核心解説
この問題は、
膀胱 (Bladder) の蓄尿と排尿のメカニズムを問う、解剖生理学の基本問題です。自律神経(交感神経・副交感神経)と体性神経の協調によって、
蓄尿(尿をためる)と排尿(尿を出す)の2つの相反する機能が切り替えられます。この切り替えを正しく理解することが鍵です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ③番「蓄尿時に内尿道括約筋は収縮する」が正解です。
蓄尿時は、交感神経(下腹神経)が優位になり、膀胱の排尿筋(Detrusor Muscle)を弛緩させると同時に、
内尿道括約筋 (Internal Urethral Sphincter) を収縮させて、尿が漏れ出ないように尿道を閉じています。この内尿道括約筋は平滑筋で、自律神経(交感神経)の支配を受けるため、意識的にコントロールできません。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番「排尿中枢はホルモンによって制御される」:
混同注意! 排尿中枢は、脊髄(仙髄)の副交感神経中枢と橋の排尿中枢(Pontine Micturition Center)によって制御されます。これは神経性の反射であり、ホルモン(抗利尿ホルモンADHなど)は尿の生成量(濃縮・希釈)を調節しますが、排尿反射そのものを直接制御しているわけではありません。
②番「排尿反射は交感神経を介して起こる」:
混同注意! 排尿反射は、
副交感神経(骨盤神経)を介して起こります。膀胱壁が伸展されると、その刺激が求心性線維を介して脊髄に伝わり、遠心性の副交感神経が興奮し、排尿筋を収縮させ、内尿道括約筋を弛緩させます。交感神経は蓄尿時に優位に働きます。
④番「排尿時に外尿道括約筋は収縮する」:
外尿道括約筋 (External Urethral Sphincter) は骨格筋(横紋筋)で、陰部神経(体性神経)の支配を受け、意識的に収縮・弛緩をコントロールできます。排尿時には、この外尿道括約筋は弛緩して尿の通り道を開きます。収縮すると尿は出せません。
⑤番「蓄尿時に排尿筋は収縮する」:
全く逆です。蓄尿時には排尿筋は弛緩し、膀胱の容積が増えても内圧が急激に上昇しないように保たれます(コンプライアンス)。排尿筋が収縮するのは排尿時です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
膀胱機能の神経支配を整理しておきましょう。
| 神経 | 機能 | 支配筋 |
|---|
| 交感神経 (下腹神経) | 蓄尿を促進 | 排尿筋弛緩 / 内尿道括約筋収縮 |
| 副交感神経 (骨盤神経) | 排尿を促進 | 排尿筋収縮 / 内尿道括約筋弛緩 |
| 体性神経 (陰部神経) | 意識的な排尿制御 | 外尿道括約筋収縮(蓄尿補助)・弛緩(排尿) |
概念整理: 膀胱の蓄尿と排尿は、自律神経(交感・副交感)と体性神経の協調によって成り立っています。「蓄尿 = 交感神経優位」で「排尿 = 副交感神経優位」と覚えましょう。
一目で比較!: 内尿道括約筋(平滑筋、不随意)と外尿道括約筋(骨格筋、随意)の違いを押さえてください。内側が不随意、外側が随意と覚えると良いです。
看護過程ポイント: 神経因性膀胱(Neurogenic Bladder)の患者では、この神経支配のどのレベルに障害があるかで症状が異なります(例:脊髄損傷の高位による排尿筋-括約筋協調不全)。観察時には、尿意の有無、排尿困難、尿失禁のパターン、残尿量などをアセスメントします。
暗記のコツ: 「蓄尿は交(交感神経)・排(排尿)尿は副(副交感神経)」と語呂合わせで覚えましょう。さらに、内括約筋は「内(うち)は交(交感)で閉じる」、外括約筋は「外(そと)は意(意識)で閉じる」と覚えると整理しやすいです。
国試頻出ポイント: この問題は、基礎看護学の「排泄の援助」や成人看護学の「泌尿器系疾患の看護」の基礎となります。特に、脊髄損傷や前立腺肥大症などの病態と関連づけて、排尿障害のメカニズムを問う問題が頻出です。