核心解説
この問題は、
舌癌 (Tongue Cancer) の疫学、発生部位、病理学的特徴を問う基礎的な知識問題です。舌癌は口腔癌の中で最も頻度が高く、その病態を正確に理解することが、早期発見と看護介入の第一歩となります。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): 舌癌は口腔癌の約40〜50%を占め、発生率は全癌の約2〜3%とされています。組織学的には、
扁平上皮癌 (Squamous Cell Carcinoma, SCC) が圧倒的に多く(約90%以上)、口腔粘膜の上皮細胞から発生します。好発部位は舌の側縁(舌縁部)で、舌下面や舌尖部に発生することは比較的稀です。発症年齢は50〜70歳代の中高年に多く、飲酒や喫煙が主なリスク因子です。特徴として、早期からリンパ節転移を起こしやすく、局所浸潤性も高い癌です。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale):
正解は⑤番です。 舌癌の病理組織型は、大多数が「扁平上皮癌」です。この知識は、口腔癌全般の診断と治療方針の決定に必須です。扁平上皮癌は、角化や細胞異型を特徴とし、進行に伴い深部へ浸潤し、頸部リンパ節へ転移します。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ①番:「癌全体に対する発症頻度は約10%である。」→
混同注意! 舌癌は全癌の約2〜3%であり、約10%というのは明らかに過大です。肺癌や大腸癌と比較すると頻度は低いことを覚えておきましょう。
- ②番:「発症年齢は20歳代が多い。」→ 舌癌の好発年齢は50〜70歳代であり、20歳代は極めて稀です。若年者に多い癌とは言えません。
- ③番:「好発部位は舌尖である。」→
混同注意! 舌癌の好発部位は「舌縁(側面)」です。舌尖部に発生することもありますが、最も多いのは舌縁部です。
- ④番:「浸潤は起こさない。」→ 舌癌は
浸潤性・転移性の高い癌であり、周囲の筋肉や組織に浸潤し、早期に頸部リンパ節転移をきたすのが特徴です。「浸潤は起こさない」という記述は完全に誤りです。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): 口腔癌の鑑別としては、舌癌の他に、歯肉癌、口腔底癌、頬粘膜癌、口蓋癌などがあります。また、前癌病変として
白板症 (Leukoplakia) や
紅板症 (Erythroplakia) があり、これらの粘膜病変の経過観察や生検の必要性を看護師も理解しておく必要があります。舌癌の治療は、外科的切除(部分切除~全摘出)と頸部郭清術が主体で、必要に応じて放射線治療や化学療法が併用されます。
概念整理: 舌癌は口腔癌最多、組織型は
扁平上皮癌(約90%)、好発部位は舌縁、好発年齢は50-70代、リスク因子は飲酒・喫煙、早期リンパ節転移と局所浸潤が特徴。
一目で比較!:
| 項目 | 舌癌 | 口腔癌(その他) |
| 組織型 | 扁平上皮癌(主体) | 扁平上皮癌、腺様囊胞癌など |
| 好発部位 | 舌縁(側面) | 歯肉、口腔底、頬粘膜、口蓋 |
| 転移 | 早期に頸部リンパ節 | 部位により異なる(舌癌が最も転移しやすい) |
看護過程ポイント:
アセスメント: 舌の疼痛、潰瘍、腫瘤、しこり、出血、開口障害、構音障害、嚥下困難の有無を観察。飲酒・喫煙歴も重要な情報。
看護診断: 口腔粘膜損傷、嚥下障害、コミュニケーション困難(構音障害)、術後はボディイメージの変調や自己概念の変化。
計画・実施: 術前の口腔ケア、禁煙・禁酒指導。術後は気道確保、創部の観察(出血、感染)、経管栄養や吸引の管理、言語訓練の早期介入。
評価: 創部治癒状態、経口摂取の開始と進行状況、コミュニケーション方法の確立、心理的適応。
暗記のコツ: 「舌癌は『舌の横(舌縁)』にできて『扁平上皮癌』!年齢は『50-70代』で、頻度は『全癌の約2%』」と、語呂合わせや図でイメージすると覚えやすいです。
国試頻出ポイント: 舌癌の組織型(扁平上皮癌)と好発部位(舌縁)は毎年と言っていいほど出題される基礎知識です。さらに、術後看護(気道確保の優先度、吸引の注意点、栄養方法、口腔ケアの具体的方法)を絡めた状況設定問題で出題されることも多いです。
出題パターン注意!: 「舌癌術後の患者。術後1日目、看護師の観察で最も注意すべき項目はどれか。」(正解は気道閉塞のリスク)のように、術後合併症の予防と早期発見に焦点が当てられます。単純知識だけでなく、術後のバイタルサイン、呼吸音、創部の腫脹、出血の有無を総合的にアセスメントする力が求められます。