核心解説
この問題は、
小児の脱水 (Dehydration in Children) の重症度評価と、それに基づく適切な看護介入(輸液療法 (Fluid Therapy))を問うています。
小児は体重に対する水分量が多く、代謝回転が速いため、脱水の進行が急速であり、重症化しやすいことが病態生理の基本です。成人よりも早期に適切な評価と介入が必要であり、特に乳幼児・学童前期では、症状の変化を注意深く観察する看護判断力が求められます。本症例では「皮膚ツルゴール低下」「眼窩陥凹」という2つの重要な徴候が示されており、これらは
最重要! 中等度脱水 (Moderate Dehydration) の特徴的な身体所見です。さらに「元気がない」「口渇」という情報を総合すると、経口摂取が十分にできない状態と判断され、経口補水液 (Oral Rehydration Solution, ORS) の投与では不十分であり、
静脈内輸液 (Intravenous Infusion) による補充が必要となります。経口補水は、軽度から中等度脱水であっても、意識が清明で飲める状態の子どもに適用される第一選択であり、本症例のように全身状態が不良な場合は、医師への報告と静脈路確保の準備が看護師の優先行動となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は⑤番です。理由は以下の通りです。
1.
最重要! 皮膚ツルゴール低下と眼窩陥凹の存在は、体重減少率で約5~10%に相当する
中等度脱水 (Moderate Dehydration) を強く示唆します。
2. 症例では「元気がない」と記載されており、
全身状態の不良(嗜眠傾向)が認められます。この状態では、経口的に水分を安全に摂取させることは誤嚥や嘔吐のリスクが高く、不適切です。
3. 従って、最優先の看護介入は
静脈内輸液 (Intravenous Infusion) の準備と、医師への迅速な報告です。看護師は輸液ポンプや輸液セット、ルート確保のための物品を準備し、医師の指示を仰ぎます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番:
混同注意! 皮膚ツルゴール低下と眼窩陥凹は中等度脱水の所見であり、高度脱水(意識障害、ショック、末梢冷感、尿量著減など)とは区別されます。また、選択肢の「静脈内輸液を開始する」は看護師の独立行為ではなく、医師の指示が必要です。従って、内容が不適切です。
②番:中等度脱水の評価自体は正しいですが、経口補水液を少量ずつ与えることは、全身状態が不良(元気がない)のため禁忌です。誤嚥や嘔吐のリスクを高めるため、誤りです。
③番:皮膚ツルゴール低下と眼窩陥凹は軽度脱水では通常認められません。軽度脱水は口渇のみで、身体所見に乏しいため、アセスメントが誤っています。
④番:脱水の程度を高度と誤認している点、および「一気に与える」という対応は誤嚥・嘔吐を誘発し、極めて危険です。また高度脱水では経口補水は禁忌です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
小児の脱水重症度は、体重減少率、身体所見(口渇、皮膚ツルゴール、眼窩陥凹、粘膜乾燥、尿量、意識状態)で評価します。軽度(3-5%)、中等度(5-10%)、高度(10%以上)と分類され、治療法は経口補水(ORS)から静脈内輸液へと段階的に上がります。また、低張性脱水、等張性脱水、高張性脱水といった電解質異常のタイプも併せて押さえておくことが国試では重要です。
概念整理: 小児脱水の重症度は、
身体所見(皮膚ツルゴール・眼窩陥凹・粘膜乾燥・尿量・意識状態)で総合評価。経口補水は軽度~中等度脱水で意識清明・飲水可能な場合に適用。全身状態不良(嗜眠・嘔吐反復・意識障害)は静脈内輸液の絶対適応。
一目で比較!:
| 脱水重症度 | 身体所見の特徴 | 体重減少率 | 治療法 |
|---|
| 軽度 (Mild) | 口渇のみ。皮膚ツルゴール正常、眼窩陥凹なし | 3-5% | 経口補水液(ORS) |
| 中等度 (Moderate) | 皮膚ツルゴール低下・眼窩陥凹・粘膜乾燥・口渇・尿量減少 | 5-10% | 経口補水(可能なら)または静脈内輸液 |
| 高度 (Severe) | 意識障害・ショック・末梢冷感・尿量著減・脈拍微弱 | 10%以上 | 静脈内輸液(緊急) |
看護過程ポイント:
アセスメント:バイタルサイン(特に脈拍・血圧)、体重測定、皮膚の状態(弾力性・乾燥)、尿量と回数、意識レベル(JCS・GCS)、口渇の有無を経時的に評価。
看護診断:
体液量不足 (Deficient Fluid Volume)、
誤嚥リスク状態 (Risk for Aspiration)、
非効果的な健康維持 (Ineffective Health Maintenance)。
計画:静脈内輸液の安全な実施とモニタリング、経口摂取の安全な再開基準の設定。
実施:輸液ラインの管理、バイタルサイン・尿量の頻回観察、保護者への説明(病状・治療・経過観察の重要性)。
評価:バイタルサインの安定、尿量の回復、皮膚ツルゴールの改善、意識レベルの正常化。
暗記のコツ: 「ツルゴール低下=5%以上の脱水(中等度以上)」と覚えましょう!「口渇だけが軽度、ツルゴールと眼窩は中等度、意識と血圧が高度」と唱えると整理しやすいです。
国試頻出ポイント: 小児の脱水は頻出テーマです。特に「身体所見から脱水の程度を判断する」問題と、「治療法(経口 vs 静脈内)の選択」を組み合わせた事例問題がよく出ます。皮膚ツルゴールと眼窩陥凹の所見を見たら、必ず中等度以上と考えてください。また、経口補水が禁忌となる状態(意識障害・嘔吐反復・全身状態不良)もセットで暗記しましょう。
出題パターン注意!: 「6歳男児、嘔吐と下痢、元気がない、皮膚ツルゴール低下、眼窩陥凹」という情報から、中等度脱水と判断し、さらに「元気がない」から経口補水は不適切、と二段階の判断を求められる問題です。単に脱水の重症度を暗記するだけでなく、全身状態を踏まえた看護判断の優先順位が問われています。