核心解説
この問題は、成人への与薬方法に関する基本的な知識を問うています。
最重要! 各与薬経路の正しい手技と、混同しやすい部位や挿入深度を正確に区別することが合格の鍵です。看護師は薬剤を安全かつ効果的に投与する責任があり、誤った方法は治療効果の減弱や有害事象の原因となります。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): この問題は、主に
筋肉内注射 (Intramuscular Injection)、
坐薬 (Suppository)、
バッカル錠 (Buccal Tablet)、
点眼薬 (Eye Drops) の4つの経路における正しい投与方法を問うています。それぞれの解剖学的特徴と薬剤吸収のメカニズムを理解することが重要です。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): 正解は
④ 点眼薬は下眼瞼結膜の中央に滴下する です。点眼時は、患者に上を向いてもらい、清潔な手指で下眼瞼を軽く引き下げ、
下眼瞼結膜嚢 (Inferior Conjunctival Sac) の中央に薬液を1滴正確に滴下します。この方法により、薬液が結膜全体に均一に行き渡り、角膜を傷つけるリスクも最小限に抑えられます。点眼後は眼瞼を閉じ、涙点を軽く圧迫(鼻涙管閉鎖法)することで全身吸収を防ぎ、効果を高めます。
標準的な点眼手技として確立されています。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ① 筋肉内注射は大殿筋に行う:これは
誤りです。筋肉内注射の主な部位は、
中殿筋 (Gluteus Medius)(臀上部外側)または
大腿外側広筋 (Vastus Lateralis)、
三角筋 (Deltoid) です。大殿筋(臀下部)には坐骨神経 (Sciatic Nerve) が走行しており、ここへの誤注射は神経損傷のリスクが高いため禁忌です。
混同注意! ② 坐薬は肛門から1cm挿入する:これは
誤りです。坐薬は、薬剤が効果を発揮する
直腸膨大部 (Rectal Ampulla) に到達するよう、成人では肛門から約
4〜5cm 挿入する必要があります。浅すぎると薬剤が保持されず、直腸下部の静脈叢から吸収されるため、効果が不十分または不安定になります。
混同注意! ③ バッカル錠は、かんでから飲み込む:これは
誤りです。
バッカル錠 (Buccal Tablet) は、歯と頬粘膜の間に挟み、唾液でゆっくり溶かしながら粘膜から吸収させる薬剤です。
舌下錠 (Sublingual Tablet) も同様に、噛んだり飲み込んだりせず、口腔粘膜から吸収させます。飲み込むと肝臓で代謝されて効果が減弱する(初回通過効果 (First-Pass Effect))ため、これは絶対に避けなければなりません。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): 経口薬(内服薬)と経粘膜薬(バッカル錠、舌下錠)の違い、点眼薬と点鼻薬、点耳薬の投与姿勢と手技の違いも併せて復習しておきましょう。特に、
舌下錠 (Sublingual Tablet) は狭心症発作時のニトログリセリン (Nitroglycerin) が代表的であり、胸痛発作時の緊急処置として手技を確実に覚える必要があります。
概念整理: 主な与薬経路と投与のポイント
| 経路 | 代表的な薬剤例 | 投与のポイント | 禁忌事項 |
| 筋肉内注射 | ワクチン、抗菌薬 | 中殿筋・大腿外側広筋・三角筋 筋肉内に注入 | 大殿筋(坐骨神経損傷リスク) 血管内への誤注入 |
| 坐薬 | 解熱鎮痛薬 (アセトアミノフェン) 便秘薬 (グリセリン浣腸) | 肛門から約4〜5cm挿入 直腸膨大部に留置 | 直腸出血・手術後 挿入が浅すぎる |
| バッカル錠 | 口腔内真菌症治療薬 | 歯と頬粘膜の間に挟む 噛まずに溶かす | 噛んで飲み込むこと(初回通過効果で効果減弱) |
| 舌下錠 | ニトログリセリン | 舌の裏側に置き溶かす | 噛んで飲み込むこと 水と一緒に飲むこと |
| 点眼薬 | 抗菌薬、緑内障治療薬 | 下眼瞼結膜嚢に滴下 点眼後は眼を閉じ鼻涙管を圧迫 | 角膜に直接滴下 容器の先端が目やまつ毛に触れること |
一目で比較!: バッカル錠 vs 舌下錠 vs 口腔内崩壊錠 (OD錠)
| 種類 | 投与部位 | 吸収経路 | 飲み込む? |
| バッカル錠 | 頬粘膜 | 口腔粘膜から直接吸収 | 噛まずに溶かす。飲み込まない。 |
| 舌下錠 | 舌下粘膜 | 口腔粘膜から直接吸収(最も速い) | 噛まずに溶かす。飲み込まない。 |
| 口腔内崩壊錠 (OD錠) | 舌の上 | 唾液で崩壊後、主に消化管から吸収 | 唾液と一緒に飲み込む |
看護過程ポイント: 与薬前のアセスメントとして、患者の意識レベル、嚥下状態、協力の得られる姿勢を確認します。与薬中は、誤った経路で投与していないか、患者に不快感や痛みがないかを観察します。与薬後は、効果の出現(例:解熱、疼痛緩和)と副作用の有無(例:アレルギー、局所の刺激症状)を評価し記録します。
暗記のコツ: 「筋肉注射はお尻の上の方(中殿筋)」と覚えましょう。「坐薬は4〜5cm」は「良い子(4〜5)の坐薬」と語呂合わせ。「バッカル錠はほっぺたで溶かす」。「点眼はあかんべーして、赤いところ(結膜)にポタリ」とイメージすると覚えやすいです。
国試頻出ポイント: 筋肉内注射の部位(特に中殿筋 vs 大殿筋)、坐薬の挿入深度、バッカル錠/舌下錠の正しい用法(噛まない、飲み込まない)は、毎年のように出題される超頻出項目です。事例問題では、「狭心症発作時にニトログリセリン舌下錠を服用している患者への指導」という形で出題されることも多いです。
出題パターン注意!: 単純な知識問題から、「誤っている組み合わせはどれか」「正しい手技の順序はどれか」といった応用問題や、「在宅で自己注射を行う患者への指導内容」のような状況設定問題に発展します。単に「正しい方法」を暗記するだけでなく、「なぜその方法でなければならないのか」を解剖生理に基づいて説明できるようにしておきましょう。