入所して1週後。Aさんは、朝、声をかけられてもなかなか目を覚まさない。午前中は看護師が他の入所者と交流することを目的に共… | MyMerci
一般・状況設定問題
問題

入所して1週後。Aさんは、朝、声をかけられてもなかなか目を覚まさない。午前中は看護師が他の入所者と交流することを目的に共有スペースに誘導するが、Aさんは共有スペースの椅子に座ったまま眠ってしまい、レクリエーションへ誘われても参加はしない。夕方から夜間にかけてAさんは活動的となり、施設の廊下を歩き職員に話しかけている。Aさんへの看護師の対応で最も適切なのはどれか。

Aさん(82歳、女性)は息子(57歳、会社員)と息子の妻(55歳、パート勤務)との3人暮らし。3年前にAlzheimer〈アルツハイマー〉型認知症と診断され、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準Ⅱb、要介護2である。Aさんの介護は、主に息子の妻が行っていた。Aさんは、声かけがあれば日常生活動作〈ADL〉を自分で行うことができた。しかし、Aさんは徐々に認知症が重度化し、1人で外出すると帰ってくることができなくなり、夜間に落ちつきなく動き回ることが多くなった。息子と息子の妻はAさんの介護について介護支援専門員に相談していたが、息子の妻は睡眠不足となり、体調を崩してしまった。そのため、Aさんは介護老人保健施設に入所することになった。
解説
昼夜逆転の生活リズムになっているため、日中に太陽の光を浴びながら適度に身体を動かす「散歩に誘う」ことで、夜間の睡眠を促し概日リズムを整える援助が最も適切です。

詳細解説

核心解説 この問題は、認知症高齢者に多く見られる昼夜逆転 (Day-Night Reversal / Sundowning)の症状に対する看護介入の優先順位を問うています。Aさんは、朝は覚醒が困難で、夕方から夜間にかけて活動的になるという明確な睡眠・覚醒リズムの障害を示しています。これは、アルツハイマー型認知症 (Alzheimer’s Disease)に伴う 体内時計 (Circadian Rhythm) の障害 が原因です。看護の目標は、日中の活動量を増やし、夜間の睡眠を促進することで、正常な概日リズム (Circadian Rhythm) を取り戻すことです。そのため、最も適切な介入は、日中の活動を促すことです。 正解の根拠 (Answer Rationale) 最重要! 正解は「2. 日中の散歩に誘う」です。日中に 太陽光 (Sunlight) を浴びながら 適度な運動(散歩) を行うことで、メラトニン (Melatonin) の分泌リズムが整い、夜間の睡眠が促進されます。これは、非薬物療法として認知症の睡眠障害に最も推奨される介入の一つです。Aさんの 認知症高齢者の日常生活自立度判定基準Ⅱb(何らかの介護が必要だが、歩行は可能)であり、散歩に誘うことは安全に実施可能な介入です。 誤答の分析 (Distractor Analysis) - 1. 朝の入浴を勧める。
混同注意! 入浴は覚醒を促す効果が期待できる一方で、Aさんのように覚醒が不十分な状態では、転倒 (Fall) や浴槽内での溺水のリスク が高まります。安全面を考慮すると、日中の覚醒が安定してから検討すべき介入です。優先順位としては、まずは安全な活動(散歩)から始めるのが適切です。 - 3. 朝はAさんが自分で起きるまで待つ。
これは、睡眠不足による疲労回復を待つという発想ですが、Aさんの問題は「眠いから起きられない」のではなく、体内時計が狂っているために朝に眠くなっている という病態です。このまま待っていても昼夜逆転は改善せず、むしろ悪化させる可能性があります。受動的な対応ではなく、能動的にリズムを整える介入が必要です。 - 4. 日中は椅子に座って過ごしてもらう。
これは現状維持の対応であり、Aさんはすでに日中を椅子に座って眠って過ごしています。このままでは廃用症候群 (Disuse Syndrome)社会的孤立 を促進し、認知機能のさらなる低下を招く恐れがあります。身体を動かす機会を積極的に作ることが重要です。 関連概念の整理 (Related Concepts) - サンセット症候群 (Sundowning Syndrome): 認知症高齢者に見られる、夕方から夜間にかけて興奮、焦燥、徘徊などの症状が出現・増悪する現象。昼夜逆転とは異なり、夕方に特定の症状が現れることを指しますが、その背景に概日リズム障害がある点は共通しています。 - 睡眠衛生 (Sleep Hygiene): 認知症の睡眠障害に対する非薬物療法の基本。日中に適度な活動と太陽光を浴びること、カフェインやアルコールを避けること、寝室の環境を整えることなどが含まれます。
概念整理 昼夜逆転の病態と看護介入 - 原因: 認知症による視交叉上核(体内時計の中枢)の障害、日照不足、日中の活動量低下 - 看護目標: 睡眠・覚醒リズムの正常化、QOLの向上 - 看護介入:
介入効果注意点
日中に太陽光を浴びるメラトニン分泌リズムの調整日焼け防止、転倒注意
適度な運動(散歩など)身体疲労による睡眠促進安全な環境で行う
日中の仮眠を制限夜間睡眠の質向上短時間(30分以内)なら可
夜間の環境調整睡眠を妨げる刺激を除去薄明かり、静かな環境

