核心解説
この問題は、
車椅子 (Wheelchair) による基本的な移送技術の正しい手順を問うています。車椅子操作は、
患者の安全確保 と
転倒・転落予防 を最優先に考えた動作が求められます。各動作の力学的な原理と、患者に与える負担やリスクを理解することが重要です。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): 車椅子の構造(大車輪、小車輪、フットレスト、ティッピングレバー)と、それぞれの機能を理解した上で、段差、坂道、方向転換など、環境に応じた適切な操作技術を問う問題です。特に、
最重要! 段差の乗り越えでは、
ティッピングレバー (Tipping Lever) を操作して小車輪(前輪)を浮かせ、段差に乗せる手技が必須です。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): ②「段差を上るときは、小車輪を浮かせる。」が正解です。これは、車椅子で段差を上がる際の標準的な手技です。
ティッピングレバーを踏み込み、小車輪(前輪)を持ち上げて段差に乗せた後、大車輪(後輪)を押し上げることで、スムーズで安全な乗り越えが可能になります。小車輪を浮かせないまま段差にぶつかると、車椅子が急停止し、患者が前方に転倒する危険があります。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ①「坂を上るときは、背もたれ側から進む。」:
混同注意! 坂を上る際は、**背もたれ側(後ろ向き)から進む** と、患者の体重が背もたれに預けられ、安全です。しかし、記述は「背もたれ側から進む」とあるため、一見正しそうに見えますが、**坂を上る** 際に **背もたれ側(後ろ向き)から進む** のは安全な方法ですが、本問の正解は「段差」に関する選択肢②です。選択肢①の記述自体は正しい操作ですが、問題は「正しいのはどれか」と複数選択肢から選ぶ形式であり、②の方がより正確な基本手技に該当します。厳密には、坂道を下る際は進行方向(前向き)で進むため、「坂を上るとき」という限定された状況でのみ背もたれ側からの進行が推奨されます。しかし、この問題の文脈では、②が最も明確な正解手技です。
- ③「方向転換をするときは、小車輪を支点にする。」:
混同注意! 方向転換は、**大車輪(後輪)を支点** にして行います。小車輪は旋回性能が高いため、小車輪を支点にすると不安定で、操作が難しくなります。
- ④「乗り降りをするときは、フットレストを下げる。」:
禁忌! 乗り降りの際は、**フットレスト (Footrest) を上げる** ことが安全です。下げたままの状態では、患者がフットレストに足を引っかけ転倒するリスクがあります。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): 車椅子操作におけるブレーキ(駐車ブレーキ)の確認、フットレストの上げ下げ、アームレストの取り外し、移乗時の安全確認なども合わせて学習しましょう。
概念整理: 車椅子操作の基本原則は、
常に患者の安全を最優先 することです。
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段差: 小車輪を浮かせて乗り越える(ティッピングレバー使用)。
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坂道(上り): 背もたれ側から(後ろ向きに)進む。
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坂道(下り): 進行方向(前向き)に進む(速度調整に注意)。
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方向転換: 大車輪を支点にして行う。
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乗り降り: フットレストは上げ、必ずブレーキをかける。
一目で比較!
| 動作 | 正しい操作 | 間違った操作(リスク) |
| 段差を上る | 小車輪を浮かせる(ティッピングレバー) | 小車輪を浮かせずに突入(転倒リスク) |
| 坂を上る | 背もたれ側(後ろ向き)から進む | 前向きに進む(患者が前方に滑り落ちるリスク) |
| 方向転換 | 大車輪を支点にする | 小車輪を支点にする(不安定で操作困難) |
| 乗り降り | フットレストを上げる・ブレーキをかける | フットレストを下げたまま(転倒リスク) |
看護過程ポイント:
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アセスメント: 患者の体格、筋力、麻痺の有無、バランス能力、理解力。環境(段差の高さ、坂道の勾配、通路幅)。
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看護診断:
転倒リスク状態 (Risk for Falls)、
身体可動性障害 (Impaired Physical Mobility)。
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計画・実施: 患者の状態に応じた車椅子の選択(標準型、リクライニング型等)、安全な移乗介助、正しい操作手順の遵守。
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評価: 患者が安全かつ快適に移動・移送できたか、疼痛や不快感はないか。
暗記のコツ: 「段差は前輪を浮かせる(ティッピング)、坂は後ろ向き、方向転換は後輪、乗り降りはフットレストを上げる!」とゴロで覚えましょう。
国試頻出ポイント: 車椅子操作は、基礎看護技術の「移動・移送の技術」として毎年必ず出題されます。特に段差の乗り越え方(ティッピングレバーの使用)と、坂道の昇り降りの方向は頻出です。状況設定問題(事例問題)で、患者の状態(右片麻痺など)に応じた適切な介助方法を問われることもあります。
出題パターン注意!: 「左片麻痺の患者さんを車椅子に移乗する際の正しい介助方法はどれか」といったように、車椅子操作と移乗介助が組み合わされた問題もよく出ます。