こんな問題があと1,192問挑戦 ›
一般・状況設定問題
入院2日、病棟の看護師でAさんへの援助の方針について話し合った。Aさんへの対応で適切なのはどれか。
Aさん(80歳、女性)は発熱があり、呼吸状態が悪いため、外来を受診し肺炎と診断され緊急入院となった。入院時、病室でAさんは「ここはどこ」と話し混乱した様子であった。湿性の咳嗽があり、口唇の乾燥が著明である。同居の夫からの情報では、1週前から食事は摂れていたが、水分摂取量が減っていた。3日前から寝て過ごしていたが、トイレには自分で行くことができていた。身の回りのことは自立している。入院後に点滴静脈内注射1,500mL/日の指示があり、抗菌薬が開始された。身体所見:身長152cm、体重45kg、体温38.0℃、呼吸数32/分、脈拍120/分、整、血圧107/80mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉93%(room air)。ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉I-2。検査所見:赤血球447万/μL、Hb12.5g/dL、白血球16,600/μL、総蛋白6.2g/dL、アルブミン4.0g/dL、血糖98mg/dL、Na 151mEq/L、K4.0mEq/L、Cl 97mEq/L、Ca 8.7mg/dL、CRP 23.0mg/dL。
-
1
日中の離床を促すために歩行に付き添う。
✓ 正解
-
2
夜間はベッドからの転落防止のために身体的拘束を行う。
-
3
睡眠時間の確保のために夕方に3時間の睡眠をとるように勧める。
-
4
症状緩和のためにベンゾジアゼピン系睡眠薬の処方を医師に依頼する。
解説
せん妄の予防とケアにおいて、昼夜の睡眠・覚醒リズムを整えることが重要です。「日中の離床(歩行など)」を促して活動性を高めることで夜間の良眠につなげます。ベンゾジアゼピン系睡眠薬はせん妄を悪化させるリスクがあります。
同じテーマの次の問題インシデントレポートについて適切なのはどれか。2つ選べ。この問題が収録された問題集【合格ライン突破】 過去問5年分 本気の実戦問題KRW 20,000
核心解説
この問題は、高齢者のせん妄 (Delirium) に対する適切な看護介入を問うています。Aさんは、入院による環境変化、脱水 (Na 151mEq/L は高ナトリウム血症を示唆)、感染症 (肺炎)、発熱、酸素化不良 (SpO2 93%) などの複数の危険因子が重なり、急性の意識障害であるせん妄を発症している状態です。せん妄の看護では、非薬物療法による環境調整と生活リズムの正常化が第一選択であり、薬物療法は最小限に留めることが基本です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 選択肢1「日中の離床を促すために歩行に付き添う」が適切です。せん妄の予防・改善には、昼夜のリズムを整えることが極めて重要です。日中は離床を促し、活動性を高めることで、夜間の睡眠の質を向上させ、せん妄症状の悪化を防ぎます。Aさんは入院前は自力でトイレに行ける程度のADL (Activities of Daily Living, 日常生活動作) を有しており、歩行に付き添うことで安全を確保しながら離床を促進することは、優先度の高い看護介入です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
* 混同注意! 選択肢2「夜間はベッドからの転落防止のために身体的拘束を行う」は不適切です。身体的拘束は、かえって患者の興奮や混乱を強め、せん妄を増悪させる可能性が高く、転倒・転落リスクを高めるため、最終手段です。まずはセンサーマットの使用やベッドの高さを低くするなど、より侵襲の少ない環境調整を優先すべきです。
* 選択肢3「睡眠時間の確保のために夕方に3時間の睡眠をとるように勧める」は不適切です。夕方の長い睡眠は夜間の睡眠を妨げ、昼夜逆転を助長する可能性があります。せん妄予防では、夜間の連続した睡眠を確保するために、日中の仮眠は短時間 (30分以内) にとどめることが推奨されます。
* 選択肢4「症状緩和のためにベンゾジアゼピン系睡眠薬の処方を医師に依頼する」は不適切です。ベンゾジアゼピン系薬剤は、せん妄を誘発・増悪させることが知られており、高齢者のせん妄治療では禁忌に近い扱いです。どうしても薬物療法が必要な場合は、非定型抗精神病薬などが考慮されます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
* 鑑別ポイント! せん妄 (Delirium) と認知症 (Dementia):せん妄は急性発症で症状に日内変動があり、注意力・意識レベルの変動が特徴です。認知症は慢性進行性で、意識は清明なことが多いです。
* Aさんのせん妄の原因:感染症 (CRP高値)、脱水・電解質異常 (高Na血症)、低酸素血症 (SpO2低下)、環境変化 (入院) が複合的に作用しています。
概念整理
せん妄 (Delirium) は、急性の意識・認知機能障害であり、原因となる身体的・環境的要因を特定し除去することが治療の基本です。看護では「再定位 (Reorientation)」「環境調整」「家族の協力」「睡眠・覚醒リズムの正常化」が4つの柱となります。
一目で比較!
