核心解説
この問題は、
グラスゴー・コーマ・スケール (Glasgow Coma Scale, GCS) を用いた意識レベルの評価方法を問うています。
GCSは「開眼 (E)」「言語 (V)」「運動 (M)」の3つの反応をそれぞれ評価し、点数化する世界標準の意識評価ツールです。点数が低いほど意識障害が重度であることを示します。この事例では、Aさんの観察所見を各項目に正確に当てはめる力が求められます。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は
② E1V2M4 です。それぞれの評価は以下の通りです。
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開眼 (E) : 1点 → 「開眼せず」とあるため、自発的にも刺激に対しても全く開眼しません。これは
E1 です。
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言語 (V) : 2点 → 「声は発しているが理解不能」とあります。これは意味のある会話ができず、意味のない発声 (Inappropriate words) やうめき声 (Incomprehensible sounds) の状態です。完全な無反応 (V1) ではなく、発声があるため
V2 となります。
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運動 (M) : 4点 → 「痛み刺激には逃れようとする動作がみられる」とあります。これは痛み刺激に対して、目的を持って刺激を取り除こうとする反応 (Withdrawal / Flexion withdrawal) であり、
M4 です。
混同注意! 異常屈曲 (Decorticate posture / M3) や伸展反応 (Decerebrate posture / M2) とは異なります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
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混同注意! ① E1V1M2: 言語がV1(無反応)と運動がM2(除脳硬直)という評価です。問題文では「声を発している」ことからV1は誤りです。また、「逃れようとする動作」はM2の異常伸展とは全く異なります。
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混同注意! ③ E2V2M2: 開眼がE2(痛み刺激で開眼)という評価です。問題文では「開眼せず」と明記されているため、痛み刺激に対する反応も含めて全く開眼しないE1が正しいです。運動反応もM2(除脳硬直)と誤って評価しています。
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④ E4 V5 M5: これは
正常または清明な状態 を表す最高得点 (15点) です。問題文のAさんの状態(開眼せず、発語は理解不能)とは明らかに矛盾します。
概念整理
GCSの各評価項目とスコア(3~15点)は以下の通りです。
| 項目 | スコア | 反応 |
| 開眼 (E) | 4 | 自発的に開眼 (Spontaneous) |
| 3 | 呼びかけで開眼 (To speech) |
| 2 | 痛み刺激で開眼 (To pain) |
| 1 | 開眼せず (None) |
| 言語 (V) | 5 | 見当識あり (Oriented) |
| 4 | 混乱 (Confused) |
| 3 | 不適切な発語 (Inappropriate words) |
| 2 | 理解不能な発声 (Incomprehensible sounds) |
| 1 | 無反応 (None) |
| 運動 (M) | 6 | 命令に従う (Obeys commands) |
| 5 | 痛み刺激の局在 (Localizes pain) |
| 4 | 逃避反応 (Withdrawal from pain) |
| 3 | 異常屈曲 (Decorticate posture) |
| 2 | 異常伸展 (Decerebrate posture) |
| 1 | 無反応 (None) |
一目で比較!
GCSで最も混同しやすいのは、
運動 (M) スコア の「M4: 逃避反応」と「M5: 局在反応」です。
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M5 (Localizes): 痛み刺激部位を特定し、手で払いのけようとするなど、より目的的な反応。
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M4 (Withdrawal): 刺激から逃れようとする漠然とした屈曲反応で、部位の特定まではしない。
問題文の「逃れようとする動作」は、刺激を特定して払うのではなく、単に身をよじるような反応であるため、M4と判断するのが適切です。
看護過程ポイント
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アセスメント: GCSは意識レベルの経時的変化を評価するために用います。単独の点数だけでなく、
各項目(E, V, M)の内訳の変化を評価することが重要です。例えば、同じ8点でも「E2V3M3」と「E1V2M5」では病態が異なる可能性があります。
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看護診断 (Nursing Diagnosis): 「非効果的脳組織灌流 (Ineffective Cerebral Tissue Perfusion)」や「外傷のリスク状態 (Risk for Injury)」が関連します。
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計画・実施: 意識レベルが低下している患者では、気道確保、呼吸・循環のモニタリング、バイタルサイン測定を優先します。GCS評価は、これらの観察項目の一部としてルーチンで行います。
暗記のコツ
GCSの点数は「高いほど良い(正常)」と覚えましょう。
- 最高得点: E4 V5 M6 =
15点 (清明)
- 最低得点: E1 V1 M1 =
3点 (深昏睡)
特に運動スコアの「6→命令に従う」「5→痛みを局在」「4→逃避」は数字が1つ下がるごとに反応が原始的になる、とイメージすると覚えやすいです。
国試頻出ポイント
GCSは必修問題および成人看護学(脳神経系)で頻出です。以下のパターンで出題されます。
1. 事例文からGCSの点数を計算させる問題(本問のような基本形)。
2. GCSの点数から意識障害の重症度を判断させる問題。
3. GCSの経時的変化(改善 or 悪化)から、治療効果や合併症(頭蓋内圧亢進など)をアセスメントさせる問題。
出題パターン注意!
最近の国家試験では、単なる知識問題から
「GCSが8点の患者が、翌朝E3V4M5に改善した。この評価から何が推測できるか」 のような、点数変化の臨床的意味を問う応用問題が増えています。単に数字を覚えるだけでなく、
各反応がどのような病態(脳幹機能、大脳皮質機能など)を反映しているのか を理解しておくことが重要です。