核心解説
この問題は、血圧調節に関与する主要な生理活性物質(血管作動性物質)の作用を問うています。
最重要!血圧は
心拍出量 (Cardiac Output)と
末梢血管抵抗 (Peripheral Vascular Resistance)の積で決定されます。このうち、末梢血管抵抗に直接影響するのが血管の収縮と拡張です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
血圧を上昇させる物質は、主に
血管収縮作用 (Vasoconstriction)を持つ物質です。
1.
セロトニン (Serotonin / 5-HT): 主に血小板や腸管クロム親和性細胞から放出されます。強力な
血管収縮作用を持ち、特に損傷血管の止血に関与します。この収縮作用により血圧は上昇します。
2.
バソプレシン (Vasopressin / ADH: 抗利尿ホルモン): 視床下部で産生され、下垂体後葉から分泌されます。腎臓での水の再吸収促進(抗利尿作用)に加え、高濃度では
強力な血管収縮作用を示し、血圧を上昇させます。循環血液量減少時の重要な血圧維持機構です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
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混同注意! ②番の
ヒスタミン (Histamine)は、アレルギー反応や炎症時に肥満細胞から放出され、
強力な血管拡張作用 (Vasodilation)を持ちます。その結果、血圧は低下します(アナフィラキシーショックの原因の一つ)。
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混同注意! ④番の
ブラジキニン (Bradykinin)は、キニン系の生理活性物質で、
強い血管拡張作用を持ちます。血圧を低下させる作用があり、炎症時の発赤・腫脹にも関与します。
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混同注意! ⑤番の
心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP: Atrial Natriuretic Peptide)は、心房の伸展刺激により分泌されます。
強力な血管拡張作用とナトリウム排泄促進作用(利尿作用)により、循環血液量を減少させ、血圧を低下させます。ANPはむしろ降圧物質です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
血圧調節を理解する上で、以下の物質群の分類を整理しておきましょう。
| 作用 | 物質名 | 主な機能/由来 |
|---|
| 血管収縮 (昇圧) | セロトニン、バソプレシン、ノルアドレナリン (Noradrenaline)、アンジオテンシンII (Angiotensin II)、エンドセリン (Endothelin) | 交感神経系/レニン-アンジオテンシン系 |
| 血管拡張 (降圧) | ヒスタミン、ブラジキニン、ANP、一酸化窒素 (NO: Nitric Oxide)、プロスタサイクリン (PGI2) | 血管内皮/キニン-カリクレイン系 |
概念整理: 血圧は心拍出量 × 末梢血管抵抗で決まる。問題の本質は、末梢血管抵抗(血管の太さ)を増やすか減らすかの2択。昇圧物質=血管収縮物質、降圧物質=血管拡張物質、と覚えれば迷わない。
一目で比較!:
昇圧物質 (Pressor Agents) vs
降圧物質 (Depressor Agents)昇圧:セロトニン、バソプレシン、ノルアドレナリン、アンジオテンシンII
降圧:ヒスタミン、ブラジキニン、ANP、NO、プロスタサイクリン、プロスタグランジンE系
看護過程ポイント: 血圧異常の原因をアセスメントする際、薬剤や生理活性物質の影響を考慮する。例えば、アナフィラキシーショック時の血圧低下はヒスタミンによる血管拡張が原因。敗血症性ショックではNOの過剰産生が血管拡張を招く。血圧管理の際は、内因性の物質だけでなく、投与薬剤(昇圧薬:ドパミン、ノルアドレナリン / 降圧薬:ACE阻害薬、ARB、Ca拮抗薬)の作用機序も統合して理解する。
暗記のコツ: 語呂合わせ「
血圧を上げるのは、バソ(バソプレシン)とセロ(セロトニン)で、下げるのはヒス(ヒスタミン)とブラ(ブラジキニン)とANP」。または「
上げる:バソ・セロ・ノルアド・アンジオ、下げる:ヒス・ブラ・ANP・NO」とセットで暗記する。
国試頻出ポイント: 血圧調節物質の作用(昇圧 or 降圧)は毎年のように出題される基本中の基本。特に「バソプレシン(ADH)は血管収縮作用もある」という点は、抗利尿作用のみに注目しがちなため、
混同注意! 腎性尿崩症の治療薬としても使用されることを併せて覚えると良い。また、アンジオテンシンIIの昇圧機構(血管収縮 + アルドステロン分泌促進)も頻出。
出題パターン注意!: 単純な「昇圧物質を選べ」に加え、「
心不全患者に投与すると血圧上昇に注意が必要な薬剤はどれか」といった臨床応用問題や、「
ショック患者の血圧低下に関与する物質はどれか」のような病態と組み合わせた出題にも対応できるよう、物質の作用と疾患の病態を紐づけて学習する。