核心解説
この問題は、高齢患者の退院支援における
多職種連携(Multidisciplinary Collaboration)の知識を問うています。Aさんは脳梗塞後遺症による左半身麻痺があり、入院前は要介護2でサービスを利用していましたが、今回の入院(脱水によるものと推測)を契機にADLが低下し、退院後の生活に不安が生じています。看護師は、患者が安全に退院し在宅生活を継続できるよう、各専門職と連携するコーディネーター役割を担います。重要なのは、
「患者の現在のADL障害(歩行不安定)」と
「退院後の生活環境の再調整」という2つの課題を解決するために、誰と連携すべきかを考えることです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は④
理学療法士(Physical Therapist)と⑤
介護支援専門員(Care Manager)です。
- ④: Aさんは歩行が不安定で起立時のふらつきがあります。
理学療法士は、運動機能の評価、歩行訓練、筋力強化、そして転倒予防のための動作指導を担当します。退院前に具体的なリハビリ計画を立案するために連携が必要です。
- ⑤: Aさんは既に
介護保険サービスを利用中であり、今回のADL低下に伴い、サービス内容の見直し(例:ポータブルトイレの配置、訪問介護やデイサービスの追加、住宅改修の検討)が不可欠です。
介護支援専門員は、ケアプランの変更や新たなサービスの導入、多職種間の調整を行うため、退院後の生活を支える中心的な役割を担います。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
- ①薬剤師:Aさんに服薬調整が必要な薬剤(特に、新たに内服が開始された薬など)があれば連携が必要ですが、問題文にその情報はなく、ADL低下への直接的な対応ではないため優先度は低いです。
- ②民生委員:民生委員は地域住民の生活相談や福祉サービスの情報提供を行いますが、医療・介護の専門的なケア計画の調整やリハビリの直接的な指示は行いません。現時点での連携対象としては適切ではありません。
- ③管理栄養士:食欲低下や脱水からの回復過程にあり、食事の栄養指導や経口摂取の評価は重要ですが、ADL低下や歩行不安定という直接的な問題への対応ではありません。退院後の食事形態や栄養補給方法の検討が必要な段階ではありません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
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混同注意! 作業療法士(Occupational Therapist)も連携候補になり得ますが、問題文では「トイレまで歩けそうにない」「歩行不安定」と
移動能力の低下が主訴です。作業療法士は主に食事、更衣、トイレ動作などの具体的な生活動作の訓練や、住宅改修の提案を行いますが、この設問では歩行・移動の専門家である理学療法士がより優先されます。
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最重要! 退院支援において、
「ADLの評価とリハビリ」は
理学療法士、
「生活環境の調整とサービスの導入」は
介護支援専門員という役割分担を理解することが国試では頻出です。
概念整理: 退院支援における多職種連携
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理学療法士 (PT): 歩行訓練、筋力強化、移動能力の評価・訓練(今回の最優先)
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作業療法士 (OT): 日常生活動作(ADL)訓練、住宅改修の提案
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言語聴覚士 (ST): 嚥下・言語機能の評価・訓練
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管理栄養士 (ND): 栄養アセスメント、食事指導
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薬剤師 (Ph): 服薬指導、薬剤管理
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医療ソーシャルワーカー (MSW): 医療費、退院後の社会資源調整
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介護支援専門員 (CM): ケアプラン作成、サービス調整、多職種連携の要(今回の最優先)
一目で比較!
| 職種 | 主な役割 | 本問での適否 |
|---|
| 理学療法士 | 粗大運動(歩行・起立)の訓練 | 適切(歩行不安定の改善) |
| 介護支援専門員 | ケアマネジメント・サービス調整 | 適切(退院後の生活環境再構築) |
| 作業療法士 | 細かなADL(食事・更衣)の訓練 | 優先度低(現時点の主訴は移動) |
看護過程ポイント
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アセスメント: Aさんの現在のADLレベル(歩行、排泄、起立動作)を具体的に評価する。入院前のADLと比較し、どの程度低下したかを明確にする。
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看護診断: 「身体可動性障害(Impaired Physical Mobility)」や「転倒リスク状態(Risk for Falls)」が優先される可能性が高い。
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計画・実施: 退院前カンファレンスを開催し、PT・CMを含む多職種で情報共有と具体的な退院計画を立案する。ポータブルトイレの位置や手すりの設置など、自宅の環境を具体的に想定する。
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評価: 退院後のADLが安全に実施できているか、転倒などの有害事象が発生していないかをフォローする。
暗記のコツ
- 「
歩けなくなったらPT」→ Physical TherapistはPhysical(身体)のスペシャリストと覚える。
- 「
家に帰る準備はCM」→ Care Managerが家での生活(ケアプラン)をデザインすると覚える。
国試頻出ポイント
- 退院支援は
必修問題および
状況設定問題で頻出。特に「多職種連携のパズル問題」は、患者のニーズと職種の役割を正確にマッチさせる必要がある。
-
「在宅復帰」がキーワード。在宅生活の継続可能性を高めるために、誰が何をするのかを整理しておくこと。
出題パターン注意!
- 単純に「理学療法士と作業療法士の違い」を問うだけでなく、事例の中で「どの職種が最優先か」を判断させる応用問題が増えている。今回のように「歩行」と「環境調整」という2つの異なるニーズが提示され、複数選択させるパターンは、臨床での実際の判断力を問う良問です。