看護過程ポイント - アセスメント: Aさんの睡眠パターン(睡眠時間、覚醒状態、夜間の活動内容)、日中の活動量(座位時間、歩行時間)、環境因子(日照時間、レクリエーション内容)、薬剤(睡眠薬の有無)を評価する。 - 看護診断: 睡眠パターン障害 (Disturbed Sleep Pattern) または 活動耐性低下 (Activity Intolerance) - 計画: 日中の活動量を段階的に増やし、夜間の睡眠時間を延長する。具体的な活動スケジュール(散歩、レクリエーション参加)を立案する。 - 実施: Aさんのペースに合わせて散歩に誘い、無理強いはしない。成功体験を積み重ねられるよう、短時間から始める。 - 評価: 夜間の睡眠時間が延長したか、日中の覚醒時間が増加したかを観察する。
暗記のコツ 認知症の「昼夜逆転」と聞いたら、「陽の光を浴びて動く!」 と連想しましょう。朝の光を浴びることで体内時計がリセットされる「光療法」が基本です。覚え方のゴロは「認知症の昼夜逆転、治すなら朝の光と散歩だ!」です。
国試頻出ポイント - 認知症の行動・心理症状(BPSD)の中でも、睡眠障害昼夜逆転 は頻出テーマです。 - 選択肢の中で「待つ」「見守る」といった消極的な介入は、多くの場合誤りです。積極的にリズムを整える介入が正解になることが多いです。 - 入浴や外出など、リスクの高い活動は安全が確保されてから検討するという「患者安全」の視点も問われます。
出題パターン注意! 「昼夜逆転の認知症高齢者に対して、看護師が最初に実施するのはどれか」という問題は基本ですが、「Aさんが夜間に興奮して徘徊している時、看護師の対応で適切なのはどれか」といった応用問題にも対応できるよう、サンセット症候群 (Sundowning) への対応(声かけ、気分転換、安全確保)も併せて学習しておきましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド - 臨床シナリオ (Clinical Scenario): あなたは介護老人保健施設に勤務する看護師です。入所から1週間が経過したAさん(82歳、アルツハイマー型認知症)は、毎朝、なかなか起きることができず、午前中は共有スペースの椅子で居眠りをしています。夕方になると歩き回り、夜間も眠れずにナースステーションに何度もやってきます。家族からは「家でも同じような状態でした。夜中に徘徊して困っていました」と情報を得ています。Aさんの睡眠覚醒リズムを改善するために、あなたはどのような看護ケアを計画しますか? - 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): 1. 観察・アセスメント: Aさんの24時間の行動記録をつけ、睡眠時間帯と覚醒時間帯を把握する。夜間の徘徊の有無、日中の活動内容、食事摂取量、水分摂取量も記録する。家族から、自宅での生活パターン(起床時間、就寝時間、日中の活動)を詳しく聞き取る。 2. 看護介入: - 最重要! 午前中(特に10時〜11時頃)に、天気の良い日は必ず 散歩に誘う。最初は5分程度から始め、Aさんの体調と気分に合わせて徐々に時間を延ばす。無理強いはせず、声かけを続ける。 - 散歩が難しい日は、車椅子で日当たりの良い場所に移動 し、日光浴を促す。 - 日中の居眠りは、30分以内にとどめるように声かけをする。長時間の睡眠は避ける。 - 夕方以降は、部屋の照明を落とし、静かな環境を整える。夜間の徘徊が見られたら、無理に制止せず、気持ちを落ち着かせる声かけ(「一緒に少し歩きましょうか」など)を行う。 3. 評価: 1週間後、朝の覚醒状態が改善したか、夜間の睡眠時間が延長したかを評価する。改善が見られない場合は、医師と相談し、睡眠薬の調整や、光療法の本格的な導入を検討する。 - 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): - 散歩中の転倒・転落に注意! 認知症高齢者は歩行が不安定なことが多いため、必ず職員が付き添い、安全なルートを選択する。靴は滑りにくいものを履かせる。 - 熱中症対策! 夏場の日光浴は短時間とし、こまめな水分補給を行う。体調不良の訴えがないか、顔色や発汗の状態を観察する。 - 夜間の徘徊による転倒・骨折を予防! 廊下に障害物を置かない、足元の照明を確保する。センサーマットを設置し、ナースステーションでモニタリングする。
看護プロトコル - 観察項目: 睡眠時間(日中の仮眠時間、夜間の睡眠時間)、覚醒状態(朝の覚醒のしやすさ、日中の眠気)、活動量(散歩時間、座位時間)、バイタルサイン、水分・食事摂取量 - 報告基準 (SBAR): - S (状況): Aさんの昼夜逆転が改善せず、夜間の徘徊が続いています。 - B (背景): アルツハイマー型認知症、入所1週間、日中は椅子で居眠り、夜間は活動的。 - A (アセスメント): 体内時計の障害による概日リズムの乱れが疑われます。日中の活動量増加と太陽光暴露が必要です。 - R (提案): 日中の散歩プログラムを強化したい。また、光療法や睡眠薬の調整について医師の指示を仰ぎたい。 - 記録のポイント: 行動記録(24時間スケール)、介入内容(散歩の時間と距離、声かけの内容)、患者の反応(覚醒状態、気分)、夜間の睡眠状態を具体的に記録する。 - 家族への説明: 昼夜逆転の原因と、日中の活動(散歩)の重要性を説明する。「お母さまは病気の影響で体内時計が狂ってしまっています。朝起きるのがつらそうですが、日中に少しでも身体を動かすことが、夜ぐっすり眠るためにとても大切です。ご家族も、面会の時に一緒に散歩をしてあげてください」と伝える。
先輩看護師の一言 「認知症の昼夜逆転、本当に悩ましいですよね。でも、これは『わがまま』や『怠け』ではなく、れっきとした病態なんです。大切なのは、患者さんのリズムに合わせるのではなく、健康なリズムに戻してあげるという視点です。焦らず、根気強く、毎日コツコツと日中の活動を促すことが何よりの治療です。そして、何より 『できた!』という小さな成功体験 を一緒に喜んであげてくださいね!」

重要概念

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