核心解説
この問題は、
分娩後出血 (Postpartum Hemorrhage, PPH)、特に
弛緩出血 (Uterine Atony) に対する急性期看護を問うています。分娩後、子宮が十分に収縮せず、出血が持続する状態です。Aさんの
出血量600mL(正常経腟分娩の平均出血量は約300~500mL)という点と、
臍高で柔らかい子宮底(子宮が収縮せず、硬くない状態)が判断の鍵です。
1. **
正解の根拠 (Answer Rationale)**:
最重要! 弛緩出血に対する第一選択の看護介入は
子宮底の輪状マッサージ (Fundal Massage) です。これは、子宮筋を刺激し収縮を促すことで、胎盤剥離面からの出血を抑制する効果があります。出血量600mLは異常であり、バイタルサインがまだ安定していても、急変のリスクが高い状態です。意識清明で会話ができていても、楽観視してはいけません。まずは物理的に子宮を収縮させるマッサージを開始します。
2. **
誤答の分析 (Distractor Analysis)**:
- ②膀胱留置カテーテル: 膀胱が充満していると子宮収縮を妨げることがあるため、必要な場合もありますが、
混同注意! この状況では、子宮マッサージと並行して医師の指示で行う処置であり、最も優先される看護師の対応はマッサージです。出血が持続する中でのカテーテル挿入は侵襲を伴います。
- ③水分摂取: 意識清明で会話可能ですが、出血が持続しており経口摂取を促す段階ではありません。出血性ショックに備えて、
経口摂取は禁止し、絶飲食とすることが一般的です。輸液療法 (Fluid Therapy) の適応を医師に報告する必要があります。
- ④全身清拭: 産後の疲労や発汗に対するケアとして必要な場合もありますが、
混同注意! 生命の危機に直結する出血性ショックのリスクがある状況では、最も優先度が低い対応です。
3. **
関連概念の整理 (Related Concepts)**:
弛緩出血 (Uterine Atony) は、産後出血の原因として最も頻度が高いです。原因として、分娩遷延、巨大児、羊水過多、多産などが挙げられます。正常な子宮収縮では、胎盤娩出後、子宮底は臍の高さかそれよりやや下に触れ、硬くなります。これが柔らかく、輪郭が不明瞭な場合は弛緩出血を疑います。
概念整理: 分娩後出血 (PPH) の定義は、経腟分娩で500mL以上、帝王切開で1000mL以上の出血。弛緩出血は、子宮収縮不全による出血で、子宮底の輪状マッサージと子宮収縮薬(オキシトシンなど)の投与が治療の基本です。
一目で比較!:
| 病態 | 子宮の状態 | 出血の特徴 | 主な看護介入 |
|---|
| 弛緩出血 (Uterine Atony) | 柔らかい、臍高以上に触れる | 暗赤色、凝血塊あり、持続的 | 子宮底輪状マッサージ、子宮収縮薬投与 |
| 産道裂傷 (Laceration) | 硬く収縮良好 | 鮮紅色、持続的、凝血塊なし | 圧迫止血、縫合処置の介助 |
| 胎盤遺残 (Retained Placenta) | 収縮不良 | 出血量が多い | 用手剥離、子宮内掻爬の介助 |
看護過程ポイント:
- **アセスメント**: 出血量(パッドの重さ、凝血塊の有無)、子宮底の高さと硬さ、バイタルサイン(特に脈拍と血圧)、意識レベル、顔色、皮膚の湿潤度を評価。頻脈はショックの早期徴候です。
- **看護診断**:
出血リスク状態 (Risk for Bleeding) または
体液量減少リスク状態 (Risk for Deficient Fluid Volume)
- **計画・実施**: 医師への報告(出血量、子宮の状態、バイタルサイン)、子宮底マッサージの開始、静脈路確保の準備、子宮収縮薬(オキシトシン、メテルギンなど)の投与準備、バイタルサインの頻回測定。
- **評価**: 子宮が硬く収縮したか、出血量が減少したか、バイタルサインが安定しているか。
暗記のコツ: 「柔らかい子宮=弛緩出血」と覚えましょう。「マッサージ」が第一選択。出血量の目安は「経腟分娩500mL」を超えたら注意サインです。
国試頻出ポイント: 産後出血の問題では、子宮底の触診所見(硬さ・高さ)が必ず出ます。また、「出血量」と「バイタルサイン」のギャップ(バイタルが安定していても出血が続いている)に注意させる問題が頻出です。
出題パターン注意!: 状況設定問題では、「出血量500mL、子宮底は臍高で軟」→「次に取るべき行動は?」という形で、観察から介入への優先順位を問われます。事例問題に発展し、「バイタルサインが低下してきた」場合の対応(急速輸液、輸血準備など)まで問われることもあります。