関節拘縮の予防を目的とした関節可動域(ROM)訓練で正しいのはどれか。 | MyMerci
一般・状況設定問題
問題

関節拘縮の予防を目的とした関節可動域(ROM)訓練で正しいのはどれか。

解説
他動運動によるROM訓練は、筋や関節を損傷させないよう「痛みが生じない範囲」でゆっくりと行います。また、健側から行い、徒手筋力テスト1以下では自動運動は困難なため他動運動を行います。

詳細解説

核心解説 この問題は、関節可動域訓練 (Range of Motion Exercise; ROM訓練) の基本的な実施原則と注意点を問うています。関節拘縮 (Joint Contracture) の予防は、寝たきりや運動麻痺のある患者さんの 二次的障害 (Secondary Disability) を防ぐために極めて重要な看護ケアです。ROM訓練には、患者さん自身が行う 自動運動 (Active Exercise) と、他者が関節を動かす 他動運動 (Passive Exercise) があり、患者さんの筋力や状態に応じて適切な方法を選択します。

正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ③「他動運動は痛みが生じないように行う」が正解です。他動運動の目的は、筋収縮を伴わずに関節を動かすことで関節包や靭帯の柔軟性を維持し、拘縮を予防することです。このため、過度な伸展や急な動作による組織損傷(筋挫傷・関節包断裂など)を防ぐ ため、患者さんが「痛い」と訴える範囲を超えて動かしてはいけません。ROM訓練は、常に患者さんの表情や訴えを観察しながら、無痛または軽度の抵抗感を感じる範囲(生理的可動域の範囲内)で、ゆっくりと丁寧に行うのが原則です。

誤答の分析 (Distractor Analysis)
①「関節を速く動かす」 → 混同注意! ROM訓練は、筋や関節を損傷させないよう、ゆっくりとリズミカルに行います。速く動かすと、関節への負担が増大し、筋の防御収縮を引き起こす可能性があるため禁忌です。
②「運動麻痺がある場合は患側から行う」 → 混同注意! ROM訓練は、健側(Healthy Side)から行うのが基本です。健側で動きの見本を示すことで、患者さんが運動をイメージしやすくなり、また、健側から行うことで循環を促進し、徐々に患側へと移行します。麻痺側から行うと、患者さんに恐怖心や不安を与え、筋肉が緊張しやすくなるため推奨されません。
④「徒手筋力テストの結果が1以下の場合は自動運動を促す」 → 最重要! 徒手筋力テスト (Manual Muscle Testing; MMT) の結果が「1」とは、「筋収縮は触知できるが、重力に抗して関節を動かせない状態」です。MMT 1以下の状態で自動運動(自分で関節を動かす)を促すことは不可能です。MMT 1以下では、他動運動 (Passive Exercise) または介助運動 (Assistive Exercise) を実施します。自動運動が可能となるのは、少なくともMMT 3(重力に抗して全可動域を動かせる)以上であることが目安です。

