核心解説
この問題は、生後3週の乳児、
肥厚性幽門狭窄症 (Hypertrophic Pyloric Stenosis, HPS) の術前看護を問うています。HPSは幽門部の輪状筋が肥厚し、胃から十二指腸への通過障害をきたす疾患です。噴水状嘔吐により脱水と電解質異常(特に低Cl血症、代謝性アルカローシス)を引き起こすため、術前の最重要管理は
胃内容物の減圧と体液・電解質補正 です。この病態を理解することが正解選択の鍵となります。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): 肥厚性幽門狭窄症は、
幽門 (Pylorus) の筋層が肥厚する先天性疾患で、噴水状嘔吐が特徴的です。吐物は胃酸を含むため白色〜乳白色で、胆汁性嘔吐(緑色)は通常見られません。持続する嘔吐により、水分・電解質(特にCl、K、Na)が喪失し、
低Cl血症性代謝性アルカローシス (Hypochloremic Metabolic Alkalosis) を呈します。術前は絶飲食とし、経鼻胃管で胃内容物を減圧し、持続点滴で脱水と電解質異常を是正することが必須です。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): ③の「経鼻胃管は自然開放とする」が正解です。術前、胃内に貯留した胃液や空気を減圧し、嘔吐や誤嚥を予防するために、経鼻胃管を
自然開放 (Natural Drainage/Gravity Drainage) または低圧持続吸引に接続します。これにより、胃内圧が下がり、患児の苦痛が軽減され、誤嚥性肺炎のリスクが低下します。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ①「浣腸を1日2回行う」:
混同注意! 浣腸は便秘の管理や、腸重積症など腸管の疾患で行われることがありますが、肥厚性幽門狭窄症では胃の通過障害が問題であり、浣腸の適応はありません。術前の消化管管理の中心は胃減圧です。
- ②「尿量の測定は不要である」:
最重要! 患児は来院時「排尿もない」状態であり、高度の脱水状態です。術前の輸液療法の効果を評価する上で、
尿量 (Urine Output) は最も重要な指標の一つです。体重あたり1~2mL/kg/h以上が維持されているか確認する必要があり、測定は必須です。
- ④「Aちゃんを抱っこすることは禁忌である」: 経鼻胃管が留置されているため、抱っこの際に管が抜去されないよう注意は必要ですが、禁忌ではありません。むしろ、不安やストレスを軽減するために、
タッチングや抱っこ など母性的なケアは重要です。ただし、胃管の位置や嘔吐に注意しながら行う必要があります。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): 肥厚性幽門狭窄症と鑑別すべき疾患として、
混同注意! 胃食道逆流症 (GERD) や
腸重積症 (Intussusception) があります。GERDは噴水状ではなく溢乳が多く、腸重積症は胆汁性嘔吐と血便(イチゴゼリー状)が特徴です。また、電解質異常(低Cl血症)の補正には
生理食塩液 や
乳酸リンゲル液 が使用されます。
概念整理:
肥厚性幽門狭窄症 (Hypertrophic Pyloric Stenosis) の病態:幽門筋肥厚→通過障害→噴水状嘔吐→脱水・低Cl血症性代謝性アルカローシス。術前看護の核心:
絶飲食 + 経鼻胃管減圧 + 輸液による補正。
一目で比較!:
| 疾患 | 嘔吐の特徴 | 主な合併症 | 術前管理の優先事項 |
|---|
| 肥厚性幽門狭窄症 | 噴水状 / 白色〜乳白色 / 非胆汁性 | 脱水、低Cl血症、代謝性アルカローシス | 胃減圧 (経鼻胃管開放)、輸液 |
| 胃食道逆流症 (GERD) | 溢乳 / 噴水状でない | 体重増加不良、誤嚥性肺炎 | 姿勢管理 (頭部挙上)、ミルクの増粘 |
| 腸重積症 (Intussusception) | 胆汁性 (緑色) / その後血便 | 腸壊死、穿孔、腹膜刺激症状 | 高圧浣腸 (非観血的整復)、緊急手術 |
看護過程ポイント:
アセスメント:体重減少、大泉門陥凹、皮膚ツルゴール低下、尿量減少(脱水サイン)、吐物の性状(白色=胃液)。
看護診断:「体液量不足リスク状態」「誤嚥リスク状態」「非効果的哺乳パターン」。
計画・実施:経鼻胃管の位置確認と開放状態の維持、輸液速度の管理、バイタルサインとSpO2モニタリング。
評価:尿量の回復、電解質値の正常化、体重増加。
暗記のコツ: 「噴水状 + 白色嘔吐 + 低Cl = 肥厚性幽門狭窄症」とセットで覚えましょう。また、「幽門が狭い → 胃がパンパン → 胃管で減圧」とイメージすると理解が深まります。
国試頻出ポイント: このテーマは「小児看護学」の消化器系疾患の頻出問題です。術前管理(胃管開放、輸液、絶飲食)と、特徴的な検査所見(低Cl血症)を組み合わせた出題が多く見られます。また、術後の経口摂取開始の判断基準(腸蠕動音の聴取、排ガスの確認)も併せて学習しましょう。
出題パターン注意!: 単純な知識問題から、事例の中で「術前の看護計画として適切なものはどれか」という状況設定問題に発展します。今回の問題のように、「浣腸」や「尿量不要」といった明らかに不適切な選択肢を外し、病態に基づいて正解を選ぶ力が問われます。