核心解説
この問題は、
脳梗塞 (Cerebral Infarction) による片麻痺患者に対する、
日常生活動作 (Activities of Daily Living, ADL) の評価尺度を問うています。患者の生活機能を適切に評価することは、看護計画の立案やリハビリテーションの目標設定に直結するため、国試でも頻出です。それぞれの評価尺度の特徴と目的を正確に理解しているかが問われています。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! Barthelインデックス (Barthel Index, BI) は、食事、車椅子からベッドへの移動、整容、トイレ動作、入浴、歩行、階段昇降、更衣、排便コントロール、排尿コントロールの10項目を評価する、世界で最も広く使用されているADL評価尺度の一つです。点数化(0〜100点)が可能で、患者の自立度や介助量を客観的に評価できます。脳卒中後の片麻痺患者のADL評価に非常に適しています。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
NYHA分類 →
混同注意! これは
心不全 (Heart Failure) の重症度分類であり、身体的活動の制限度合いを主観的に評価するものです。ADL評価ではありません。
②
Borgスケール (Borg Scale) → これは
自覚的運動強度 (Rating of Perceived Exertion, RPE) を測定するスケールです。呼吸リハビリテーションや運動負荷試験の際に、患者本人の「きつさ」を主観的に評価するために用います。ADL評価には該当しません。
④
主観的包括的アセスメント (Subjective Global Assessment, SGA) → これは
栄養状態 (Nutritional Status) を評価するためのスクリーニングツールです。病歴(体重減少、食事摂取量の変化、消化器症状など)と身体所見(筋肉消耗、皮下脂肪の減少など)から総合的に栄養状態を判定します。
関連概念の整理 (Related Concepts)
ADL評価尺度には、Barthelインデックス以外にも、より詳細な評価が可能な
Functional Independence Measure (FIM) や、手段的日常生活動作(IADL)を評価する
LawtonのIADL尺度 があります。FIMはBIの項目に加えて、認知・コミュニケーション・社会的交流の項目が含まれている点が特徴です。BIは「何ができるか(能力)」を評価するのに対し、FIMは「実際に行っているか(実生活での遂行度)」を評価するという違いもあります。
概念整理:
ADL評価尺度 (ADL Assessment Scale) は、患者の生活の自立度を数値化・客観化するためのツールです。脳梗塞後の片麻痺患者では、移動(車椅子や歩行)、食事、更衣、排泄などの基本的動作の介助量を定期的に評価し、リハビリの効果判定や退院支援に活用します。
一目で比較!:
| 評価尺度 | 評価対象 | 代表的な使用場面 |
| Barthelインデックス | 基本的ADL | 脳卒中後、整形外科術後、高齢者の総合機能評価 |
| FIM | ADL+認知・社会的機能 | リハビリテーション病棟での詳細な機能評価 |
| NYHA分類 | 心不全の重症度 | 心不全患者の活動制限の程度評価 |
| Borgスケール | 自覚的運動強度 | 運動療法中の強度調整、呼吸困難の主観的評価 |
看護過程ポイント:
アセスメント:Barthelインデックスを用いて、各動作の自立度(完全自立、一部介助、全介助)を観察・評価します。特に排泄コントロールはプライバシーに配慮しながら確認します。
看護診断:例えば「セルフケア不足(入浴・更衣・排泄)〈Self-Care Deficit〉」が該当します。
計画・実施:評価結果に基づき、残存機能を最大限に活かした介助方法や、環境調整(手すりの設置、トイレの改造など)を計画します。
評価:定期的に再評価し、介入の効果や患者の状態変化を捉えます。
暗記のコツ: 「
バーセル(Barthel)は、バリアフリーで生活動作(ADL)を評価する!」と覚えましょう。頭文字の「B」を「Basic ADL」の「B」と関連付けるのも有効です。
国試頻出ポイント: ADL評価尺度の名称と評価対象の組み合わせ、および類似スケール(NYHA分類、Borgスケール、SGA)との混同を防ぐ問題が頻出です。特に脳卒中後や高齢者の事例問題で、「最も適切な評価尺度はどれか」という形で出題されやすいです。
出題パターン注意!: 「Barthelインデックスの評価項目はどれか」という単純知識問題や、「FIMとBarthelインデックスの違いはどれか」という比較問題も出題されます。事例問題では「患者のADLが低下した場合、看護師はどの評価尺度を用いてアセスメントすべきか」という形で応用力が問われます。