このときのAさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。 | MyMerci
一般・状況設定問題
問題

このときのAさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。

Aさん(77歳、男性)は、妻(79歳)と2人暮らし。5年前にアルツハイマー型認知症と診断された。通所の初日、Aさんは、初めての場所に戸惑った様子で、施設内を歩き回っている様子がみられた。通所介護でレクリエーションが始まり、Aさんは周囲を見ていたが、しばらくするとそわそわしながら席を離れていなくなった。その後、看護師は、介護職員からAさんがゴミ箱に排尿していたという報告を受けた。
解説
Aさんは自宅ではトイレで排泄できているため尿意・便意はあります。初めての施設でトイレの場所がわからずゴミ箱で排泄してしまったと考えられるため、トイレの場所を覚えてもらうまで同行・誘導することが最も適切です。

詳細解説

核心解説 この問題は、認知症(特にアルツハイマー型認知症 (Alzheimer’s Disease))の初期~中期にある高齢者が、初めての環境(通所介護)で見せる適応困難な行動(徘徊、不適切な場所での排泄)への看護対応を問うています。
核心概念の分析 (Key Concept): Aさんは自宅では適切にトイレで排泄できていることから、尿意・便意の感覚(知覚)自体は保たれていると考えられます。問題は、認知機能低下(見当識障害 (Disorientation))により、初めて訪れた施設のトイレの場所が「どこにあるのか」「どのように行けば良いのか」がわからない(空間認知・手順の想起困難)ために、切迫した尿意に対応できず、目に入った「ゴミ箱」を便器と誤認・代用してしまった可能性が高いです。
正解の根拠 (Answer Rationale): 最重要! この状況で最も適切な対応は、トイレの場所を実際に示しながら同行し、排泄行動を誘導・支援することです(選択肢4)。Aさんは「トイレに行きたい」という欲求はあるものの、「どうすれば良いか」という実行機能障害(遂行機能障害 (Executive Dysfunction))があるため、看護師が「一緒に行く」「声をかける」という物理的・言語的サポート(プロンプティング)を提供することで、安全かつ尊厳を保った排泄を支援できます。これは、認知症ケアの基本である「環境調整」と「人的支援」の原則に合致します。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- 混同注意! ①番「目立たない場所にゴミ箱を置く」は、問題行動を起こさせないための環境調整に見えますが、根本的な解決になりません。ゴミ箱を隠しても、尿意があればAさんは別の不適切な場所(植木鉢、部屋の隅)で排泄する可能性が高く、むしろ事故や転倒リスクを高めます。対応の焦点は「ゴミ箱をなくすこと」ではなく「正しい場所(トイレ)で排泄できるように導くこと」です。
- ②番「1時間ごとに尿意を確認する」は、時間で区切ったルーティンケアですが、Aさんの尿意は一定間隔で来るとは限らず、「確認」だけではAさんの切迫したニーズに即座に応えられません。また、確認のタイミングを外すと、やはり不適切な排泄が発生します。能動的な誘導ではなく、受動的な確認に留まる点で不十分です。
- ③番「パンツ型おむつを勧める」は、尿失禁が確立した状態や、頻回の失敗で本人・介護者の負担が大きい場合の最終手段です。Aさんは自宅で自立排泄が可能なため、この段階でおむつを導入することは、残存機能(トイレで排泄する能力)の低下を促進し、本人の尊厳を損なう可能性があります。禁忌ではありませんが、第一選択としては不適切です。
関連概念の整理 (Related Concepts): 行動・心理症状(BPSD: Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)の一つである「不適切な排尿」への対応です。BPSDへの対応原則は「原因(トリガー)の除去・調整」と「環境適応の支援」です。本例では、原因は「トイレの場所がわからないこと(環境の変化)」であり、対応は「同行誘導(人的支援)」です。また、認知症のアセスメントツールである「NMスケール」や「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」も併せて確認しましょう。Aさんの場合、排尿行為は自分で行えるが、場所の見当識が低下しているため「IIb」程度の自立度と推測されます。 概念整理: 認知症 (Dementia)行動・心理症状 (BPSD) 対応の基本原則は「残存機能の活用」と「環境調整による補完」です。本例では、Aさんは「尿意がある」という機能が残っているため、それを活かすために「トイレの場所を教える」「一緒に行く」という環境・人的補完が必要です。 一目で比較!:
