核心解説
この問題は、
肥厚性幽門狭窄症 (Hypertrophic Pyloric Stenosis, HPS) を疑われた生後3週の乳児の状態アセスメントを問うています。HPSでは、幽門筋が肥厚し胃の出口が狭窄することで、胃内容物が通過できず噴水状に嘔吐します。このとき、嘔吐物は胆汁が混ざる前の胃内容物であるため
白色(非胆汁性嘔吐)となるのが特徴です。一方、胆道閉鎖症など下部消化管閉塞では胆汁が混入した緑色嘔吐(胆汁性嘔吐)となります。本症例では吐物が白色であることから、
正解は②「非胆汁性嘔吐である」です。
正解の根拠 (Answer Rationale): HPSの病態を理解することが鍵です。幽門部の狭窄により、胃から十二指腸への通過障害が生じ、胃内容物が噴出します。十二指腸より下部の胆汁(ビリルビン)は胃内には逆流しないため、吐物は白色(あるいはミルクの凝固物)となります。
最重要! この「非胆汁性白色嘔吐」はHPSの代表的な臨床所見であり、胆汁性嘔吐(緑色)との鑑別が診断上極めて重要です。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
①
混同注意! 脱水症は軽度ではなく、
重度脱水です。大泉門陥凹、皮膚ツルゴール低下、5日間の排尿なし、Na 131mEq/L(低ナトリウム血症)、Cl 86mEq/L(低クロール血症)は重度脱水と電解質異常を示しています。体重も出生時3,070gから現在3,380gと増加不良(本来は約500g増加が期待される時期)であり、脱水の重症度を見逃してはいけません。
③ CRP 0.1mg/dLは基準範囲内(正常は0.3mg/dL未満)であり、炎症反応の上昇はありません。HPSは器質的閉塞であり、感染症ではありません。
④ 出生後の体重増加は良好とは言えません。生後3週で出生時体重+310g(3,380-3,070g)であり、
生理的体重減少からの回復が不十分です。さらに嘔吐による脱水の影響も加わり、成長障害が疑われます。
関連概念の整理 (Related Concepts): HPSと鑑別すべき疾患として、胆汁性嘔吐を呈する
先天性胆道閉鎖症 (Biliary Atresia)や、下部消化管閉塞(腸回転異常症、十二指腸閉鎖など)があります。また、非胆汁性嘔吐でも
胃食道逆流症 (GERD)はHPSと類似しますが、GERDは噴水状ではなく溢乳が多く、腹部エコーで幽門筋厚を確認することで鑑別します。
概念整理: 肥厚性幽門狭窄症は生後2~8週に好発し、幽門筋の肥厚による胃流出路閉塞が病態。特徴は①噴水状非胆汁性嘔吐、②右側腹部のオリーブ様腫瘤触知(腫瘤触知は進行例)、③代謝性アルカローシス(胃酸喪失によるCl低下・HCO3上昇)と低Na・低K血症。診断は腹部エコー(幽門筋厚≧4mm、幽門管長≧16mmが診断基準)。
一目で比較!:
| 特徴 | 肥厚性幽門狭窄症 (HPS) | 先天性胆道閉鎖症 |
|---|
| 嘔吐の性状 | 非胆汁性(白色) | 胆汁性(緑色) |
| 嘔吐の様式 | 噴水状 | 持続性・進行性 |
| 便の色 | 正常(黄色) | 灰白色(無胆汁便) |
| 発症時期 | 生後2~8週 | 生後早期~数週 |
| 腹部エコー所見 | 幽門筋肥厚 | 胆嚢描出不良・肝門部線維塊 |
看護過程ポイント:
アセスメント: ①嘔吐の性状(白色か緑色か、噴水状か溢乳か)、②脱水の徴候(大泉門・皮膚ツルゴール・尿量・体重減少率)、③電解質異常(低Cl・低Na・低K・代謝性アルカローシス)。
看護診断 (Nursing Diagnosis): 「嘔吐による体液量不足(リスク状態)」「栄養状態の変化:体重増加不良」「家族の不安(知識不足)」。
看護介入: ①術前は経鼻胃管(NGチューブ)挿入による胃内容物減圧と誤嚥予防、②静脈内輸液(IVF)による脱水補正(通常はリンゲル液+K補正)、③バイタルサイン・SpO2・尿量の厳密なモニタリング。術後(腹腔鏡下幽門筋切開術)は、少量頻回の哺乳開始(術後6~12時間後から開始することが多い)。
暗記のコツ: 「白い噴水=幽門狭窄」と覚えましょう!白色嘔吐+噴水状=胃より上部の閉塞(HPS)、緑色嘔吐+持続=下部の閉塞(胆道閉鎖症・腸閉塞)。また、「低Cl・低Na・代謝性アルカローシス」はHPSの三大電解質異常で、国試では電解質値(特にCl低下)と嘔吐性状をセットで問う頻出パターンです。
国試頻出ポイント: ①HPSの嘔吐性状(白色非胆汁性)と鑑別疾患(胆汁性嘔吐)の比較、②脱水重症度評価(大泉門・皮膚ツルゴール・尿量・体重減少率)、③電解質異常(低Cl・低Na・低K・代謝性アルカローシス)と輸液療法の適応、④腹部エコー診断基準(幽門筋厚・幽門管長)と術式(幽門筋切開術)の理解。
出題パターン注意!: 本問のような単純な知識問題から、事例問題(「Aちゃんの術後、初回哺乳で嘔吐した。看護師の対応は?」など)に発展します。特に「噴水状嘔吐+白色=HPS」のキーワードを瞬時に判断できるようにしておきましょう。また、脱水の重症度評価は、体重減少率(軽度:5%未満、中等度:5~10%、重度:10%以上)と臨床症状(本例では大泉門陥凹・無尿・皮膚ツルゴール低下で重度)をセットで覚えると得点力UPです。