関連概念の整理 (Related Concepts)
ROM訓練と混同しやすい概念として、筋力増強訓練があります。ROM訓練は関節の柔軟性維持が目的であり、筋力増強を直接の目的とはしません。また、拘縮予防には、適切なポジショニング (Positioning)装具療法 (Orthotic Therapy) の併用も重要です。 概念整理 ROM訓練の種類と適応:
種類内容適応(MMT基準)
自動運動 (Active)患者自身が筋肉を収縮させて関節を動かすMMT 3以上
他動運動 (Passive)他者が患者の関節を動かす(筋収縮なし)MMT 0-2
介助運動 (Assistive)患者の自動運動を他者が一部補助するMMT 2-3
一目で比較! ROM訓練の実施原則: - 健側 → 患側の順 - 遠位 → 近位の順(手指 → 手関節 → 肘関節 など) - ゆっくりと、無痛で行う - 各関節を 生理的可動域 の範囲内で動かす 看護過程ポイント - アセスメント: 患者の筋力(MMT)、関節可動域(ROM)、痛みの有無(NRS)、全身状態(バイタルサイン・意識レベル)を評価 - 看護診断: 「関節拘縮のリスク状態 (Risk for Joint Contracture)」「身体可動性障害 (Impaired Physical Mobility)」「活動不耐容 (Activity Intolerance)」 - 計画・実施: 患者の状態に合わせたROM訓練の種類と頻度を決定。各関節を3~5回ずつ、1日2~3回実施するのが一般的。訓練前後の痛みや疲労の評価を忘れずに。 - 評価: 定期的にROM測定を行い、拘縮の進行予防効果を評価。患者の協力が得られているかも重要な評価項目。 暗記のコツ 「ROM訓練の3つの原則」は 「ゆっくり、無痛、健側から」 と覚えましょう。これは「ゆうむけん」のゴロ合わせで「優しい目で患者を見る」というイメージで記憶すると定着しやすいです。
また、MMTの値と運動の種類の関係は、「MMT 0~2は他動、MMT 3以上は自動」 とシンプルに覚えましょう。MMT 3は「重力に抗して動かせる」ラインです。 国試頻出ポイント ROM訓練の原則は、基礎看護技術の「安全・安楽な療養環境の提供」「褥瘡予防・拘縮予防」の文脈で頻出です。特に、「他動運動は痛みが生じないように」 という基本原則は毎年のように問われます。また、廃用症候群 (Disuse Syndrome) の予防策としてのROM訓練の位置づけも重要です。 出題パターン注意! 単純な知識問題(どの選択肢が正しいか)に加え、状況設定問題(事例問題)として出題されることが増えています。例:「脳梗塞後、右片麻痺のある患者さんへのROM訓練の実施方法で適切なのはどれか?」という形で、具体的な患者像を想定した判断が求められます。単なる手順の暗記ではなく、「なぜその手順なのか」「患者にとって安全で効果的な方法は何か」 を常に考えて学習しましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
80代女性、大腿骨頸部骨折 (Femoral Neck Fracture) のため手術後、床上安静中の患者さん。ADLは全介助で、左下肢に疼痛があり、拘縮予防のためにROM訓練が処方されました。看護師が訓練を開始しようとすると、患者さんは「痛い、やめてほしい」と強く拒否します。

看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
1. 観察: まず患者さんの表情、発汗の有無、バイタルサイン(特に心拍数・血圧の上昇)を確認し、痛みの程度をNRS(Numerical Rating Scale)で評価します。骨折部位や手術創の状態も確認します。
2. アセスメント: 患者さんの痛みは、ROM訓練による関節への刺激だけでなく、骨折部や手術創そのものの痛み、あるいは「動かすことへの恐怖感(予期不安)」が原因である可能性を考慮します。
3. 報告・相談: 痛みの強い状態では無理な訓練は逆効果です。医師に報告し、必要に応じて 鎮痛薬 (Analgesics) の投与 や、訓練のタイミング(鎮痛薬の効果がピークに達する時間帯に実施)を調整することを提案します。
4. 介入: 鎮痛薬投与後、痛みが軽減したことを確認してから、再び訓練を試みます。まずは健側(右下肢)から行い、動きに慣れてもらいながら、患側(左下肢)は 最重要! 無痛で、生理的可動域の範囲内で、ゆっくりと 行います。関節を支えながら行い、急な動きを避けます。「今から足首を動かしますね」「痛みが出たらすぐに教えてくださいね」と、一つ一つの動作を説明しながら、患者さんのペースに合わせて実施します。
5. 評価: 訓練中の患者さんの反応(痛みの有無、表情、筋緊張)と、訓練後の関節の状態(腫脹・発赤の有無)を評価します。

患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
- 禁忌: 骨折部や手術創の不安定性が疑われる場合、急性期の炎症(発赤・腫脹・熱感)がある場合は訓練を控える。
- 最重要! 抗凝固療法中の患者さんは、関節内出血のリスクがあるため、過度な牽引や急な可動は避ける。
- 高齢者は皮膚が脆弱なため、摩擦に注意し、把持は優しく行う。
- 患者さんの意識レベルや理解度に合わせた説明を行い、訓練への協力が得られるよう、信頼関係を構築することが重要。 先輩看護師の一言 「ROM訓練って単純な作業に見えるけど、実はすごく奥が深いんです。ただ関節を動かすだけじゃなくて、患者さんの痛みや怖さをしっかりアセスメントして、その人に合った方法で安全に行う。それがプロの看護師の仕事です!国試では『無痛で行う』という原則を覚えておけば大丈夫。現場では、その『無痛』を実現するための観察力とコミュニケーションが問われますよ。患者さんが『気持ちいい』と言ってくれるようなケアを目指しましょう!」

重要概念

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