人体の前面と背面を図に示す。Aさんの人工肛門が造設される位置はどれか。 | MyMerci
一般・状況設定問題
問題

人体の前面と背面を図に示す。Aさんの人工肛門が造設される位置はどれか。


Aさん(60歳、男性、会社員)は息子2人が独立して遠方で暮らしており、2年前に妻と死別して以来、1人暮らし。直腸癌と診断され、腹会陰式直腸切断術、人工肛門造設術を行うと外来で説明を受けた。Aさんは看護師に対して「人工肛門を作ると聞いています。便が出てくる場所がどこなのかよくわからなくてイメージできない」と話した。
解説
腹会陰式直腸切断術(マイルズ手術)では、通常、左下腹部(S状結腸)に永久的ストーマが造設されます。図の②が該当します。

詳細解説

核心解説 この問題は、腹会陰式直腸切断術 (Abdominoperineal Resection, APR) 後の永久的な人工肛門(ストーマ)の造設位置を問うています。Aさんは「便が出てくる場所」がイメージできず不安を感じています。看護師として、術後のストーマの位置を正しく理解し、患者さんに具体的に説明できることが求められます。 1. 核心概念の分析 (Key Concept): 腹会陰式直腸切断術 (Miles手術) は、直腸癌のうち肛門に近い下部直腸癌に対して行われ、直腸全体と肛門括約筋を切除する根治的手術です。そのため、排泄経路として永久的な人工肛門(ストーマ)が必要となります。ストーマは通常、切除された直腸の口側である S状結腸 (Sigmoid Colon) を用いて造設されます。S状結腸は下行結腸から連続し、腹部の左側に位置するため、ストーマは自然と 左下腹部 に造設されます。 2. 正解の根拠 (Answer Rationale): 正解は (左下腹部)です。S状結腸は骨盤内で下行結腸から続き、直腸へと移行する部分です。この腸管を腹壁に出してストーマとするため、自然に左下腹部が造設位置となります。術前にストーマサイトマーキング(ストーマを造設する最適な位置を皮膚に印をつけること)を行う際も、この左下腹部を基本とし、患者さんの体型やベルトライン、骨の隆起などを考慮して決定します。 3. 誤答の分析 (Distractor Analysis):
①: 右上腹部。通常、混同注意! 上行結腸や横行結腸の一部を用いる 上行結腸ストーマ回腸ストーマ (Ileostomy) が造設される位置です。Aさんの手術(直腸切断術)では該当しません。
③: 右下腹部。主に 回腸ストーマ (Ileostomy)盲腸ストーマ (Cecostomy) が造設される位置です。結腸全摘術などの場合に該当し、直腸切断術では原則として選択されません。
④: 右上腹部。横行結腸を引き出す 横行結腸ストーマ (Transverse Colostomy) が造設される位置です。緊急時の減圧目的や、一時的なストーマとして用いられることが多いです。永久的なストーマとして直腸切断術後に用いられることは稀です。 4. 関連概念の整理 (Related Concepts): 最重要! ストーマの種類とその特徴、適応疾患を整理しておきましょう。
ストーマの種類造設位置主な適応疾患
S状結腸ストーマ (Sigmoid Colostomy)左下腹部直腸癌(腹会陰式直腸切断術後)、S状結腸癌
上行結腸ストーマ (Ascending Colostomy)右上腹部下行結腸癌、S状結腸癌(閉塞時など)
横行結腸ストーマ (Transverse Colostomy)上腹部正中・やや右側緊急減圧、吻合予定部位の保護
回腸ストーマ (Ileostomy)右下腹部潰瘍性大腸炎(全大腸切除後)、家族性大腸腺腫症

