核心解説
この問題は、糖尿病患者への栄養指導における
エネルギー摂取量 (Energy Intake) の設定を問うています。糖尿病食事療法の基本は、
標準体重 (Standard Body Weight) と
身体活動量 (Physical Activity Level) に基づいて適正エネルギー量を算出することです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
1.
標準体重の算出: 身長170cmの場合、標準体重は
身長(m) × 身長(m) × 22 の計算式を用います。1.7 × 1.7 × 22 =
63.6kg となります。
2.
身体活動量の分類: Aさんはデスクワーク中心の会社員であり、生活活動強度は「軽い労作(I)」に該当します。軽労作の場合、エネルギー係数は
25~30kcal/kg標準体重 が目安です。
3.
1日摂取カロリーの計算: 標準体重63.6kg × 25~30kcal = 1,590~1,908kcalとなります。選択肢の中で最も近い値は
1,800kcal(②番) です。
4.
最重要! 肥満(BMI 34.6、身長170cm/体重100kg)の糖尿病患者では、
減量 (Weight Reduction) も治療目標の一つです。したがって、標準体重を基準にした低めのエネルギー設定が適切です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
-
混同注意! ③番
2,200kcal: 標準体重に30kcal/kgを乗じた値(1,908kcal)を超えており、Aさんの活動量と肥満を考慮すると過剰です。身体活動量を「中等度の労作」と誤って判断した場合に選びやすい誤答です。
- ④番
2,600kcal: これは実体重(100kg)に25~30kcalを乗じた値に近く、肥満者では明らかに過剰なエネルギー摂取となります。標準体重ではなく実体重を用いた誤りです。
- ⑤番
3,000kcal: 明らかに過剰で、糖尿病治療の原則から大きく逸脱します。
- ①番
1,400kcal: 標準体重×22kcal程度に相当し、やや過小です。極端な低エネルギー食はリバウンドや低血糖リスクを高めるため、推奨されません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
糖尿病の食事療法では、
炭水化物 (Carbohydrate) 50~60%、
たんぱく質 (Protein) 15~20%、
脂質 (Fat) 20~25%の栄養バランスも同時に指導する必要があります。また、本症例では
高血糖高浸透圧症候群 (HHS, Hyperosmolar Hyperglycemic State) からの回復期であるため、インスリン療法と食事量のバランスを評価しながら段階的に指導を進めることが重要です。
概念整理:
糖尿病食事療法の基本原則
1. 標準体重 = 身長(m)² × 22
2. 1日総エネルギー量 = 標準体重 × エネルギー係数(軽労作:25~30、中等度労作:30~35、重労作:35~40 kcal/kg)
3. 肥満(BMI≧25)の場合は標準体重基準で低めに設定する
4. 実体重で計算しない(肥満者に過剰なエネルギー量となるため)
一目で比較!
| 計算基準 | 標準体重(63.6kg)使用 | 実体重(100kg)使用 |
|---|
| 軽労作(25~30kcal) | 1,590~1,908kcal | 2,500~3,000kcal |
| 中等度労作(30~35kcal) | 1,908~2,226kcal | 3,000~3,500kcal |
看護過程ポイント
アセスメント: 身長・体重からBMIと標準体重を算出、身体活動量を問診で確認。
看護診断: 「栄養摂取量の過剰(過栄養): 肥満・高血糖に関連」「治療管理の非遵守(服薬中断)に関連する健康管理維持困難」など。
計画・実施: 食事日誌の記録指導、食品交換表を用いた具体的な献立提案、低血糖時の対応方法の教育。
評価: 体重減少の推移、血糖コントロール(HbA1c、食後血糖)の改善、自己管理行動の定着。
暗記のコツ
「軽い仕事は25~30」と覚えましょう!「軽い(軽労作)→25~30」「普通(中等度)→30~35」「重い(重労作)→35~40」と、活動量が上がるごとに5ずつ増えるイメージです。また、「標準体重を忘れずに」計算の第一歩を習慣化しましょう。
国試頻出ポイント
糖尿病患者のエネルギー設定は、
標準体重 × 身体活動量係数 の計算問題が頻出です。特に肥満の有無で設定が変わる点(実体重ではなく標準体重を使用)が引っかけポイントです。また、高齢者や腎障害合併例ではたんぱく質制限も加わるため、併せて学習しておきましょう。
出題パターン注意!
単純な計算問題(本問)から、事例問題へ発展します。
例:「Aさん(65歳、男性、糖尿病、身長165cm、体重65kg、デスクワーク)に1,800kcalの食事指導を行った。適切かどうか判断せよ」→ 標準体重は約60kg、軽労作で1,500~1,800kcal、適切な範囲内と判断します。