核心解説
この問題は、
脳梗塞後遺症 (Post-stroke Sequelae) による
左不全麻痺 (Left Hemiparesis) のある高齢者の
入浴動作の安全指導 に関するものです。転倒リスクが高い入浴場面で、麻痺の特性を理解した
福祉用具の選択と動作の指導 が問われています。ポイントは、浴槽への出入りは
転倒 (Fall) のリスクが最も高い動作 であり、
入浴台(バスボード) の使用は座位を安定させ、
安全な移乗動作 (Safe Transfer) を可能にするという根拠です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は④「浴槽から出るときは入浴台〈バスボード〉を使う」です。
最重要! 片麻痺患者の浴槽出入りは、片足での立位保持が困難で、転倒リスクが著しく高まります。入浴台(バスボード)は浴槽の縁に渡して使用することで、
座位で安定した姿勢 を保ちながら、
麻痺側の脚(左足) と
健側の脚(右足) を安全に浴槽内に出し入れできます。これは
福祉用具の活用 による転倒予防の基本です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
混同注意! 手すりは
健側(右手) で持つことが原則です。麻痺側(左手)では握力が低下しており、手すりを確実に把持できないため、転倒リスクが高まります。
② 浴槽への入り方は
健側(右足)から が基本です。健側で体重を支えながら麻痺側を引き込む動作が安全です。左足から入ると、体重を支えられずに転倒する危険があります。動作の基本は「健患患健(健側から入り、麻痺側から出る)」です。
③ 杖(T字杖など)は、
混同注意! 浴室内の床は水で滑りやすく、杖の滑り止めも十分に機能しない場合があります。また、浴槽の縁や洗い場の段差など、杖の先端が引っかかるリスクもあります。
浴室内での杖の使用は転倒リスクを高めるため、避けるべきです。 浴室内では、壁に設置された手すりや、浴槽用の手すりを使用するのが安全です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
片麻痺患者の入浴動作の基本原則は、
① 福祉用具の活用(入浴台・浴槽用手すり・シャワーチェアなど)、
② 動作の基本パターン(「健患患健」の原則)、
③ 環境整備(滑り止めマットの設置、浴室の段差解消、適切な照明)です。また、
浴槽への出入り は「移乗動作 (Transfer)」の一種であり、
起居動作 (Bed mobility) や
歩行 (Ambulation) と同様に、
患者の残存機能と転倒リスクを評価 した上で指導する必要があります。
概念整理: 片麻痺患者の入浴動作の安全性は、
① 麻痺側への配慮(麻痺側で体重を支えない、麻痺側を引きずらない)、
② 福祉用具の適切な選択(バスボード、手すり、シャワーチェア)、
③ 動作の順序(健側から入り麻痺側から出る)の3点で確保されます。
一目で比較!:
| 動作 | 安全な手順 | 注意点 |
|---|
| 浴槽に入る | 健側(右足)から | 手すりは健側で持つ |
| 浴槽から出る | 麻痺側(左足)から | バスボードに腰掛けて行うとより安全 |
| 浴室内移動 | 手すりを使用 | 杖は使わない |
看護過程ポイント:
アセスメント (Assessment): Aさんの麻痺の程度(筋力、感覚)、バランス能力、浴槽の形状・深さ、手すりの位置・高さ、家族の介護力。
看護診断 (Nursing Diagnosis): 「転倒リスク状態 (Risk for Falls)」
計画 (Plan): 安全な入浴方法の指導(バスボードの使用、動作手順の確認)、環境調整の提案(手すりの設置、滑り止めマットの敷設)。
実施 (Implementation): 実際の入浴動作を模擬的に練習し、安全な方法を習得するまで支援。家族への指導も併せて行う。
評価 (Evaluation): Aさんが安全に入浴できるようになったか、転倒やヒヤリハットが発生していないか。
暗記のコツ: 「入浴動作の順番は『
健(ケン)→患(カン)→患→健』(健側から入り、麻痺側から出る)」と覚えましょう。「健患患健」のリズムで動作をイメージすると、試験でも臨床でも迷いません。バスボードは「
ボードに座って安全に出し入れ」と連想してください。
国試頻出ポイント: 片麻痺患者の入浴指導は、毎年どこかの科目で必ず出題される頻出テーマです。特に「転倒予防」の観点から、正しい福祉用具の選択と動作手順が問われます。単なる知識だけでなく、
なぜその方法が安全なのかを病態生理(麻痺による筋力低下・バランス障害)に基づいて説明できる ことが重要です。
出題パターン注意!: 本問のような単純な選択肢問題に加え、「Aさんが自宅で入浴中に転倒した」という状況設定問題(事例問題)に発展する可能性があります。その場合、転倒後の観察項目(バイタルサイン、意識レベル、神経症状の有無)や、転倒の原因分析(環境因子、動作の誤り)が問われます。