核心解説
この問題は、
肥厚性幽門狭窄症 (Hypertrophic Pyloric Stenosis, HPS) に対する
ラムステッド手術 (Ramstedt Procedure / Pyloromyotomy) 後の看護を問うています。HPSの病態は、幽門筋の肥厚による幽門部の狭窄であり、その結果、噴水状嘔吐 (Projectile Vomiting) と代謝性アルカローシスを呈します。手術はこの狭窄を解除するために幽門筋を縦に切開するものであり、術後は狭窄が解除された胃の機能が正常に戻るまでの管理が重要です。
最重要! 術後は胃内容のうっ滞による嘔吐を予防するため、授乳時の空気嚥下を最小限にし、
授乳前後の排気(ゲップ)を確実に行うことが基本となります。これは、縫合不全や創部の保護、全身状態の安定化に寄与します。
正解の根拠 (Answer Rationale): 手術により幽門の狭窄は解除されましたが、術後しばらくは胃壁や周囲組織に浮腫が残り、蠕動運動が完全には回復していません。そのため、授乳中に嚥下した空気が胃内に貯留しやすく、それが嘔吐の誘因となります。
授乳前後の排気 (Burping before and after feeding) を徹底することで、胃内圧を下げ、嘔吐を予防することができます。これは創部保護(腹圧上昇の予防)の観点からも重要です。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ②番: 人工乳への変更 → 母親が希望し、医師の指示があれば変更することはありますが、術後の第一選択ではありません。HPSの手術は幽門の閉塞を解除するものであり、術後は母乳でも人工乳でも栄養が通過できるようになります。母乳栄養を継続したいという家族の意向を尊重し、排気を徹底することが優先されます。
③番: 予防接種の計画立案 → 予防接種は全身状態が安定し、退院後に計画的に行うものであり、術後急性期の看護優先順位としては低いです。
④番: 腸管の縫合不全の観察 →
混同注意! ラムステッド手術は幽門筋を切開するものであり、腸管の吻合(縫合)を行う手術ではありません。したがって、腸管縫合不全は発生しません。観察すべきは創部感染や出血、そして術後の嘔吐の有無です。
関連概念の整理 (Related Concepts): HPSの術後看護では、
術後嘔吐の予防と観察が最優先です。嘔吐が続く場合は、幽門筋切開が不十分であったり(狭窄の残存)、術後の浮腫が強い可能性があります。また、術前の低クロール性代謝性アルカローシスや脱水が改善しているかの確認(体重増加、尿量、電解質値)も重要です。
概念整理:
肥厚性幽門狭窄症 (HPS) は幽門筋肥厚による通過障害 → 噴水状嘔吐 → 体重減少・脱水・代謝性アルカローシス。治療は
ラムステッド手術(幽門筋切開術)。術後看護の核心は、
嘔吐予防(排気・体位管理) と
全身状態の回復確認。
一目で比較!:
| 疾患 | 術式 | 術後観察の核心 |
|---|
| 肥厚性幽門狭窄症 (HPS) | ラムステッド手術(幽門筋切開) | 嘔吐予防(排気・授乳法)・創部感染・体重増加 |
| 先天性食道閉鎖症 | 食道吻合術 | 縫合不全・吻合部狭窄・誤嚥性肺炎 |
| 腸閉鎖症・狭窄症 | 腸吻合術 | 縫合不全・腸蠕動の回復・栄養管理 |
看護過程ポイント:
アセスメント: 術前の脱水・電解質異常の改善状態(尿量、皮膚ツルゴール、血清Na/K/Cl)。術後は嘔吐の有無(性状・量・頻度)、創部の発赤・腫脹・排膿、腹部の状態(膨満・蠕動音)。
看護診断: 「嘔吐リスク状態」、「栄養バランス異常:必要量以下(術後浮腫による摂取量不足のリスク)」、「非効果的母乳哺育リスク状態」。
計画・実施: 授乳前に排気、哺乳後は右側臥位(胃内容の通過を促進)または頭部挙上、嘔吐時の誤嚥予防。少量頻回授乳の検討。
評価: 嘔吐なく哺乳できる、体重が増加傾向にある、脱水所見が改善する。
暗記のコツ: 「
ラムステッド=幽門を切る」と覚えましょう。腸は切らないので、縫合不全は起こりません。「術後は胃が敏感。空気を溜めないでゲップをしっかり!」が看護の合言葉です。
国試頻出ポイント: HPSでは「噴水状嘔吐(白色)」と「代謝性アルカローシス(低Cl血症)」の組み合わせが頻出です。術後看護では、必ず「排気」が正解選択肢になるパターンを押さえましょう。
出題パターン注意!: 単純な知識問題として「術後の看護で適切なのは?」と出題されるほか、状況設定問題で「術後2日目、嘔吐がみられた。看護師の対応として適切なのは?」と発展します。その場合も、まずは排気・体位・哺乳量の調整を考えます。