核心解説
この問題は、
創傷治癒 (Wound Healing) の各段階を理解しているかを問うています。創傷治癒は、大きく分けて3つの段階に分類されます。
1. **炎症期 (Inflammatory Phase)**:出血の制御と創内の清掃が行われる。
2. **増殖期 (Proliferative Phase)**:新しい組織(肉芽組織、血管、上皮)が形成される。
3. **成熟期/再構築期 (Maturation/Remodeling Phase)**:形成されたコラーゲン線維が再構築され、創が収縮し、最終的に
瘢痕組織 (Scar Tissue) となります。
最重要! 成熟期の最終的な結果は、元の組織と完全には同じではない、強固で線維性の瘢痕形成です。この段階では、創の色が赤みを帯びた状態から、次第に白色化し、強度が増していきます(最終的に元の強度の約80%程度に達します)。
正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢④「
瘢痕を形成する」が正解です。成熟期(再構築期)は、増殖期で形成された不規則なコラーゲン線維が、より規則正しく配列し直され、
混同注意! 成熟期はコラーゲンの産生が停止し、分解と再構築のバランスがとれた状態です。創の引っ張り強度(Tensile Strength)が増加し、最終的には瘢痕として治癒が完了します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
混同注意! 「マクロファージが創内を清浄化する」は炎症期の特徴です。マクロファージ (Macrophage) は、壊死組織や細菌を貪食(Phagocytosis)し、創傷治癒の準備を整えます。
② 「基底細胞が創面を覆う」は増殖期の後半、上皮化 (Epithelialization) のプロセスです。基底細胞が分裂・移動し、創傷面を新しい上皮で覆います。これは瘢痕形成よりも前の段階です。
③ 「肉芽組織を形成する」は増殖期の中心的なイベントです。線維芽細胞 (Fibroblast) と新生血管 (Angiogenesis) が創部を満たし、赤く湿った柔らかい組織(肉芽組織)を形成します。成熟期にはこの肉芽組織が成熟し、瘢痕へと変化します。
関連概念の整理 (Related Concepts)
創傷治癒の各段階と、そこで優位に働く細胞・現象をまとめると、以下のようになります。
| 段階 | 主な細胞/現象 | 特徴 |
| 炎症期 | 好中球 (Neutrophil) / マクロファージ (Macrophage) | 止血・炎症反応・創の清浄化 |
| 増殖期 | 線維芽細胞 (Fibroblast) / 血管内皮細胞 (Endothelial Cell) / 基底細胞 (Basal Cell) | 肉芽組織形成・血管新生・上皮化 |
| 成熟期 | 線維芽細胞 / コラーゲン (Collagen) | コラーゲン再構築・瘢痕形成・創収縮 |
概念整理: 創傷治癒の3段階(炎症期・増殖期・成熟期)を時系列で捉え、各期の「目的」と「主な細胞・物質」をセットで覚えましょう。成熟期=「瘢痕形成」と「創収縮」がキーワードです。
一目で比較!: 肉芽組織形成(増殖期)と瘢痕形成(成熟期)はしばしば混同されます。増殖期は「新しい組織を作る」、成熟期は「できた組織を強くする(再構築)」と覚えてください。
看護過程ポイント: 成熟期の看護では、瘢痕の成熟に伴う「そう痒感(Itching)」へのケアと、創の収縮による「拘縮(Contracture)」予防(特に関節部位の創傷)が重要です。保湿ケアと、関節可動域訓練(ROM訓練)を適切に計画します。
暗記のコツ: 「炎症(Inflammation)→ 増殖(Proliferation)→ 成熟(Maturation)」の頭文字「I→P→M」を「イイ感じの傷(IPM)」と覚えてみましょう。最終段階が瘢痕(Scar)です。
国試頻出ポイント: 創傷治癒の各段階と、その段階で行われる看護ケア(例:炎症期の湿潤環境保持、増殖期の栄養管理、成熟期の瘢痕管理)の組み合わせがよく出題されます。特に「瘢痕形成が完了するのはどの段階か」という問いは頻出です。
出題パターン注意!: 「術後〇日の創傷をアセスメントしなさい」といった状況設定問題で、各段階の特徴を問われることが多いです。例えば「術後3日目で発赤・腫脹が強い」→炎症期、「術後10日目で創がピンク色で柔らかい」→増殖期(肉芽形成)のように、経過日数と創の外観を結びつけて覚えましょう。