核心解説
この問題は、
分娩第1期(移行期)における、特に
努責(いきみ)のコントロール に関する看護介入を問うています。分娩が順調に進行し、子宮口開大8cm(移行期)に達したAさんは、「便が出そう」という強い排便感と、「もう頑張れない」という発言から、
児頭の下降による直腸圧迫 が原因であるとアセスメントできます。
最重要! この時期(子宮口開大8~10cm)にいきむことは、未熟な子宮頸管に過度な負担をかけ、
頸管裂傷 や
子宮口の浮腫 を引き起こし、分娩の進行を妨げる可能性があります。したがって、看護師は努責を逃すための呼吸法を指導する必要があります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は④「息を吐いて力を抜きましょう」です。この時期の排便感は、実際の便意ではなく、児頭が下降し直腸を圧迫することによる
反射的な排便感 です。看護師は、Aさんに「息を吐く」(呼気を長くする)ことで、自然といきみが逃げるよう促します。これは「
短促呼吸」や「
フー呼吸」として知られるテクニックで、横隔膜の動きをコントロールし、腹圧をかけるのを防ぎます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
①「リラックスするためにお風呂に入りましょう」:
禁忌です。 破水後は上行感染のリスクがあるため、入浴は避けるべきです。また、リラクゼーションが必要な場面ではありますが、今のAさんの状態(いきみたい衝動)に直接対応できていません。
②「赤ちゃんのために我慢しましょう」: この声かけは、Aさんの苦痛を否定し、我慢を強いるだけであり、看護として不適切です。患者の訴えに寄り添い、具体的な対処法を指導する必要があります。
③「トイレに行って排便しましょう」:
危険です。 これは生理的な排便感ではなく、児頭下降による圧迫感です。実際にトイレでいきめば、子宮口や腟壁に過度な負担がかかり、頸管裂傷や
児頭の急速な下降 による軟産道損傷のリスクが高まります。また、分娩室内でトイレ歩行は転倒の危険も伴います。
関連概念の整理 (Related Concepts)
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分娩第1期 の潜伏期・活動期・移行期の特徴と看護:移行期は最も疼痛が強く、いきみたい衝動が出現する時期です。この時期の看護の鍵は「いきませないこと」です。
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努責 (Pushing) の適切なタイミング:子宮口が完全に開大し(10cm)、医師または助産師の指示のもと、分娩第2期に入ってから開始します。
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呼吸法 (Breathing Techniques):分娩各期に応じた呼吸法(緩息法、短促呼吸、フー呼吸など)を状況に合わせて指導します。
概念整理
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移行期(子宮口開大8~10cm):分娩第1期の中でも最も疼痛が強く、児頭下降に伴い排便感・いきみ感が出現する。
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看護の目標:
いきみを逃す(努責をコントロールする)ことで、頸管裂傷や子宮口浮腫を予防し、安全な分娩進行を支援する。
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具体的介入:呼気を長くする呼吸法(フー呼吸)の指導、リラクゼーションの促し、マッサージ、クーリングなど。
一目で比較!
| 時期 | 子宮口開大 | いきみ | 看護介入 |
|---|
| 潜伏期 | ~3cm | いきまない | リラクゼーション、休息の促進 |
| 活動期 | 4~7cm | いきまない | 呼吸法指導、体位変換の援助 |
| 移行期 | 8~10cm | いきみたい衝動強い | 最重要! 短促呼吸・フー呼吸で努責を逃す指導 |
| 分娩第2期 | 完全開大後 | いきむ(医師/助産師の指示) | 適切ないきみ方の指導、会陰保護 |
看護過程ポイント
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アセスメント:子宮口開大度、破水の有無、児頭の下降度、排便感の有無、いきみの強さ、全身状態(疲労度)。
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看護診断:「出産過程の進行に関連する痛み」や「いきみに対するコントロール困難」。
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計画・実施:フー呼吸の具体的な方法を指導。呼吸に集中できるよう環境を整え(照明を落とす、静かな声かけ)、パートナーにも協力を依頼。
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評価:Aさんが呼吸法を実践できているか、いきみの衝動が軽減したか、バイタルサインに異常がないか。
暗記のコツ
「移行期はいきませるな!」とゴロで覚えましょう。「8cm(はち)は、いきみ(息)を逃す(ハチ)」。子宮口8cm=排便感+いきみ感=
フー呼吸で逃す。
国試頻出ポイント
このテーマは、事例問題で
「移行期の看護」 として頻出です。特に、「便が出そう」「もう無理」といった患者の訴えに対し、①入浴をすすめる、②トイレに行かせる、③我慢させる、といった誤った選択肢と、④フー呼吸を促す正しい選択肢がセットで出題されます。分娩各期の特徴と看護をセットで覚えましょう。
出題パターン注意!
近年の国試では、単なる知識問題から、
状況設定問題(事例問題)へと発展しています。例えば、「子宮口開大9cm、破水後、いきみ感が強い初産婦。努責を逃すための看護として適切なのは?」といった形で、病態や検査値と看護介入を統合した出題が増えています。