ムーア, F. D.が提唱した外科的侵襲を受けた患者の生体反応で正しいのはどれか。 | MyMerci
一般・状況設定問題
問題

ムーア, F. D.が提唱した外科的侵襲を受けた患者の生体反応で正しいのはどれか。

解説
ムーアの外科的侵襲に対する生体反応において、第2相の「転換期」ではサードスペースに移行していた水分が血管内に戻るため、循環血液量と尿量が増加します。

詳細解説

核心解説 この問題は、外科的侵襲(Surgical Invasion)を受けた患者の生体反応を、ムーア(Moore, F.D.)の提唱した4つの病期(相)に基づいて理解しているかを問うています。外科的侵襲 (Surgical Stress) に対する生体の代謝反応は、生体防御と回復のために段階的に変化します。この流れを「侵襲期(第1相)」「転換期(第2相)」「筋力回復期(第3相)」「脂肪蓄積期(第4相)」に分類したムーアの分類は、術後看護の基礎となります。

正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ②番の「転換期では循環血液量が増加する」が正解です。
転換期(第2相)は、侵襲から約3~7日後にあたり、サードスペース (Third Space) に移動していた水分やナトリウムが血管内に再び戻り始める時期です。そのため、循環血液量(Circulating Blood Volume)が増加し、それに伴い尿量も増加します。この時期は、循環血液量増加に心臓が対応しきれず、心不全 (Heart Failure)肺水腫 (Pulmonary Edema) のリスクが高まるため、注意深い観察が必要です。

誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
①番「傷害期では尿量が増加する」は誤りです。傷害期(第1相、侵襲直後から約48時間)は、抗利尿ホルモン (ADH)アルドステロン (Aldosterone) の分泌が亢進し、体内に水分とナトリウムを貯留しようとするため、尿量は減少します。この時期は、バイタルサインが不安定で、乏尿(Oliguria)の状態となります。
③番「筋力回復期では蛋白の分解が進む」は誤りです。筋力回復期(第3相、侵襲後約1~2週間)は、異化(Catabolism)から同化(Anabolism)へと代謝が転換する時期です。蛋白の合成が促進され、筋力が回復に向かいます。蛋白分解が進むのは、傷害期(第1相)の特徴です。
④番「脂肪蓄積期では活動性が低下する」は誤りです。脂肪蓄積期(第4相、侵襲後約2~3週間以降)は、体重が回復し、体内の脂肪やエネルギーが蓄えられる時期です。活動性はむしろ回復し、増加します。

関連概念の整理 (Related Concepts)
ムーアの分類は、術後経過 (Postoperative Course) を理解する上で非常に有用です。各期の特徴をバイタルサインや検査値、全身状態と関連付けて覚えましょう。
病期(相)時期主な特徴看護のポイント
第1相:傷害期侵襲直後~48時間異化亢進、水分貯留、乏尿、低体温バイタルサインの安定化、輸液管理、疼痛コントロール
第2相:転換期侵襲後3~7日サードスペース水分の血管内回収、循環血液量・尿量増加心不全・肺水腫の予防(輸液量・尿量・呼吸音の観察)
第3相:筋力回復期侵襲後1~2週間蛋白合成促進、筋力回復、窒素均衡がプラスへ栄養管理(高蛋白食の提供)、早期離床・リハビリの開始
第4相:脂肪蓄積期侵襲後2~3週間以降脂肪蓄積、体重増加、活動性回復退院指導、社会復帰への支援
概念整理: ムーアの外科的侵襲に対する生体反応は、生体の防御反応 であり、侵襲の大きさに比例して反応も強くなります。各期の代謝状態(異化/同化)と水分バランスを理解することが、術後看護のアセスメントの基盤となります。
一目で比較!: 混同注意! 侵襲期(第1相)=「水分貯留・乏尿」、転換期(第2相)=「水分回収・利尿」とセットで覚えましょう。また、蛋白分解が進むのは侵襲期(第1相)であり、筋力回復期(第3相)ではありません。
看護過程ポイント: アセスメントでは、術後の経過日数、バイタルサイン(特に血圧・脈拍)、1時間ごとの厳密な輸液バランス(Intake/Output)と体重測定が重要です。特に転換期では、肺のラ音(Crackles)の有無や頸静脈怒張の観察が、心不全の早期発見に繋がります。
暗記のコツ: 「傷害(1)→転換(2)→筋力回復(3)→脂肪蓄積(4)」の順番を「い(1)・てん(2)・きん(3)・し(4)」と語呂合わせで覚え、各期のキーワード(1:異化/乏尿、2:利尿、3:同化/蛋白合成、4:脂肪)を結びつけると良いでしょう。
国試頻出ポイント: 転換期の循環血液量増加と、それに伴う心不全リスクのアセスメントは、術後看護の分野で非常に頻出です。また、各期の栄養管理(侵襲期は低栄養に注意、筋力回復期は高蛋白食)もセットで出題されやすいです。
出題パターン注意!: 単純な各期の特徴を問う問題だけでなく、「術後3日目の患者さんの尿量が急に増えた。この現象は何期の反応か」といった状況設定問題で出題されることが多いです。病態を経時的に理解しておくことが重要です。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
「80代女性、大腸癌(Colon Cancer)に対して開腹術を施行。術後2日目、全身状態は安定しているが、尿量は30ml/時と少なめ。術後4日目、尿量が突然120ml/時へ増加し、中心静脈圧(CVP)も上昇傾向。患者さんは「何だか息苦しい」と訴えています。看護師として、この状態をどうアセスメントし、どのような看護介入を行いますか?」
看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
これはまさに転換期(第2相)のサインです。
1. 最重要! 観察とアセスメント: まず、バイタルサイン(血圧、心拍数、呼吸数、SpO2)と肺の聴診を速やかに実施します。CVP値の上昇と呼吸困難感は、循環血液量増加による心不全・肺水腫の前兆 (Impending Heart Failure / Pulmonary Edema) です。
2. 報告: 直ちに医師へSBARで報告します(S: 術後4日目、尿量急増と息苦しさ。B: 術後経過は順調だったが、CVP上昇。A: 転換期による循環血液量増加と心不全リスクをアセスメント。R: 指示を仰ぐ)。
3. 介入: 医師の指示に基づき、酸素投与 (Oxygen Therapy) の開始、利尿薬 (Diuretics) の投与準備、輸液速度の減速 を行います。患者さんには、この症状は回復過程の一時的なものであることを説明し、不安を軽減します。
患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
高齢者では心予備能が低いため、転換期の循環血液量増加に耐えられず、容易に心不全に陥ります。術後の輸液管理と肺の聴診は、看護師の重要な観察項目です。
看護プロトコル: 術後患者の観察は、経過日数に応じて重点項目を変えましょう。特に転換期(術後3~7日)は、1時間ごとの尿量・CVP・呼吸音の観察 が必須です。異常があれば、すぐに医師へ報告する体制をとります。
先輩看護師の一言: 「術後管理で一番気をつけるのは、この『転換期の落とし穴』です!『尿量が増えて良くなった』と安心してはいけません。この時期に肺のラ音を見逃すと、夜間に呼吸困難が悪化して大変なことになります。バイタルサインと肺の音は、必ずセットで確認する習慣をつけましょう!」

重要概念

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