核心解説
この問題は、
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)における感染症の分類を問うています。感染症法では、病原体の感染力や重篤性に基づいて感染症を
1類から5類に分類し、それぞれに応じた予防計画、発生時の届出、入院勧告、就業制限などの対策を規定しています。この問題の核心は、
重症急性呼吸器症候群 (SARS)がどの分類に該当するかを正確に把握することです。SARSは2003年に世界的大流行を引き起こした新興感染症であり、その高い致死率と感染力から、日本では二類感染症に指定されています。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 重症急性呼吸器症候群 (SARS)は
二類感染症に分類されます。二類感染症は、感染力、罹患した場合の重篤性から総合的に判断し、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症と定義されています。具体的な疾患としては、
SARSの他に、
中東呼吸器症候群 (MERS)、
結核 (Tuberculosis)、
鳥インフルエンザ (H5N1, H7N9等)が該当します。二類感染症では、患者発生時の
届出義務(診断後直ちに最寄りの保健所へ届け出)、
入院勧告・措置(特定の病院への入院が必要)、
就業制限(感染のおそれがある業務への従事禁止)などの強い措置がとられます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 各感染症の分類は、感染力と重篤性のバランスで決まります。
- ①
一類感染症:感染力が極めて強く、重篤な経過をたどる最上級の感染症です。
エボラ出血熱 (Ebola Virus Disease)、
ペスト (Plague)、
痘そう (Smallpox)などが該当し、SARSはこれらよりは若干リスクが低いと評価されています。SARSを一類と誤って覚えるのは間違いです。
- ③
三類感染症:主に
腸管感染症を対象としています。
コレラ (Cholera)、
腸管出血性大腸菌感染症 (EHEC)、
細菌性赤痢 (Shigellosis)などが該当します。呼吸器感染症であるSARSは分類されません。
- ④
四類感染症:動物や飲食物などを介してヒトに感染する
人獣共通感染症 (Zoonosis)が中心です。
狂犬病 (Rabies)、
マラリア (Malaria)、
デング熱 (Dengue Fever)、
レジオネラ症 (Legionellosis)などが該当します。SARSはヒトからヒトへの飛沫感染・接触感染が主体であり、人獣共通感染症の枠組みでは捉えられません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
感染症法の分類を整理すると以下の通りです。
| 分類 | 特徴 | 代表疾患 |
| 一類感染症 | 極めて高い感染力と重篤性 | エボラ出血熱、ペスト、痘そう、クリミア・コンゴ出血熱、ラッサ熱、マールブルグ病 |
| 二類感染症 | 高い感染力と重篤性。入院勧告あり | SARS、MERS、結核、鳥インフルエンザ (H5N1, H7N9) |
| 三類感染症 | 腸管感染症。食中毒様の集団発生に注意 | コレラ、腸管出血性大腸菌感染症、細菌性赤痢、腸チフス、パラチフス |
| 四類感染症 | 人獣共通感染症。動物・昆虫媒介 | 狂犬病、マラリア、デング熱、レジオネラ症、つつが虫病、重症熱性血小板減少症候群 (SFTS) |
| 五類感染症 | 国が発生動向を把握すべきもの | インフルエンザ、麻疹、風疹、百日咳、梅毒、後天性免疫不全症候群 (AIDS) |
| 新型インフルエンザ等 | 新型インフルエンザなど。別枠で強力な措置あり | 新型インフルエンザ、再興型インフルエンザ |
概念整理
感染症法の分類は、
「感染力の強さ」と
「症状の重篤性」の2軸で理解すると覚えやすいです。一類が最強で、数字が大きくなるにつれて対策が緩和される傾向にあります。ただし、二類と一類は入院勧告など強い公権力の行使が認められる点で共通しています。SARS、MERS、結核は「空気感染または飛沫感染で広がりやすく、致死的になりうる」という共通点から、二類感染症にまとめられています。
一目で比較!
混同注意! 特に混同しやすいのは「一類感染症」と「二類感染症」です。一類は「バイオテロにも使われるような極めて危険なウイルス」、二類は「結核のように日本でも身近に存在しうるが、重篤な呼吸器感染症」とイメージすると区別しやすいです。また、三類感染症は「下痢が主症状」と覚えましょう。
看護過程ポイント
-
アセスメント:患者の症状(発熱、呼吸困難、咳嗽)、渡航歴、接触歴(感染症患者との接触)を詳細に聴取します。SARSが疑われる場合、
直ちに個室隔離し、
空気感染・飛沫感染・接触感染対策を開始します。
-
看護診断:
「感染症の伝播リスク状態」が最優先の看護診断となります。
-
計画・実施:
N95マスクの着用、ガウン、手袋、ゴーグルなどの個人防護具 (PPE) の適切な着脱が必須です。患者への説明と心理的ケアも重要です。
-
評価:感染対策の遵守状況、患者の状態変化(SpO2低下など)、隔離中のストレス状態を評価します。
暗記のコツ
「SARSとMERSは、呼吸器がツー(二)でやられる」→二類感染症。
「一類はエボラ、ペスト、痘そう。バイオテロで出てくる怖いやつ」
「三類はコレラ、赤痢、腸チフス。おなか(腸)の病気」
「四類は動物からうつる。デング熱、マラリア、狂犬病」
「五類は麻疹、風疹、インフルエンザ。みんながよくかかる身近なやつ」
国試頻出ポイント
感染症法の分類は、看護師国家試験で
High Yieldテーマです。特に、「SARS」「MERS」「結核」が二類感染症であること、「エボラ出血熱」が一類感染症であることは、頻出です。また、近年では「鳥インフルエンザ (H5N1, H7N9)」が二類感染症に追加されたことも併せて覚えておきましょう。問題文では「感染症法において正しいのはどれか」という形で、複数の分類と疾患を結びつける問題が出題されます。
出題パターン注意!
単純な分類を問う問題(今回の問題)から、「SARS患者が発生した場合の対応として適切なのはどれか」のような
状況設定問題に発展します。後者の場合、「入院勧告ができる」「個室隔離が必要」「N95マスクを着用する」「届出は診断後直ちに」といった具体的な対応が問われます。分類を覚えるだけでなく、その分類に基づく
具体的な看護介入まで結びつけて学習することが合格への鍵です。