核心解説
この問題は、大規模災害時の
挫滅症候群 (Crush Syndrome)の病態生理と血液検査データの関連を問うています。
最重要! 長時間にわたり瓦礫などで四肢が圧迫されると、
筋細胞 (Muscle Cells) が虚血状態に陥り、細胞膜の透過性が亢進します。その後、圧迫が解除され血流が再開(再灌流)すると、壊死した筋細胞内の内容物が一気に全身の循環血液中に流入します。これが挫滅症候群の本態です。この時に血中に放出される主な物質は、
カリウム (Potassium, K+)、
クレアチンキナーゼ (CK)、
ミオグロビン (Myoglobin)、
リン (Phosphorus, P)、そして尿酸などです。特に高カリウム血症は致死的な不整脈を引き起こすため、最も注意すべき合併症です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は①カリウムと⑤クレアチンキナーゼ(CK)です。
①
カリウム (K+): 筋細胞内に最も豊富に存在する陽イオンです。細胞が壊死することで大量に血中に放出され、
高カリウム血症 (Hyperkalemia) を引き起こします。これは心室細動や心停止の原因となる危険な状態です。
⑤
クレアチンキナーゼ (CK): 筋細胞に特異的に存在する酵素です。筋肉の損傷を反映する指標であり、挫滅症候群では
著明な高値を示します。特にCK-MM分画が上昇します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
②
カルシウム (Ca): 逆に、損傷筋へのカルシウムの取り込みや、腎不全に伴う代謝異常により、
混同注意! 低カルシウム血症(Hypocalcemia)を呈することが多いです。高値にはなりません。
③
ヘモグロビン (Hb): 赤血球内のタンパク質です。血管損傷がなければ、直接的な筋損傷でHbが上昇することはありません。むしろ、出血や輸液による血液希釈で低下することがあります。ミオグロビン(筋細胞由来)と混同しないようにしましょう。
④
総コレステロール: 脂質代謝に関わる成分であり、挫滅症候群の急性期に上昇する所見ではありません。高値を示すのは脂質異常症など慢性的な代謝疾患です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
挫滅症候群の三大合併症は、
最重要! 高カリウム血症 (Hyperkalemia)、
急性腎障害 (Acute Kidney Injury, AKI)、
ショック (Shock) です。ミオグロビンが腎尿細管を閉塞させることや、低血圧・酸性尿が腎障害を増悪させます。治療では、大量輸液によるミオグロビンの希釈・排泄促進、重炭酸ナトリウムによる酸性尿の是正が行われます。
概念整理: 挫滅症候群(Crush Syndrome)= 筋挫滅 + 再灌流障害。血中に流出する物質は
K+,
CK,
ミオグロビン,
P,
尿酸。注意すべき合併症は
高K血症,
急性腎障害,
ショック。
一目で比較!:
| 項目 | 挫滅症候群 | コンパートメント症候群 |
| 原因 | 長時間圧迫後の再灌流 | 筋膜室内圧上昇による循環不全 |
| 全身への影響 | 高K血症、AKI、ショック | 局所の神経・筋壊死 |
| 血液検査 | CK, K+, ミオグロビン 上昇 | 局所的変化が主体 |
看護過程ポイント:
アセスメント:救助現場からの情報収集(圧迫時間・部位・範囲)。バイタルサイン・心電図モニター(テント状T波・QRS幅拡大は高K血症のサイン)。尿量・尿色(ミオグロビン尿は赤褐色)。
看護診断:【非効果的組織灌流(腎・心)】【電解質バランス異常のリスク】【急性疼痛】。
介入:医師の指示に基づく大量輸液(乳酸リンゲル液など)、重曹投与、カルシウム製剤(高K血症による心毒性への拮抗薬)の準備、緊急血液透析の準備。
暗記のコツ: 「クラッシュ症候群で出るもの =
カ・ク・ミ(カリウム、クレアチンキナーゼ、ミオグロビン)」と覚えましょう。心臓に悪影響を与える「カリウム」と、腎臓に悪影響を与える「ミオグロビン」をセットでイメージすると忘れにくいです。
国試頻出ポイント: この問題のように、血液検査データの異常値から病態を推定する問題は頻出です。特に「長時間圧迫」「救出後急変」「高カリウム」「CK高値」のキーワードから挫滅症候群を連想できるようにしておきましょう。また、高カリウム血症への初期対応(カルシウム製剤の静注、グルコース+インスリン療法、陽イオン交換樹脂投与など)も併せて学習しておくと良いでしょう。
出題パターン注意!: 単純な知識問題(高値になる物質を選ぶ)だけでなく、事例問題に発展します。「搬送後、尿量が減少し赤褐色を呈している。次に看護師が優先して測定すべき項目はどれか?」(→血清カリウム値・心電図)といった形で、看護介入の優先順位を問われることも多いです。