核心解説
この問題は、
切迫早産 (Threatened Premature Labor) の治療で使用される
子宮収縮抑制薬 (Tocolytics) である
リトドリン塩酸塩 (Ritodrine Hydrochloride) の副作用を理解し、治療中の患者に
優先的に観察すべき項目を問うています。リトドリンは
β2受容体刺激薬 (β2-adrenergic receptor agonist) であり、子宮平滑筋を弛緩させて子宮収縮を抑制しますが、同時に全身のβ2受容体を刺激するため、心血管系への影響が最も重要な副作用となります。
正解の根拠 (Answer Rationale):
リトドリン塩酸塩の最も頻度が高い副作用は
最重要! 頻脈 (Tachycardia) です。この薬剤は心臓のβ1受容体にも軽度ながら作用するため、心拍数が増加します。また、血管平滑筋のβ2受容体刺激による血管拡張で血圧が下降する反射としても頻脈が生じます。したがって、投与中は常に
脈拍数(心拍数)のモニタリングが必須であり、母体心拍数が
120~130回/分以上に達する場合は、肺水腫などの重篤な合併症リスクが高まるため、投与量の調整や中止が必要です。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
① 経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2): リトドリンによる直接的な呼吸抑制や低酸素血症は主要な副作用ではありません。肺水腫が発生した場合は低下しますが、最初に観察すべき項目ではありません。
② 血圧: リトドリンは血管拡張作用により
混同注意! 収縮期血圧を軽度低下させる可能性がありますが、頻脈ほど高頻度かつ緊急性の高い副作用ではありません。血圧低下よりも、それに伴う代償性の頻脈がより重要です。
③ 呼吸数: 肺水腫の前兆として呼吸数増加が見られることがありますが、リトドリンで最も注意すべき副作用は頻脈であり、呼吸数の観察は二次的なものです。
④ 脈拍:
最重要! 正解です。リトドリン投与中は
必ず15~30分ごとに脈拍を測定し、頻脈の有無を評価します。
関連概念の整理 (Related Concepts):
リトドリン塩酸塩の主な副作用として、頻脈の他に、手指振戦、動悸、顔面紅潮、血糖上昇、低カリウム血症、肺水腫(特に大量輸液時や長期投与時)があります。また、
硫酸マグネシウム (Magnesium Sulfate) も子宮収縮抑制薬として使用されますが、こちらは中枢神経抑制、呼吸抑制、腱反射低下に注意が必要であり、全く異なる観察項目となるため、混同しないようにしましょう。
概念整理:
リトドリン塩酸塩 (Ritodrine HCl) はβ2刺激薬で、子宮弛緩作用を持つ。副作用で最も注意すべきは
心血管系への影響(頻脈、動悸、血圧変動、肺水腫)。投与前後のバイタルサイン測定、特に脈拍数と呼吸状態の観察が必須。
一目で比較!:
| 子宮収縮抑制薬 | 主な副作用・観察項目 |
|---|
| リトドリン塩酸塩 (β2刺激薬) | 頻脈 (最重要)、手指振戦、動悸、血糖上昇、肺水腫 |
| 硫酸マグネシウム | 呼吸抑制 (最重要)、腱反射低下、徐脈、血圧低下 |
看護過程ポイント: アセスメント: 投与前の母体脈拍数(基準値の確認)。計画: 投与中は15~30分ごとに脈拍測定。実施: 脈拍数が120回/分以上または患者が動悸を訴えた場合は、すぐに医師へ報告し、投与速度の調整や中止の指示を仰ぐ。評価: 脈拍数が治療目標範囲(通常100~120回/分未満)に保たれているか確認。
暗記のコツ: 「リトドリン=脈拍とリンク!」と覚えましょう。「リト(リトドリン)ドキドキ(頻脈)」という語呂合わせで、副作用の筆頭が頻脈であることをイメージしてください。
国試頻出ポイント: リトドリン投与中の観察項目として「脈拍」を選ばせる問題は極めて頻出です。また、硫酸マグネシウムとの副作用の違いを比較する問題もよく出ます。両者の特徴を表で整理しておきましょう。
出題パターン注意!: 単純知識問題に加えて、「リトドリン投与中の患者が動悸と手指振戦を訴えた場合の看護師の対応」という状況設定問題に発展することもあります。その場合は、まずバイタルサイン(特に脈拍数)を測定し、医師へ報告するという一連の流れを問われます。