概念整理: 腹会陰式直腸切断術 (Miles手術) = 下部直腸癌の根治術。肛門と直腸を切除するため、永久的なS状結腸ストーマ が左下腹部に造設される。
一目で比較!: ストーマ位置は、使用する腸管の解剖学的位置で決まる。S状結腸(左下)→直腸癌、回腸(右下)→潰瘍性大腸炎、横行結腸(上腹部)→緊急減圧。解剖をイメージすれば迷わない!
看護過程ポイント: - アセスメント: ストーマの色調(健常な粘膜は赤色、暗紫色は虚血サイン)、形状、排泄物の性状(S状結腸ストーマは半固形状、回腸ストーマは泥状~液状)、周囲皮膚の状態(びらん、発赤の有無)。 - 看護診断: スキン・インテグリティ障害 (Impaired Skin Integrity) リスク状態、ボディイメージ混乱 (Disturbed Body Image)セルフケア不足 (Self-Care Deficit)(ストーマケアに関連)。 - 計画・実施: 術前のストーマサイトマーキングへの立ち会いと説明、術後のストーマと排液の観察、装具交換の指導、パウチ(便袋)の選択と交換手技の指導、セルフケア確立に向けた段階的な支援。心理的サポート(ボディイメージの変化への受容)。 - 評価: ストーマが正常に機能しているか(排泄、色調)、スキントラブルがないか、患者が自力でストーマケアを実施できるようになったか、心理的に受容できているか。
暗記のコツ: 「直腸癌の手術 = マイルズ = S状結腸ストーマ = 左下腹部」とセットで覚えましょう。「便が通る最後の部分(直腸)を切るから、その手前のS状結腸を出口にする」と解剖の流れで理解すると忘れません。
国試頻出ポイント: ストーマの位置(特にS状結腸ストーマ vs 回腸ストーマ)はほぼ毎年出題されます。問題文で「直腸癌」「潰瘍性大腸炎」などの疾患名がストーマ位置のヒントになります。また、術後の合併症(ストーマ壊死、脱出、狭窄)も頻出事項です。
出題パターン注意!: 単純な位置を問う問題に加え、「術後のストーマの色が暗紫色になった場合の対応」や「ストーマ周囲の皮膚トラブルに対するケアの優先順位」など、状況設定問題に発展します。解剖と病態生理の理解が必須です。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド - 臨床シナリオ (Clinical Scenario): あなたは消化器外科病棟の看護師です。Aさん(60代男性)が腹会陰式直腸切断術とS状結腸ストーマ造設術を受けて術後2日目です。Aさんはベッド上で安静にしていますが、ストーマの装具から便が少し漏れているのに気づき、「自分でちゃんと管理できるか心配だ…」と不安な表情を浮かべています。 - 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): 最重要! まず、ストーマの状態を観察します(色調はピンク色か、浮腫はあるか、排泄はあるか)。次に、漏れの原因をアセスメントします(装具のサイズが合っていない?面板のカットが適切でない?肌にしわが寄っている?)。装具を交換し、皮膚を洗浄・乾燥させた後、適切なサイズの面板を再度貼付します。その際、Aさんに手順を見せながら、「今から一緒にやってみましょうか?」と声をかけ、ケアに参加してもらうことでセルフケアへの自信を育てます。 - 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): - 注意! ストーマの色調が暗紫色や黒色に変色している場合は、ストーマ壊死 (Stoma Necrosis) の可能性があり、緊急で医師へ報告が必要です。 - 装具交換時は、皮膚保護剤 (Skin Barrier) を適切に使用し、ストーマ周囲の皮膚を便から保護します。 - 便の漏れはスキントラブル(接触性皮膚炎)の原因となるため、こまめな観察と適切な装具管理が重要です。 - 患者の心理面への配慮を忘れずに。羞恥心や喪失感に共感し、前向きなケアができるよう支援します。
看護プロトコル: - 観察項目: ストーマの色調(正常:赤~ピンク色)、高さ(皮膚面より出ているか)、浮腫の有無、排液の性状(色・量・臭い)、周囲皮膚の状態(発赤・びらん・ただれの有無)。 - 報告基準 (SBAR): Situation(患者Aさん、術後2日目、ストーマ装具から便漏れあり)、Background(腹会陰式直腸切断術後、ストーマはS状結腸)、Assessment(漏れにより周囲皮膚が湿潤、発赤あり。接触性皮膚炎のリスク高い)、Recommendation(装具を再評価し、適切なサイズのものに変更したい。医師の指示が必要な場合は相談)。 - 記録のポイント: 観察したストーマと皮膚の状態、実施したケア(装具交換の手技、使用した製品)、患者の反応(不安の程度、ケアへの参加状況)。
先輩看護師の一言: 「ストーマケアの基本は『見る』『知る』『慣れる』です。最初は戸惑う患者さんが多いけど、私たち看護師が根気強く、優しく指導することで、多くの患者さんが自分で管理できるようになります。『便が漏れたのは失敗じゃない、ケアのチャンスだ!』という前向きな気持ちで接してあげてください。そして、なによりストーマは患者さんの体の一部。大切に扱う気持ちを忘れずにね!」

重要概念

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