核心解説
この問題は、小児の
アセトン血性嘔吐症 (自家中毒 / Cyclic Vomiting Syndrome) における急性期対応の優先順位を問うています。本症は、感染症やストレスなどを契機に、ケトン体の上昇による代謝性アシドーシスが進行し、反復性の嘔吐と全身倦怠感を呈する病態です。
核心概念の分析: この患児は「嘔吐持続」と「ぐったり」という状態です。これは、経口摂取が全くできず、
脱水 (Dehydration) と
ケトアシドーシス (Ketoacidosis) が進行し、全身状態が悪化しているサインです。この病態では、最優先すべきは
最重要! 循環血液量の確保と代謝性アシドーシスの補正 です。
正解の根拠: ③の「絶食とし、静脈内輸液を開始する」が正解です。嘔吐が続いているため、経口補水は困難であり、誤嚥のリスクも高まります。絶食により胃腸を安静にし、
静脈内輸液 (Intravenous Infusion) で水分と電解質を補給することで、循環動態を安定化させ、ケトン体の排泄を促進しアシドーシスを改善します。ぐったりしている状態は、
緊急性が高い と判断し、直ちに医師へ報告し輸液開始の指示を受けるべき状況です。
誤答の分析:
①
混同注意! 精神的な安静は重要ですが、全身状態が悪化している急性期では、まず身体的な生命維持(輸液)が優先です。面会制限は、輸液開始後の回復期に検討します。
② 経口補水液 (Oral Rehydration Solution / ORS) は軽症〜中等症の脱水に有効ですが、「嘔吐が続いている」状態では経口摂取は禁忌に近く、誤嚥や嘔吐の悪化を招くリスクがあります。現時点では適切ではありません。
④ 腹部X線撮影は、腸閉塞や消化管穿孔など、他の器質的疾患の鑑別に必要な場合があります。しかし、アセトン血性嘔吐症の典型的な経過と臨床所見から診断は可能であり、バイタルサインの安定化を図る輸液が優先されます。
⑤ アセトアミノフェン (Acetaminophen) 坐薬は、発熱や疼痛に対する対症療法であり、今回の病態(脱水とアシドーシス)の根本治療にはなりません。
関連概念の整理: 小児のアセトン血性嘔吐症と、
糖尿病性ケトアシドーシス (Diabetic Ketoacidosis / DKA) は、どちらもケトアシドーシスを来たしますが、原因と初期対応が異なります。DKAではインスリン投与が必須ですが、自家中毒では糖質を含む輸液(例:維持液)でケトン体の産生を抑制します。この違いは国試頻出です。また、
混同注意! 「自家中毒」という名称から中毒(薬毒物)を連想しないようにしましょう。
概念整理
アセトン血性嘔吐症(自家中毒)は、ケトン体上昇 → 代謝性アシドーシス → 嘔吐・倦怠感というサイクルを形成します。治療の基本は「絶食 + 輸液」によるケトン体のクリアランスです。
一目で比較!
| 状態 | 対応 | 優先度 |
|---|
| 嘔吐持続 + ぐったり | 絶食・静脈内輸液 | 最優先 |
| 嘔吐なく軽度脱水 | 経口補水液(ORS) | 高 |
| 発熱・疼痛あり | アセトアミノフェン坐薬 | 中等度 |
看護過程ポイント
アセスメント: バイタルサイン(特に脈拍・血圧・呼吸数・意識レベル)、皮膚ツルゴール、口渇の有無、尿量、嘔吐の頻度と性状(胆汁性?コーヒー残渣様?)。
看護診断:
「体液量不足 (Deficient Fluid Volume)」、「嘔吐に関連した栄養摂取不足リスク」。
計画・実施: 医師の指示に基づき、安全な静脈路確保と輸液ポンプの管理。嘔吐時の体位(側臥位または回復体位)の保持と誤嚥予防。
評価: 輸液開始後の嘔吐の減少、尿量の増加、意識レベルの改善、アセトン臭の消失。
暗記のコツ
「ぐったり + 嘔吐 → まずは点滴!」と覚えましょう。経口は「口から飲める子」に限る、と暗記すると間違えにくいです。
国試頻出ポイント
この問題は「小児の脱水・アシドーシス」の急性期対応の典型例です。特に「ぐったり(意識レベルの低下)」と「嘔吐持続」の組み合わせは緊急性の高いサインとして頻出。状況設定問題で「経口補水液を与えた」という選択肢は、誤答の定番なので要注意。
出題パターン注意!
単純知識問題(「アセトン血性嘔吐症で優先される治療は?」)から、事例問題(「患児がぐったりしている場合の看護師の対応は?」)への発展を想定しましょう。