核心解説
この問題は、
災害トリアージ (Disaster Triage) における治療優先順位とトリアージタッグの正しい運用方法を問うています。
トリアージの目的は限られた医療資源を最大限に活用し、最も多くの命を救うことであり、その優先度を正しく理解することが鍵となります。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): トリアージは、災害時や多数傷病者発生時に、傷病者の緊急度・重症度に基づいて治療の優先順位を決定する医療行為です。日本では主に
START法 (Simple Triage and Rapid Treatment) が用いられ、歩行の可否、呼吸、循環、意識状態を指標に、迅速に区分を判定します。トリアージ区分は、治療優先度の高い順に **Ⅰ(最優先治療群:赤)**、**Ⅱ(待機的治療群:黄)**、**Ⅲ(保留群:緑)**、そして **0(死亡群:黒)** の4段階です。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): ②の「治療優先度の高さはトリアージ区分のⅠ、Ⅱ、Ⅲの順である」が正解です。トリアージ区分の治療優先度は、**Ⅰ(赤:最優先)** > **Ⅱ(黄:待機的)** > **Ⅲ(緑:保留)** の順となります。これは、限られた医療資源(人員、器材、医薬品)を、救命の可能性が最も高い患者に集中的に投入するという、トリアージの根幹をなす原則です。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
-
混同注意! ①の「トリアージタッグは衣服に装着する」は誤りです。トリアージタッグは、原則として
傷病者の右手首 (Right Wrist) に装着します。これは、診療や搬送中に脱落しにくく、医療従事者が常に確認できるようにするためです。衣服への装着は、着替えや処置の際に脱落・紛失のリスクが高いため、誤った方法です。
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最重要! ③の「トリアージの判定は患者の到着時および到着後30分の2回行う」は誤りです。トリアージの判定は、**初回 (Primary Triage)** と、その後の状態変化や処置に応じて **繰り返し (Re-triage)** 行うことが原則です。30分という固定された時間ではなく、常に患者の状態を観察し、必要に応じて再評価(例:蘇生処置後に赤から黄へ、または悪化して黄から赤へ)を行います。固定時間での判定は、動的に変化する患者の状態に対応できません。
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混同注意! ④の「最優先に治療を必要とする者には、黄色のトリアージタッグを装着する」は誤りです。最優先治療群は
赤色タッグ (Red Tag: Category I) です。黄色タッグ (Yellow Tag: Category II) は、バイタルサインは安定しているが、手術や処置が必要であり、ある程度の待機が可能な患者(待機的治療群)に使用します。色と区分の対応は必須の暗記事項です。
| タグ色 | 区分 | 治療優先度 | 状態の例 |
|---|
| 赤 | Ⅰ | 最優先 | 気道確保が必要、ショック状態、重症頭部外傷 |
| 黄 | Ⅱ | 待機的 | 大きな創傷だがバイタルサイン安定、開放骨折 |
| 緑 | Ⅲ | 保留 | 軽度の擦過傷、歩行可能 |
| 黒 | 0 | 死亡/救命困難 | 心肺停止、明らかな死兆 |
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): トリアージは一度きりの判断ではなく、
継続的なプロセス (Continuous Process) です。現場でのトリアージ(一次トリアージ)と、医療機関到着時・診療開始時のトリアージ(二次トリアージ)があります。また、
混同注意! 災害トリアージは、日常の救急外来で行われる
緊急度判定 (Emergency Severity Index: ESI) とは目的が異なります。ESIは患者一人ひとりに最適な医療を提供するためのものであり、災害トリアージのように「限られた資源で最大多数を救う」ためのものではありません。
概念整理: 災害トリアージは「限られた医療資源で、最も多くの命を救う」ための仕組み。治療優先度は赤 > 黄 > 緑 > 黒。タッグは右手首。判定は繰り返し行う。
一目で比較!:
| 項目 | 災害トリアージ (START法) | 日常救急トリアージ (ESI) |
|---|
| 目的 | 最大多数の救命 | 患者個別の最適医療 |
| 資源 | 限定的 | 通常稼働 |
| 区分 | 赤/黄/緑/黒 | レベル1(蘇生)~5(非緊急) |
看護過程ポイント: アセスメント:歩行の可否、呼吸数、末梢循環(橈骨動脈触知)、意識レベル(簡単な命令に応じるか)の4項目を迅速に評価。介入:区分に応じたタッグ装着と、トリアージエリアへの誘導。評価:患者の状態変化に応じて再トリアージを実施。
暗記のコツ: トリアージタッグの色は
「赤信号(赤:最優先)、黄色信号(黄:注意して待機)」 と道路交通信号のイメージで覚えましょう。また、タッグの装着部位は
「利き手(右利きが多い)の手首」 と関連付けると記憶に残りやすいです。
国試頻出ポイント: トリアージ区分(色と優先度の対応)、タッグ装着部位(右手首)、再トリアージの原則はほぼ毎年と言ってよい頻出項目です。特に「赤=最優先」「黄=待機的」「緑=保留」「黒=死亡」の対応は確実に押さえましょう。事例問題では、「歩行可能な軽症患者は緑」「ショック状態の患者は赤」といった判断が問われます。
出題パターン注意!: 近年は単純な暗記問題から、
「多数傷病者が発生した場合の看護師の行動」といった実践的な状況設定問題が増えています。「トリアージ実施者は誰か(医師または看護師など訓練を受けた者)」「トリアージの優先順位を誤るとどうなるか」といった、チーム医療の視点も問われる可能性があります。