核心解説
この問題は、
心拍出量 (Cardiac Output, CO) に影響を与える生理学的因子を問うています。心拍出量は、
1回拍出量 (Stroke Volume, SV) × 心拍数 (Heart Rate, HR) で決定されます。さらに1回拍出量は、
前負荷 (Preload)、後負荷 (Afterload)、心筋収縮力 (Contractility) の3つの要素によって調節されています。この問題では、後負荷が増大すると心拍出量が減少するという、重要な病態生理学的関係を理解することが鍵です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 選択肢②の「大動脈圧の上昇」は、
後負荷 (Afterload) の増大を意味します。後負荷とは、心室が血液を駆出する際に心室壁が受ける張力(抵抗)のことです。大動脈圧が上昇すると、左心室は高い圧力に逆らって血液を送り出さなければならないため、同じ心筋収縮力では1回拍出量が減少します。その結果、心拍出量は低下します。これは、高血圧症や大動脈弁狭窄症で心不全が進行するメカニズムの一つです。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
混同注意!「心拍数の増加」は、通常は心拍出量を増加させます。しかし、極端な頻脈(例:180回/分以上)になると、心室充満時間が短縮し1回拍出量が減少するため、心拍出量は逆に低下します。この問題では「正常な心臓」とあるため、生理的な範囲での増加が前提となります。
③「静脈還流量の増加」は、
前負荷 (Preload) の増大を意味します。静脈還流量が増えると、心室はより多くの血液で拡張され(
Frank-Starlingのメカニズム)、心筋線維の伸展により収縮力が増強され、1回拍出量が増加します。その結果、心拍出量は増加します。
④「心筋収縮力の上昇」は、直接的に1回拍出量を増加させるため、心拍出量は増加します。これは陽性変力作用(Positive Inotropic Effect)として知られ、心不全治療薬であるジギタリス製剤などの作用機序です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
心拍出量を理解するには、以下の3つの因子を常にセットで覚えましょう。
| 因子 | 定義 | 増加時のCOへの影響 | 代表的病態 |
| 前負荷 (Preload) | 拡張末期に心室を満たす血液量 (心室拡張末期容積) | 増加 (Frank-Starling則) | 体液過多、心不全(うっ血) |
| 後負荷 (Afterload) | 心室が血液を駆出する際に抵抗する圧力 (大動脈圧、肺動脈圧) | 減少 | 高血圧、大動脈弁狭窄症 |
| 心筋収縮力 (Contractility) | 前負荷や後負荷とは独立した心筋の収縮能力 | 増加 | 心筋梗塞(低下)、カテコラミン投与(上昇) |
概念整理
心拍出量 (CO) = 心拍数 (HR) × 1回拍出量 (SV) であり、SVは前負荷・後負荷・心筋収縮力の3因子で調節されます。後負荷(大動脈圧)上昇はSVを減少させ、COを低下させます。
一目で比較!
| 状態 | 前負荷 | 後負荷 | 心筋収縮力 | 心拍出量 |
| 大動脈圧上昇 | → (変化なし) | ↑ (増加) | → (変化なし) | ↓ (減少) |
| 出血性ショック | ↓ (減少) | → (変化なし) | ↑ (代償性増加) | ↓ (減少) |
| 運動時 | ↑ (増加) | ↑ (増加) | ↑ (増加) | ↑ (増加) |
看護過程ポイント
-
アセスメント: 心拍出量低下の兆候(血圧低下、頻脈、末梢冷感、尿量減少、意識レベル低下、チアノーゼ)を観察する。
-
看護診断: 「心拍出量減少 (Decreased Cardiac Output)」は、心不全やショック状態の患者に優先される看護診断である。
-
介入: 後負荷を軽減するために、安静保持、血管拡張薬(硝酸薬など)の投与補助、血圧管理を行う。
暗記のコツ
「後負荷が高いと、心臓が『重い荷物』を押し出すイメージ。同じ力では押し出せる量が減る(CO減少)と覚えよう。逆に『前負荷が高い』は『風船が十分に膨らんでいる』イメージで、弾む力が強くなる(CO増加)」
国試頻出ポイント
心拍出量に影響する因子(前負荷、後負荷、心筋収縮力、心拍数)は、
循環器系の基礎として毎年必出です。特に「後負荷上昇(大動脈圧上昇)→心拍出量減少」の因果関係は、高血圧や心不全の病態理解に直結するため、頻出です。具体的な数値(心拍出量の正常値:約5L/分)や心係数 (Cardiac Index) と併せて問われることもあります。
出題パターン注意!
単純な知識問題に加え、「心筋梗塞後の患者で、血圧が180/100mmHgと高値を示している。心拍出量に与える影響はどれか」のような事例問題に発展します。後負荷管理の重要性(降圧療法)を理解しているかが問われます。