスメントの定期的な再評価 と、多職種連携(医師、理学療法士、作業療法士、看護師、薬剤師) が不可欠です。
看護プロトコル
観察項目: 歩行パターン(すり足、小刻み、動揺性)、筋力(特に前脛骨筋・下腿三頭筋・大腿四頭筋)、バランス機能(片脚立位、開眼・閉眼での静止立位)、感覚機能(触覚、位置覚)、使用薬剤(特に抗精神病薬、睡眠薬、降圧薬)、環境(履物、床面、照明)。報告基準 (SBAR): つまずきが増加した、実際に転倒した、歩行補助具を拒否する、新しい歩行障害が出現した、など。記録のポイント: 「患者は歩行時に右足をつまずく様子が観察された。前脛骨筋の筋力はMMT 3(段差なしで重力に抗して可動域いっぱい動かせるが抵抗を加えると動かない)レベル。理学療法士に報告し、短下肢装具の装着が開始された。転倒予防のため、ベッド周辺の環境整備を実施。」
先輩看護師の一言
「高齢者の歩行を見るときは、『足の動き』だけじゃなくて、『目線』や『周りの環境』も一緒に見てね。患者さんが『つまずいた』って言う前に、看護師が『あ、この方、つま先が下がってるな』と気づけるかどうかがプロの腕の見せどころ。国試の知識は、患者さんの命を守るための地図みたいなもの。しっかり身につけて、現場で活かしてね!」
重要概念
- 前脛骨筋 — 下腿前面に位置し、足関節を背屈(つま先を上げる)させる主動作筋。歩行の遊脚期に活動し、つま先が地面に引っかかるのを防ぐ。
- 歩行周期 (Gait Cycle) — 歩行を1歩の周期として捉えたもの。立脚期(足が地面に接地している期間)と遊脚期(足が地面から離れて振り出される期間)に分けられる。
- 下垂足 (Foot Drop) — 前脛骨筋や総腓骨神経の障害により、足関節の背屈ができず、つま先が下垂した状態。歩行時にすり足やつまずきの原因となる。
- 廃用症候群 (Disuse Syndrome) — 長期臥床や活動低下により、筋萎縮・関節拘縮・骨萎縮・循環不全など、全身の諸機能が低下した状態。高齢者に特に起こりやすい。
- 転倒リスクアセスメント (Fall Risk Assessment) — 患者の転倒リスクを評価するための体系的な方法。筋力、バランス、認知機能、使用薬剤、環境などを総合的に評価し、予防策を立案する。
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