核心解説
この問題は、
精神科看護における多職種連携(Multidisciplinary Collaboration)と、患者・家族の社会的・経済的ニーズに対する適切な職種紹介を問うています。妻の相談内容は、「夫の休業給付の有無」「生活費の不安」「入院費用の支払い」といった
経済的・社会的問題であり、医療保険・社会保障制度の活用が鍵となります。このような相談に対しては、
ソーシャルワーク(Social Work)を専門とし、精神科領域の制度に精通した職種への連携が最も適切です。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 精神保健福祉士(Psychiatric Social Worker, PSW)は、精神科医療の現場で患者と家族の抱える経済的問題、社会復帰、制度利用(傷病手当金、障害年金、生活保護、医療費助成など)に関する相談・調整・情報提供を専門に行います。妻の「休業給付が出ないかもしれない」「生活費が心配」「入院費用が払えるか」という相談は、まさにPSWの専門領域です。看護師はこのような相談を受けた際、PSWへ連携・紹介することが適切です。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
①
公認心理師(Certified Psychologist): 心理療法や心理アセスメント、カウンセリングを専門とします。患者の不安や焦り、気分変調などの心理的ケアには関与しますが、経済的・制度的な相談を調整する役割は主な業務ではありません。
②
作業療法士(Occupational Therapist, OT): 作業活動(ADLやIADL、趣味・創作活動など)を通じて、精神症状の改善や社会適応能力の向上を図ります。経済的・社会保障制度の相談は専門外です。
③
理学療法士(Physical Therapist, PT): 身体機能の回復・維持・向上を目的とし、運動療法や物理療法を提供します。うつ病の身体症状(活動性低下など)への関与はあり得ますが、経済的問題の相談を扱う職種ではありません。
混同注意! 患者の「薬を飲みたくない」という心理的葛藤に対しては、公認心理師や精神科医、看護師による服薬アドヒアランス向上の支援が必要ですが、今回の相談は家族の経済的問題です。問題文の「妻の相談」に注目し、相談内容を正確に読み取ることが重要です。
関連概念の整理 (Related Concepts):
精神科医療における多職種連携チーム(Multidisciplinary Team)の各職種の役割を整理しておきましょう。医師、看護師、精神保健福祉士(PSW)、公認心理師、作業療法士(OT)、薬剤師などが連携します。特にPSWは、退院支援、社会復帰、経済的問題(傷病手当金・障害年金の申請支援、生活保護申請、医療費助成の手続きなど)を担当します。看護師が窓口となって家族の相談を聞き、適切な職種へつなぐ役割(ゲートキーパー機能)は、チーム医療の基本です。
概念整理:
精神保健福祉士 (PSW) = 経済・制度・社会復帰の専門家。傷病手当金、障害年金、生活保護、自立支援医療、精神障害者保健福祉手帳などの社会資源の情報提供と申請手続き支援を行います。看護師は、患者・家族の生活全般のニーズを把握し、PSWを含む多職種と連携する調整役を担います。
一目で比較!:
| 職種 | 主な専門領域 | 今回の相談対応 |
|---|
| 精神保健福祉士 (PSW) | 経済的支援、社会制度活用、退院調整、社会復帰支援 | 最も適切 |
| 公認心理師 | 心理アセスメント、心理療法(カウンセリング)、心理教育 | 不適切 |
| 作業療法士 (OT) | 作業活動を通じた機能訓練・社会適応 | 不適切 |
| 理学療法士 (PT) | 身体機能の回復・維持(運動療法) | 不適切 |
看護過程ポイント:
アセスメント: 患者・家族の経済的・社会的状況(職業、収入、保険の種類、家族構成、住居環境など)を包括的にアセスメントする。
看護診断: 「非効果的健康管理」「非効果的対処」「家族のコーピング困難」「不安」などが考えられる。
計画・実施: 経済的問題についてはPSWと連携し、社会資源の活用を検討する。
評価: 制度利用が開始され、家族の不安が軽減したかどうかを確認する。
暗記のコツ: 「
精神保健
福祉士 =
精福(せいふく)」→「生活の
福祉(お金・制度)を支援する人」と覚えましょう。「心理(こころ)」ではない、「お金と社会」の専門家です。
国試頻出ポイント: 看護師国家試験では、多職種連携(特にPSW、MSW(医療ソーシャルワーカー)、ケアマネジャー)の役割を問う問題が頻出です。事例問題で「経済的相談」「退院後の生活支援」「制度利用」「社会復帰」などのキーワードが出たら、まずPSWを疑いましょう。
出題パターン注意!: 単純な「PSWの役割は?」という知識問題から、事例を通じて「どの職種に相談するか」を判断させる応用問題へと発展します。また、医療ソーシャルワーカー(MSW)とPSWの違い(MSWは一般病院、PSWは精神科に特化)も整理しておくと良いでしょう。