対応方法効果問題点
④ トイレに同行する残存機能を活かし尊厳を守るスタッフのマンパワーが必要
① ゴミ箱を隠す一時的に誤認を防げる根本解決にならず別の場所で失敗するリスク
③ おむつを勧める失敗を防ぎやすい残存機能低下・尊厳損傷・皮膚トラブルリスク
看護過程ポイント: アセスメント: 「なぜこの場所で排泄したのか」を行動の背景(環境変化、見当識障害、焦燥感)から評価する。看護診断: 「トイレでの排泄セルフケア不足 (Toileting Self-Care Deficit)」 または 「転倒リスク状態 (Risk for Falls)」(不適切な場所での排泄は転倒・外傷リスクを高める)。計画: 環境に慣れるまでは、排泄のサインを見逃さず、積極的にトイレへ誘導する。評価: トイレの場所を記憶できるようになったか、失敗の頻度が減少したか。 暗記のコツ: 「BPSD対応の3つの『ま』:「ま」ねない(否定しない)「ま」かせない(放置しない)「ま」もる(安全と尊厳を守る)」と覚えましょう。本例では「まかせない=同行誘導」が正解です。 国試頻出ポイント: 認知症のBPSD対応は頻出テーマです。特に、「環境変化による混乱(初めての場所、入院、入所)」と「残存機能を活かした支援(トイレ誘導、見守り、プロンプティング)」の組み合わせは、状況設定問題(事例問題)で必ずと言って良いほど出題されます。薬物療法(抗精神病薬、抗認知症薬)だけでなく、非薬物療法(環境調整、生活支援)が優先される点を押さえましょう。 出題パターン注意!: この問題は「初めての環境でのBPSD」というシンプルな事例ですが、発展系として「夜間せん妄 (Nighttime Delirium)との鑑別」や「介護負担が大きい家族への支援」、「身体拘束の回避方法」を問う複合問題に変化します。単独の知識ではなく、状況に応じた優先順位を考えられるようにしましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario): デイサービス初日。Aさんは落ち着かず施設内を歩いています。レクリエーション中、急に席を立ち、トイレとは反対方向の物置付近へ歩いていきます。介護職員が「トイレですか?」と声をかけましたが、Aさんはそのまま進み、物置のゴミ箱に排尿を始めました。
看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment):
1. 観察: Aさんの表情(焦り、困惑)、行動(落ち着きのなさ、特定の方向への移動)、時間帯(食後や水分摂取後)。
2. アセスメント: 排泄サインを見逃していた可能性が高い。Aさんは「トイレに行きたい」という欲求を言語化できず、行動で示していた(徘徊・離席)。
3. 報告と連携: 介護職員に対し「Aさんが落ち着かない様子を見せたら、まずトイレを誘導してみてください。場所を覚えるまでは、声かけと同行を徹底しましょう」と具体的な対応方法を共有します。
4. 介入: 恥ずかしい思いをさせないよう、穏やかに「お手洗いにご案内しますね」と声をかけ、一緒にトイレへ歩きます。トイレの場所を「ここがトイレですよ」と指さし、次の利用時には「さっき行った場所、覚えていますか?」と促します。
5. 評価: 数日後、Aさんが自分でトイレに行けるようになったか、失敗の頻度を確認します。
患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): 転倒リスク 不適切な場所での排泄行為は、バランスを崩しやすく転倒の危険があります。また、排尿後に尿で床が滑りやすくなるため、清掃を徹底し二次的な事故を防ぎます。Aさんを叱責したり、恥をかかせたりしないよう、スタッフ全員で共有することが重要です。 看護プロトコル: トイレ誘導のSBAR報告例:「S(状況):Aさん、デイサービス初日。トイレが分からずゴミ箱に排尿しました。B(背景):自宅ではトイレ排泄自立。A(アセスメント):環境変化による見当識障害のため。R(提案):トイレの場所を覚えるまで、排泄サイン時の積極的な誘導を継続したい。」 先輩看護師の一言: 「認知症の方が『わざと』粗相をするわけではありません。『トイレに行きたい』という気持ちはあるのに、『どこにあるのか』『どうやって行くのか』がわからなくなっているんです。私たち看護師の役割は、その『わからなさ』を補って、その方の尊厳と安全を守ること。国試でも、『なぜそうなったか』を考えるクセをつけてくださいね!」

重要概念

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