核心解説
この問題は、
介護老人保健施設(老健)における
転倒予防のための適切な看護対策を問うています。高齢者の転倒は
骨折(特に大腿骨頸部骨折)や
頭部外傷のリスクを高め、その後の
ADL低下や
QOL低下に直結します。転倒予防は
最重要!施設看護の基本であり、身体拘束は最終手段であり、環境調整や見守りによる予防が優先されます。
正解の根拠 (Answer Rationale):
①番が適切です。転倒予防の基本は、
個別性を考慮した環境調整(手すり設置、段差解消、適切な照明、滑り止めマットなど)と、
入所者の移動能力や認知機能に応じた見守り計画を立案・実施することです。画一的な対策ではなく、一人ひとりのリスクアセスメントに基づく介入が求められます。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ②番:ベッド柵(サイドレール)をすべて外すことは、ベッドからの転落リスクを高め、かえって危険です。ベッド柵は、利用者の状態に応じて適切に使用する必要があります。完全に外すのではなく、半柵にするなど調整が必要です。
③番:夜間の完全な暗闇は、視覚情報を奪い、転倒リスクを著しく高めます。夜間は、足元を照らす
常夜灯(ナイトランプ)を設置し、トイレへの移動を安全に支援することが重要です。
④番:ナースコールを遠くに設置することは、入所者がコールを押すために無理に手を伸ばしたり、立ち上がろうとしたりする原因となり、転倒リスクを増大させます。ナースコールは、
容易に手が届く場所に設置し、使用方法を分かりやすく説明する必要があります。
⑤番:
最重要! 身体拘束は、転倒予防のための第一選択肢ではありません。身体拘束は、
入所者の尊厳を損ない、心身機能を低下させるため、
介護保険法や
身体拘束廃止の理念に基づき、やむを得ない場合でも、最小限かつ一時的に、医師の指示や施設内の手続き(家族同意など)を経て実施するものです。
関連概念の整理 (Related Concepts):
転倒予防には、
HDS-Rや
MMSEによる認知機能評価、
TUGテスト(Timed Up and Go test)や
歩行速度による移動能力評価、
Morse Fall Scaleなどの転倒リスクアセスメントツールを用いた客観的評価が重要です。また、
薬剤の影響(特に睡眠薬、降圧薬、向精神薬)も転倒リスクを高めるため、多職種(薬剤師、医師)と連携した薬剤管理も必須です。
概念整理:
介護保険施設(老健)における転倒予防は、
環境整備 + 個別見守り + 身体機能維持 + 薬剤管理 + 多職種連携が基本。身体拘束は最終手段。
一目で比較!:
| 対策 | 適切か | 理由 |
| 移動能力に応じた環境調整と見守り | 適切 | 個別性に基づいた転倒予防の基本 |
| ベッド柵をすべて外す | 不適切 | ベッドからの転落リスク増大 |
| 完全な暗闇 | 不適切 | 視覚情報を奪い転倒リスク増大 |
| ナースコールを遠くに設置 | 不適切 | 無理な姿勢を強いる |
| 身体拘束の常時実施 | 不適切 | 尊厳侵害、心身機能低下、法的問題 |
看護過程ポイント:
アセスメント:入所者の移動能力、認知機能、服薬状況、転倒歴を評価。
看護診断:「転倒リスク状態」。
計画:個別的な環境調整、見守り頻度の設定、多職種カンファレンスの開催。
実施:環境調整、見守り、排泄誘導、フットケア。
評価:転倒発生件数の推移、入所者のADL維持状況。
暗記のコツ: 「転倒予防の3本柱」は「
環・見・薬」:
環境(手すり・照明・段差)、
見守り(個別性に応じた)、
薬剤管理(多剤併用・副作用)。
国試頻出ポイント: 「転倒予防」は、
毎年必出のテーマ。特に「
身体拘束は転倒予防にならない」「
環境調整の具体例」「
高齢者の転倒リスク因子(筋力低下、視力低下、薬剤、認知症)」が頻出。
出題パターン注意!: 単純な知識問題だけでなく、「転倒後の対応(観察項目、報告の優先順位)」「転倒リスクの高い入所者へのケア計画の立案(事例問題)」として出題されることが多い。例えば、「夜間に頻回にトイレに行く認知症の入所者への具体的な介入」など、状況設定問題への対応が必要。