核心解説
この問題は、
血液透析 (Hemodialysis) の基本的な原理と看護、および合併症についての理解を問うています。
血液透析は、半透膜を介して血液中の老廃物や過剰な水分を除去する治療法であり、その導入初期には特に注意すべき合併症があります。選択肢の中から正しい記述を1つ選ぶ知識問題です。
1.
核心概念の分析 (Key Concept):
血液透析の基本原理は
拡散 (Diffusion)と
限外濾過 (Ultrafiltration)です。血液と透析液の間に濃度勾配を作り、尿素窒素やクレアチニンなどの低分子量の尿毒素を除去します。導入期には、急激な血液浄化に脳が適応できずに起こる
不均衡症候群 (Disequilibrium Syndrome)が代表的合併症です。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale):
③番が正解です。
最重要! 血液透析導入初期には、血液中の尿素窒素(BUN)などが急速に低下することで、血液と脳脊髄液の間に浸透圧差が生じ、水分が脳へ移動して
脳浮腫 (Cerebral Edema)を引き起こします。これが不均衡症候群であり、頭痛、悪心・嘔吐、意識障害などの症状が出現します。
予防策として、導入初期は短時間・低血流での透析を実施し、急激な血中濃度変化を避けることが重要です。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
①番(合併症は腹膜炎が多い):
混同注意! 腹膜炎は、血液透析ではなく腹膜透析 (Peritoneal Dialysis) の主要な合併症です。血液透析では、カテーテル感染やシャント(バスキュラーアクセス)の感染・閉塞が問題となります。
②番(食事はカルシウムを制限する):
混同注意! 血液透析患者では、リンの排泄障害により高リン血症をきたし、二次性副甲状腺機能亢進症を誘発します。そのため、食事療法では
リン制限が最優先です。カルシウムは、むしろ低下傾向にあるため、制限せずに適切な補充が行われることが多いです。
④番(導入の原因疾患はIgA腎症が最も多い): 血液透析導入の原因疾患として最も多いのは
糖尿病性腎症 (Diabetic Nephropathy)であり、次いで
慢性糸球体腎炎 (Chronic Glomerulonephritis)、
高血圧性腎硬化症 (Hypertensive Nephrosclerosis)の順です。IgA腎症は慢性糸球体腎炎の一種ですが、導入原因としては最多ではありません。
⑤番(透析に用いる半透膜はタンパク質が通過する): 血液透析で用いる
半透膜の孔径は、タンパク質(分子量が大きい)は通過させず、尿素やクレアチニンなどの低分子量物質や電解質のみを通過させるよう設計されています。タンパク質が通過すると、必須栄養素の喪失につながるため、これは誤りです。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts):
血液透析(Hemodialysis)と腹膜透析(Peritoneal Dialysis)の比較は頻出です。
| 項目 | 血液透析 (HD) | 腹膜透析 (PD) |
|---|
| 原理 | 体外循環 + 半透膜(ダイアライザー) | 腹膜を利用した体内透析 |
| 主要合併症 | 不均衡症候群、シャントトラブル、低血圧 | 腹膜炎、カテーテル出口部感染、除水不足 |
| 食事制限 | 水分・カリウム・リン・塩分の厳格な制限 | タンパク質制限は緩やか。カリウム制限も軽度な場合がある |
概念整理: 血液透析の基本原理:拡散(溶質除去)と限外濾過(水分除去)。主要合併症:導入期の不均衡症候群、長期化に伴うアミロイドーシス、シャント閉塞・感染。
一目で比較!: 血液透析 vs 腹膜透析。合併症(不均衡症候群 vs 腹膜炎)、食事制限(リンの制限 vs タンパク質制限の程度)、アクセス(シャント vs 腹膜カテーテル)。
看護過程ポイント:
アセスメント:透析前後の体重変化(ドライウェイトの達成度)、バイタルサイン、シャントの血流音(Bruit)と振動(Thrill)の確認。
看護診断:「体液量過剰」「感染リスク状態」「非効果的健康維持」など。
介入:食事指導(リン・カリウム制限)、体重測定と記録の徹底、シャントの観察と保護、不均衡症候群の予防的観察。
暗記のコツ: 「血液透析で『不均衡』と『リン制限』」。「腹膜透析で『腹膜炎』と『カテーテル感染』」。『不均衡』は頭の『不』を「脳浮腫」の「脳」に結びつける。
国試頻出ポイント: 血液透析と腹膜透析の合併症の比較。食事療法(特にリン制限の重要性)。導入原因疾患の第1位(糖尿病性腎症)。透析困難症や不均衡症候群の予防と対応。
出題パターン注意!: 単純な「正しいものはどれか」に加え、「透析導入期の患者に発生した症状(頭痛・嘔気)に対する看護師のアセスメントと対応を問う」事例問題としても出題されます。患者の状態と検査値(BUNの急激な低下)を結びつけて考える力が求められます。