核心解説
この問題は、
右片麻痺 (Right Hemiplegia) と
失語症 (Aphasia) を有する高齢脳梗塞患者の
移乗介助 (Transfer Assistance) における適切な方法を問うています。患者は
最重要! 右上下肢麻痺(左大脳半球損傷)があるため、移乗は
健側(左側)を活用 するのが原則です。また、長期臥床後の
起立性低血圧 (Orthostatic Hypotension) と
バランス障害 (Balance Impairment) を考慮した安全対策が求められます。
正解の根拠 (Answer Rationale)
1.
④ 車椅子をAさんの左側に準備する
Aさんは右片麻痺のため、
健側である左側の上下肢を使って移乗動作を行います。車椅子を麻痺側(右側)に置くと、立ち上がりや方向転換が困難で転倒リスクが高まります。左側に配置することで、患者は健側の足で立位をとり、健側の手で車椅子の肘掛けや座面を支えながら安全に移乗できます。
最重要! 片麻痺患者の移乗は「健側を支持側に、麻痺側を非支持側に」が基本原則です。
2.
⑤ 移乗前に血圧測定を行う
Aさんは発症後2週間の安静臥床期間があり、回復期リハビリテーション病棟に転棟したばかりです。長期間臥床していると
起立性低血圧 (Orthostatic Hypotension) を起こしやすくなります。移乗時の急な立ち上がりで血圧が低下し、
失神 (Syncope) や転倒を引き起こす危険があります。移乗前に
血圧を測定し、基準値(収縮期血圧100~120mmHg程度) を確認してから動作を開始することで、患者の安全を確保します。
混同注意! 移乗前の血圧測定は、すべての患者に必須ではありませんが、脳卒中後や高齢者、長期臥床後など
循環動態が不安定な患者 には重要な安全対策です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
混同注意! ズボンのウエスト部分をつかんで引き上げる行為は、
皮膚のずれや摩擦による損傷リスク があります。また、ウエスト部分を掴むと患者のバランスを崩しやすく、
転倒の危険を高めます。適切な移乗介助では、患者の腰部や骨盤部をしっかり支える(移乗用ベルトや看護師の手の平全体で支える)方法が推奨されます。
② ベッドの高さを車椅子の座面より低くすると、患者は立ち上がる際に
より大きな筋力とバランス能力が必要 になります。適切な移乗では
ベッドの高さを車椅子の座面と同じかやや高めに設定 することで、立ち上がり動作をスムーズにし、患者の負担を軽減します。
③ 床に離床センサーマットを設置することは、
移乗動作そのものの援助ではなく、転倒後の早期発見を目的とした環境整備 です。移乗時の安全確保には直接的な援助とはなりません。また、Aさんは失語症で発語がないため、センサーマットで離床を検知しても患者が助けを呼べない可能性があります。移乗時の適切な介助とは異なります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
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混同注意! 片麻痺患者の移乗の基本原則: 健側(麻痺がない側)を支持側にする。麻痺側を非支持側(前方または後方)に配置する。車椅子は必ず健側に置く。移乗方向は健側から車椅子へ。
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片麻痺のタイプと介助方法の違い: 左片麻痺(右大脳損傷)の場合、
半側空間無視 (Unilateral Neglect) を合併することが多いため、麻痺側(左側)に刺激を与えながら注意を促す必要がある。右片麻痺(左大脳損傷)の場合、
失語症 (Aphasia) を合併することが多いため、言語指示だけでなく
ジェスチャーや視覚的合図 を併用する。
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起立性低血圧の予防: 移乗前の血圧測定、段階的な起立(ギャッジアップ→端座位→立位)、下肢の運動(足首のポンプ運動)、弾性ストッキングの使用など。
概念整理:
片麻痺患者の移乗介助における3つの基本原則
1.
健側活用: 移乗は必ず健側(この場合は左側)から行う。
2.
高さ調整: ベッドの高さを車椅子の座面と同じかやや高めに設定し、立ち上がりをスムーズにする。
3.
循環動態の安定確認: 長期臥床後や高齢者では、移乗前に血圧測定を行い、起立性低血圧のリスクを評価する。
一目で比較!:
| 項目 | 健側(左側)に車椅子 | 麻痺側(右側)に車椅子 |
|---|
| 立位保持 | 健側の足で体重支持が可能 | 麻痺側の足で支持できず転倒リスク大 |
| 方向転換 | 患者が車椅子を見ながら移動可能 | 患者が車椅子を見るために首を回す必要ありバランス不良 |
| 手の使用 | 健側の手で車椅子を支えられる | 麻痺側の手では支えられない |
| 安全性 | 安全 | 危険(転倒リスク高) |
看護過程ポイント:
アセスメント: 患者の麻痺側(右側)と健側(左側)を確認。筋力、バランス能力、失語の程度、循環動態(血圧変動の有無)を評価。過去に転倒歴や起立性低血圧の既往がないか確認。
看護診断 (Nursing Diagnosis):
「身体可動性障害 (Impaired Physical Mobility)」、
「転倒リスク状態 (Risk for Falls)」、
「コミュニケーション障害 (Impaired Verbal Communication)」。
計画・実施: 移乗前に血圧測定をルーチン化する。車椅子を健側に配置し、看護師は患者の正面または麻痺側(右側)に立ち、患者の腰部を両手で支える。口頭指示は短く明確に(「立ちます」「座ります」)。
評価: 移乗が安全に実施できたか(転倒なし)。患者のバランスが安定しているか。起立性低血圧の有無(めまい、ふらつき、血圧低下)。
暗記のコツ: 「
片麻痺の移乗は『健側の足』が主役!車椅子は必ず健側に置く」と覚えましょう。また、「
移乗前に血圧測定 → 立ち上がる前に『血圧チェック』」は高齢者・脳卒中患者の安全の鉄則です。「
麻痺側に車椅子 → 転倒確実!」と強く印象づけておきましょう。
国試頻出ポイント: 片麻痺患者の移乗介助は、
毎年のように出題される基本必須問題です。特に「車椅子の配置場所(健側or麻痺側)」と「移乗前の安全確認(血圧測定)」の組み合わせは頻出です。問題文で「右片麻痺」とあれば、即座に「車椅子は左側」と判断できるようにしましょう。また、高齢者や脳卒中後の患者では「起立性低血圧」のリスクを常に念頭に置くことが求められます。
出題パターン注意!: この問題は「2つ選べ」形式で、正解の組み合わせ(④と⑤)を選ぶ必要があります。
混同注意! 「ベッドの高さを低くする(②)」や「離床センサーマット(③)」は一見関連がありそうですが、
移乗時の直接的な安全確保の方法としては不適切です。誤答選択肢には「一見正しそうだが、詳細な根拠で誤りと判断できるもの」が含まれているため、各選択肢の病態生理学的根拠を一つ一つ確認する習慣をつけましょう。