核心解説
この問題は、
急性心筋梗塞 (Acute Myocardial Infarction, AMI) 患者の病態生理に基づくアセスメントを、特に
Forrester分類 (Forrester Classification)を用いて評価する力を問うています。
Forrester分類は、AMI急性期の血行動態を、
肺動脈楔入圧 (Pulmonary Artery Wedge Pressure, PAWP)(肺うっ血の指標)と
心係数 (Cardiac Index, CI)(末梢循環不全の指標)の2軸で評価する分類です。本症例では、PAWPが20mmHg(≧18mmHg)で肺うっ血あり、CIが2.4L/分/m2(≧2.2L/分/m2)で末梢循環不全なし、と判断できます。また、身体所見の
両側下肺野の断続性副雑音(水泡音)も肺うっ血を示唆する所見です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 本症例はForrester分類II群(PAWP高値、CI正常域)に該当します。PAWP 20mmHgは肺うっ血の基準値である18mmHg以上であり、肺毛細血管内圧上昇により肺胞間質へ体液が漏出し、聴診上で水泡音として聴取される状態です。よって、②番の「肺うっ血が起きている」というアセスメントが適切です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番:
混同注意! 心胸郭比 (CTR) 48%は正常範囲(50%未満)であり、心拡大は認められません。心拡大は慢性心不全などでみられる所見で、急性期の本症例ではまだ顕在化していません。
③番: Forrester分類では、末梢循環不全はCI 2.2 L/分/m2未満で評価します。本症例のCIは2.4であり、正常範囲内です。また、血圧96/52mmHgは低値ですが、これは急性期の交感神経系の代償性反応や疼痛による影響も考慮する必要があり、CIが保たれている限り、末梢循環不全とは判断しません。
④番: 左室駆出率 (LVEF) 58%は正常範囲(50%以上)であり、左心室の収縮力は保たれています。AMI発症直後でも、梗塞領域が限局している場合や代償機構が働いている場合、LVEFは維持されることがあります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
Forrester分類は以下の4群に分類されます。
| 分類 | PAWP (mmHg) | CI (L/分/m2) | 病態 |
|---|
| I群 | ≦18 | ≧2.2 | 正常血行動態 |
| II群 | ≧18 | ≧2.2 | 肺うっ血(本症例) |
| III群 | ≦18 | ≦2.2 | 末梢循環不全(低拍出) |
| IV群 | ≧18 | ≦2.2 | 肺うっ血 + 末梢循環不全(心原性ショック) |
概念整理: Forrester分類はAMI急性期の血行動態評価に必須です。PAWPは肺うっ血、CIは末梢循環の指標と覚えましょう。肺うっ血の身体所見として、断続性副雑音(水泡音)、呼吸困難、頻呼吸(本症例では30/分)などがあります。
一目で比較!:
混同注意! Killip分類(心不全の重症度を臨床所見で評価)とForrester分類(血行動態指標で評価)は異なります。Killip分類は身体所見(肺うっ血の有無、ショックの有無)に基づく分類で、侵襲的測定を必要としません。一方、Forrester分類はスワン・ガンツカテーテルによるPAWPとCIの測定値が必要です。
看護過程ポイント:
アセスメント: バイタルサイン(特にSpO2、呼吸数)、聴診所見(水泡音の有無と範囲)、尿量、意識レベルを定期的に評価します。
看護診断: 「肺うっ血に関連したガス交換障害」や「心拍出量減少のリスク状態」が考えられます。
計画・実施: 酸素療法の調整(SpO2 95%以上目標)、安静保持、利尿薬(フロセミドなど)投与、入出力バランスの厳密な管理を行います。
暗記のコツ: Forrester分類は「P」と「C」で覚えましょう。「P (PAWP) が高い=Pulmonary congestion(肺うっ血)」、「C (CI) が低い=Circulatory failure(循環不全)」と紐付けると記憶しやすいです。
国試頻出ポイント: Forrester分類の各群の定義とそれに対応する看護介入(酸素療法、利尿薬、強心薬、血管拡張薬など)がセットで出題されます。特に、II群(本症例)では利尿薬と血管拡張薬が、IV群(心原性ショック)では強心薬と大動脈内バルーンパンピング (IABP) が治療の中心となることを押さえましょう。
出題パターン注意!: 本問のように検査値(PAWP、CI)と身体所見(聴診所見)を組み合わせてアセスメントさせる問題が頻出です。単なる数値の暗記ではなく、「この数値が示す病態は何か、患者にどんな症状が出現するか」を統合して理解しましょう。