核心解説
この問題は、
廃用症候群 (Disuse Syndrome) によって生じる全身の生理的変化について問うています。廃用症候群とは、長期間の安静臥床や不動状態により、身体の各器官・システムに生じる二次的な機能低下の総称です。
安静臥床による骨への力学的刺激(体重負荷や筋肉の牽引力)の減少は、骨代謝のバランスを崩し、骨形成よりも骨吸収が優位になります。その結果、骨塩量が減少し、
骨粗鬆症 (Osteoporosis) や
高カルシウム血症 (Hypercalcemia) を招くことがあります。
正解の根拠 (Answer Rationale):
安静臥床により骨への負荷が減少すると、破骨細胞 (Osteoclast) の活性化が促進され、
骨吸収 (Bone Resorption) が亢進します。これは、不動によるカルシウム代謝の変化を理解する上で極めて重要な病態生理です。このため、廃用症候群の予防には早期離床や関節可動域訓練 (ROM訓練) が不可欠です。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意!
①番の「1回換気量の増加」は誤りです。安静臥床では呼吸筋の筋力低下と肺活量の減少が生じ、
1回換気量 (Tidal Volume) は減少します。無気肺 (Atelectasis) や肺炎のリスクが高まります。
②番の「循環血液量の増加」は誤りです。安静臥床では心臓への静脈還流量が減少し、循環血液量 (Circulating Blood Volume) は
減少します。また、起立性低血圧 (Orthostatic Hypotension) の原因ともなります。
③番の「基礎代謝の上昇」は誤りです。不動により筋肉量が減少し、全身の代謝活動が低下するため、
基礎代謝 (Basal Metabolism) は低下します。
⑤番の「食欲の増進」は誤りです。活動量の低下に伴い、消化管運動も低下するため、
食欲は減退し、便秘や低栄養のリスクが高まります。
関連概念の整理 (Related Concepts):
廃用症候群は全身に影響を及ぼします。循環器系では心拍出量 (Cardiac Output) の減少と起立性低血圧、呼吸器系では肺活量 (Vital Capacity) の減少と分泌物の貯留、筋骨格系では筋萎縮 (Muscle Atrophy) と骨吸収亢進、皮膚では褥瘡 (Pressure Ulcer)、精神面ではうつ状態やせん妄 (Delirium) など、多岐にわたる症状が出現することを一元的に理解しましょう。
概念整理:
廃用症候群は、不動・安静による全身の機能低下。特に骨代謝では「負荷減少→骨吸収亢進」がポイント。予防には早期離床・リハビリテーションが必須。
一目で比較!:
| システム | 安静臥床による変化 |
| 筋骨格系 | 筋萎縮、骨吸収亢進(骨粗鬆症) |
| 循環器系 | 循環血液量減少、起立性低血圧 |
| 呼吸器系 | 1回換気量減少、無気肺 |
| 代謝 | 基礎代謝低下、食欲減退 |
看護過程ポイント:
アセスメント: 安静期間、関節可動域、筋力、皮膚の状態(褥瘡リスク)、バイタルサインの変化(特に起立性低血圧)。
看護診断: 「活動耐受力低下 (Decreased Activity Tolerance)」「身体可動性障害 (Impaired Physical Mobility)」「自己排泄障害 (Self-Care Deficit)」など。
介入: 医師の指示に基づく早期離床の促進、ベッド上での自動・他動的関節可動域訓練、ポジショニング、栄養管理(特にカルシウムとビタミンD)。
暗記のコツ: 「廃用症候群の変化は、全て
『使わないと衰える』方向に進む」と覚えましょう。1回換気量→減る、循環血液量→減る、基礎代謝→減る、食欲→減る。ただし、骨吸収だけは『負荷が減ると亢進する』という逆方向です。これを「
骨だけは吸収が進む(骨が痩せる)」とイメージしましょう。
国試頻出ポイント: 廃用症候群で生じる「増えるもの」と「減るもの」の識別問題は頻出です。特に「骨吸収の亢進」と「循環血液量の減少」はセットで問われることが多いです。また、予防策としての「関節可動域訓練」や「早期離床」の重要性も合わせて出題されます。
出題パターン注意!: 単純な知識問題から、「長期臥床中の高齢患者のアセスメント(事例問題)」へ発展します。事例の中で「食欲がない」「立ちくらみがする」「骨折した」などの症状から、廃用症候群による変化を推測させる問題が出題されます。