核心解説
この問題は、
在宅看護における多職種連携(訪問看護師と訪問介護員の情報共有)を問うています。特に、
高齢者 (Elderly)の
脱水 (Dehydration) の早期発見と予防に焦点を当てた看護判断が鍵となります。Aさんの状態(体温37.0℃、血圧100/50mmHg、発汗、口唇乾燥)は、
最重要! 軽度の脱水または脱水傾向 (Mild Dehydration / Pre-dehydration) を示唆しており、訪問介護員が次の訪問時に優先して観察・対応すべき内容を伝える必要があります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 正解は②「水分を多めに摂取するよう促す。」です。
Aさんは、発汗と口唇乾燥という脱水のサインが見られます。訪問看護師は翌日まで訪問できませんが、訪問介護員は毎日または頻回に訪問するため、
具体的で実践可能なケア指示を共有する必要があります。「水分摂取を促す」ことは、訪問介護員の業務範囲内で安全に実施でき、脱水進行の予防に直結する最も優先度の高い介入です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
① ポータルタトイレでの排泄に変更する。
誤り。Aさんは要介護2で、自宅で夫と生活しており、現時点で排泄方法の変更が必要な情報はありません。トイレ歩行が可能であれば、それを変更するとADL低下や筋力低下を招く可能性があります。
③ 頻繁に寝衣を交換する。
誤り。発汗は認められますが、寝衣交換は発汗の原因(脱水や微熱)への根本的な対策ではありません。まずは水分補給が優先されます。
④ 入浴介助を中止する。
誤り。入浴介助の中止は、清潔保持やQOL低下につながります。脱水症状があるからといって直ちに入浴を中止するのではなく、入浴前後の水分補給や、入浴時間の調整などの対応が適切です。
概念整理:
脱水 (Dehydration) のアセスメントと予防
高齢者は、
体内水分量の減少・
腎機能低下・
口渇感の低下により脱水リスクが高いです。
【観察項目】:
口唇・口腔粘膜の乾燥、
皮膚ツルゴール低下、
血圧低下(起立性低血圧)、
尿量減少・濃縮尿、
体重減少
【予防的介入】:
こまめな水分摂取の声かけ、
経口摂取困難時は医師報告
一目で比較!:
訪問看護師 vs 訪問介護員の役割
| 職種 | 主な役割(情報共有のポイント) |
|---|
| 訪問看護師 | 医学的アセスメント 医療処置の管理 医師への報告 ケアプラン見直しの提案 |
| 訪問介護員 | 日常生活の援助(食事・排泄・入浴) 安否確認 状態変化の早期発見(看護師への報告) |
訪問介護員には、
混同注意! 「観察して報告を」だけでなく、「
具体的なケア指示(水分を勧めるなど)」を伝えることが重要です。
看護過程ポイント
-
アセスメント: バイタルサイン(特に血圧低下・脈拍増加傾向)、皮膚・粘膜の観察、食事・水分摂取量、ADLレベル。
-
看護診断 (Nursing Diagnosis):
[体液量不足リスク (Risk for Deficient Fluid Volume)] または
[口腔粘膜乾燥 (Impaired Oral Mucous Membrane)]
-
計画・実施: 訪問介護員への具体的指示(例:「〇時間おきにコップ半分の水分を声かけ」)、水分摂取量の記録依頼、次回訪問時の再評価。
-
評価: 口唇乾燥の改善、尿量の増加、バイタルサインの安定化。
暗記のコツ
「
高齢者の脱水サイン」は
3つのK(
Kuchi:口唇乾燥、
Kawa:皮膚乾燥、
Ketsuatsu:血圧低下)と覚えましょう!
多職種連携では「
具体的指示」が鉄則。訪問介護員に「様子を見ておいて」はNGです。
国試頻出ポイント
- 高齢者の脱水予防は必修・成人・老年の各科目で頻出。
- 多職種連携(特に訪問看護師→訪問介護員への指示)の適切な内容を問う問題は、近年の在宅看護論でよく出題されます。
- 「脱水が疑われる患者への優先的な介入」は、状況設定問題でも必ず問われる基本中の基本です。
出題パターン注意!
「Aさん(82歳女性、脳梗塞後、要介護2)が、訪問看護師に『最近、口が渇く』と訴えた。訪問看護師の対応として適切なのはどれか。」
→ この問題では、水分摂取の促進だけでなく、
経口摂取困難時の経管栄養や輸液の検討、
薬剤(利尿薬など)の影響評価など、より高度な判断が求められる場合もあります。