核心解説
この問題は、
身体的拘束 (Physical Restraint) 中の患者に対する看護の原則を問うています。特に、
双極性障害 (Bipolar Disorder) の
躁状態 (Manic Episode) にある患者の安全を確保しつつ、身体的な合併症を予防し、患者の尊厳を守るための適切な介入を理解することが鍵となります。拘束はあくまで患者の安全を守るための最終手段であり、その間の看護は「安全の確保」「合併症の予防」「精神的ケア」の3つを柱に考える必要があります。
1.
正解の根拠 (Answer Rationale)
-
最重要! ②番:
身体的拘束中は不動状態が続くため、深部静脈血栓症 (Deep Vein Thrombosis, DVT) から肺血栓塞栓症 (Pulmonary Thromboembolism, PTE) を発症するリスクが著しく高まります。そのため、
フットポンプ運動 (Foot Pump Exercise) の実施や弾性ストッキングの着用、医師の指示による抗凝固薬の投与など、予防的な看護介入が不可欠です。
-
最重要! ③番:
拘束中の患者は強い不安感や孤立感、見捨てられた感覚を抱きやすい ため、
頻回に様子を見に来ることを伝え 実際に訪室することで、「あなたのことを気にかけています」「安全は守られています」というメッセージを伝えることが、患者の精神的安定に繋がります。これは
患者の尊厳を守る看護 (Dignity in Care) の基本です。
2.
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
- ①番:
水分摂取は最小限にする ことは誤りです。拘束中は発汗や不穏によるエネルギー消耗で脱水リスクが高いため、経口または経静脈的に
十分な水分摂取 を確保することが必要です。水分制限はかえって状態を悪化させます。
- ④番:
身体的拘束の原因となった行為を一緒に振り返る ことは、
タイミングが不適切 です。興奮状態がおさまっていない、またはおさまった直後は患者自身の統制力が低下しており、振り返りは逆効果になります。振り返りは、患者の状態が安定し、冷静に会話ができるようになってから、治療の一環として行うべきです。
- ⑤番:
看護師の判断で身体的拘束を解除する ことは、
禁忌行為 です。身体的拘束は医師の指示に基づき実施され、その解除も医師の指示が必要です。看護師が単独で解除することは、医療安全上のリスク(急な行動化など)を招く可能性があります。ただし、状態を観察し、解除可能と判断した場合は速やかに医師へ報告し指示を仰ぎます。
3.
関連概念の整理 (Related Concepts)
混同注意! 身体拘束の三大合併症は
拘束中の廃用症候群 (Disuse Syndrome) として捉えられます。①静脈血栓塞栓症(肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症)、②筋力低下・関節拘縮、③褥瘡(とくに仙骨部や踵部)を必ずセットで覚えましょう。また、拘束中の観察頻度は最低でも
15~30分ごと が基準とされます。
概念整理: 身体的拘束中の看護は「安全(自傷・他害防止)」と「合併症予防(PTE/DVT、脱水、褥瘡、筋力低下)」と「精神的ケア(不安軽減、尊厳の保持)」の3軸で考える。拘束は治療の一環であり、患者への威嚇や懲罰ではないという姿勢が重要。
一目で比較!:
| 介入 | 適切なタイミング | 理由 |
|---|
| 拘束中の声かけと観察 | 拘束中ずっと継続 | 不安軽減と安全確認のため |
| 行動の振り返り | 精神症状が落ち着いた後 | 患者の認知機能が回復し、治療的対話が可能になるため |
| 拘束の解除 | 医師の指示後 | 看護師の単独判断は医療安全上、重大なインシデントに繋がる |
看護過程ポイント:
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アセスメント: 拘束中の循環状態(末梢冷感、皮膚色、浮腫)、呼吸状態(SpO2、呼吸数)、意識レベル、興奮度、バイタルサイン、排泄状況、栄養・水分摂取状況。
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看護診断: 【非効果的な健康維持】【転倒リスク状態】【廃用症候群リスク状態】【不安】【自尊感情低下リスク状態】など。
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計画・実施: 拘束中のリスク(PTE予防、転倒・転落防止、皮膚トラブル防止)に対する具体的な看護計画を立案し、観察・介入を実施。
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評価: 拘束の必要性が継続しているか(行動化のリスクが低下したか)、合併症が発生していないか、患者の精神的状態に改善がみられるかを評価する。
暗記のコツ: 「拘束の3K」…①
呼吸(呼吸状態、SpO2)、②
血液(PTE/DVT予防)、③
心(不安軽減、精神的ケア)と覚えましょう!
国試頻出ポイント: 身体的拘束の適応、医師の指示の必要性、観察項目、合併症予防、解除のタイミングは毎年出題されます。特に「身体的拘束の適正化に関する指針」に基づいた運用(頻回観察、記録、家族への説明など)が問われます。
出題パターン注意!: 「身体的拘束中の正しい看護」を単独で問う問題だけでなく、「双極性障害の躁状態の患者への対応」という文脈の中で、治療(薬物療法、隔離・拘束)と看護を統合して問う事例問題が頻出です。