| 項目 | せん妄 (Delirium) | 認知症 (Dementia) |
|---|
| 発症 | 急性(数時間~数日) | 慢性・進行性(数ヶ月~数年) |
| 経過 | 変動する(日内変動あり) | 緩徐に進行する |
| 意識 | 低下・変動 | 清明(末期除く) |
| 注意力 | 著しい障害 | 比較的保たれる |
| 原因 | 身体疾患・薬剤・環境など可逆性 | 神経変性疾患など不可逆性 |
| 治療 | 原因の除去・環境調整 | 進行抑制・症状コントロール |
看護過程ポイント
* アセスメント: せん妄の原因となる脱水、感染、低酸素、薬剤、環境変化を評価する。特にAさんでは脱水 (Na↑、口唇乾燥) と低酸素 (SpO2↓) に注目。
* 看護診断 (Nursing Diagnosis): 「急性混乱 (Acute Confusion)」「転倒リスク状態 (Risk for Falls)」「睡眠パターン障害 (Disturbed Sleep Pattern)」
* 計画・介入: ①離床促進(安全に歩行介助)、②環境調整(時計・カレンダーの設置、夜間は薄明かり)、③家族面会の促進(安心感の提供)、④身体的・薬物的拘束の回避。
* 評価: JCSの改善、見当識障害の軽減、夜間睡眠の確保、バイタルサインの安定。
暗記のコツ
せん妄ケアの4つの柱「再・環・家・睡(サイカンカスイ)」→ 「再定位」・「環境調整」・「家族協力」・「睡眠リズム正常化」。薬は最終手段!特にベンゾジアゼピンは禁忌と覚えましょう。
国試頻出ポイント
せん妄は高齢者の入院時によく出題されます。正しい非薬物療法(環境調整、見当識支援、離床促進)と、禁忌の介入(身体的拘束、ベンゾジアゼピン系薬剤)をセットで覚えることが合格への近道です。
出題パターン注意!
「発熱・脱水の高齢者が入院後、夜間興奮して不穏となった」という状況設定問題が典型。選択肢には「身体的拘束」「鎮静薬の使用」「環境調整」「離床促進」のどれが適切かが問われます。
臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
夜勤帯、Aさんが「ここはどこ?誰かが盗みに来る」と興奮してベッドから起き上がろうとしています。SpO2モニターが外れ、点滴ラインが引っ張られています。看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)- 1観察まずSafety Firstで、転倒・ライン抜去のリスクを評価。バイタルサイン(特にSpO2、血圧)、せん妄の程度(RASSスケールなど)、点滴の刺入部を確認。
- 2アセスメント低酸素や疼痛、尿意などの身体的要因が興奮を誘発していないか確認。夜間帯で見当識障害が増強している「日没現象」の可能性も考慮。
- 3報告 (SBAR)「Aさん、夜間帯にせん妄の症状が出現。JCS I-2からII-10に低下。SpO2 92%、バイタルサイン安定。点滴自己抜去のリスクあり。医師の指示を仰ぎます。」
- 4介入最重要! まず身体的拘束はしない。穏やかな声かけで「今は病院ですよ、あなたは肺炎の治療中です」と再定位。点滴ラインはテープで固定し、ベッド周囲にセンサーマットを設置。可能であれば、夫に電話して短時間でも話をしてもらい安心させる。
- 5評価介入後、患者の興奮が鎮まったか、安全に夜間を過ごせたかを評価。
看護プロトコル
* 観察項目: JCS、バイタルサイン、SpO2、輸液量とバランス、排尿状況(尿意がせん妄誘因になる)、疼痛の有無。
* 報告基準 (SBAR): S(状況:せん妄の有無と程度)、B(背景:原因となる身体所見)、A(アセスメント:現状の解釈)、R(提案:環境調整の要請や薬剤オーダーの相談)。
* 記録: せん妄発症時刻、JCSの変動、具体的な言動(「盗まれる」などの訴え)、行った介入とその効果。
* 家族説明: 「せん妄は肺炎や脱水が原因で一時的に起こっているもので、症状が改善すれば治まることが多い。身体を縛ることはかえって悪くするのでしません。面会や電話で話しかけていただけると安心します」と伝える。
先輩看護師の一言
「せん妄の患者さんに一番やってはいけないのは『押さえつけること』。それでますます興奮してしまいます。看護師は『見守るプロ』です。危険を予測して環境を整え、優しく声をかける。これがせん妄ケアの基本。国試では『薬より環境』『拘束より声かけ』を覚えてくださいね!」
- せん妄 — 急性に発症する意識・認知機能の変動性障害。身体疾患、薬剤、環境変化などが原因となり、適切な介入で改善可能。
- 非薬物療法 (Non-pharmacological Therapy) — せん妄の第一選択介入。環境調整(見当識支援、照明調整)、離床促進、家族の協力、睡眠リズム正常化を含む。
- 身体的拘束 (Physical Restraint) — 患者の行動を物理的に制限すること。せん妄患者では興奮や混乱を増強させ、転倒リスクを高めるため、可能な限り回避すべき。
- 再定位 — 患者に現在の場所、時間、状況を繰り返し伝え、見当識を回復させるための看護技術。穏やかな声かけが重要。
- 日没現象 — 夕方から夜間にかけてせん妄症状が増強する現象。認知症やせん妄の患者に多く見られ、環境調整が重要となる。
MyMerciで看護師国家試験を完全対策
過去問と詳しい解説を無料で。弱点を分析し、進捗を管理してより効率的に学習しましょう。
無料で始める
学習参考用です。実際の臨床は最新のガイドラインと所属機関のプロトコルに従ってください。