75歳の男性。パーキンソン病で通院中である。最近、歩行時のすくみ足が目立ち、転倒を繰り返すようになった。外来で看護師が患… | MyMerci
治療を受ける高齢者への看護
問題

75歳の男性。パーキンソン病で通院中である。最近、歩行時のすくみ足が目立ち、転倒を繰り返すようになった。外来で看護師が患者に行う指導として最も適切なのはどれか。

解説
パーキンソン病のすくみ足に対しては、床にテープや線を引く、音楽に合わせて歩くなど、視覚的・聴覚的な合図(キュー)が有効である。杖の使用はバランス維持に役立つが、すくみ足そのものへの直接的な対応ではない。立ち止まる指導や外出制限はADL低下を招く可能性がある。

詳細解説

核心解説 この問題は、パーキンソン病 (Parkinson's Disease) 患者に見られる特異的な歩行障害である「すくみ足 (Freezing of Gait)」に対する看護介入を問うています。パーキンソン病は、黒質緻密部のドパミン神経細胞の変性・脱落により、無動・寡動 (Akinesia/Bradykinesia)、振戦、固縮、姿勢反射障害が生じます。すくみ足は、特に狭い場所や方向転換時、目標物(ドアなど)に近づいた際に出現しやすく、転倒の直接的な原因となります。病態生理に基づくと、患者は自らの運動を開始するための「内的な合図」が不足しているため、最重要! **視覚的 (Visual Cue)** または **聴覚的 (Auditory Cue)** な「外的な合図 (External Cue/Stimulus)」を与えることで、運動を円滑に開始・継続できるようになります。 正解の根拠 (Answer Rationale) 選択肢③「すくみ足が出現したら、床に線を引くなど視覚的な合図を利用するよう指導する。」が最も適切です。これは、パーキンソン病患者の運動開始困難に対する、**エビデンスに基づいたキューイング療法 (Cueing Therapy)** の基本です。床にテープやチョークで線を引く、床に置いた目標物をまたぐ、メトロノームや音楽に合わせて歩くなどの方法が有効です。これは、視覚情報が大脳基底核をバイパスして運動皮質を活性化し、歩行パターンを誘発するという神経生理学的メカニズムに基づいています。 誤答の分析 (Distractor Analysis) 混同注意! ① 歩行時は杖を使用するよう指導する。
杖はバランス維持や転倒予防に有効な補助具ですが、すくみ足の根本的な原因(運動開始困難)に対する直接的な対策ではありません。バランス障害が主体の場合に優先されます。 ② すくみ足が出現したら、その場で立ち止まるよう指導する。
立ち止まることは転倒を直接予防するかもしれませんが、すくみ足の症状を緩和したり、歩行を再開したりするための有効な方法ではありません。むしろ、患者の活動性を低下させ、社会参加を阻害する恐れがあります。 ④ 転倒予防のため、外出を控えるよう指導する。
転倒リスクを考慮することは重要ですが、外出制限は QOL (Quality of Life) の著しい低下と廃用症候群 (Disuse Syndrome) を引き起こす可能性が高く、推奨されません。環境調整や適切なキューイングで安全な歩行を支援すべきです。 ⑤ 歩行訓練は専門の施設で行う必要があると説明する。
専門的なリハビリテーションは有効ですが、日常生活の中で患者自身や家族が実践できる方法を指導することが、外来・在宅看護の重要な役割です。全てを施設に委ねる必要はありません。 関連概念の整理 (Related Concepts) パーキンソン病の三大症状は「振戦 (Tremor)」、「固縮 (Rigidity)」、「無動・寡動 (Akinesia/Bradykinesia)」です。歩行障害としては、すくみ足の他に、「小刻み歩行 (Festinating Gait)」(歩幅が狭くなり加速する)や「突進現象 (Propulsion)」(前方に突進する)があります。これらの症状に対しては、リハビリテーション、薬物療法(L-ドパなど)、そして深部脳刺激療法 (Deep Brain Stimulation, DBS) などの外科的治療も選択肢となります。看護師は、患者のADLとQOLを最大限に維持するために、環境調整と具体的な歩行方法の指導が求められます。
概念整理 - 病態: ドパミン不足 → 大脳基底核の機能不全 → 運動の開始・遂行障害 (すくみ足)。 - 介入の原則: 内的合図が不足している → 外的合図(視覚・聴覚)で代償する。 - すくみ足の特徴: 歩行開始時、方向転換時、狭い場所、目標物直前で出現しやすい。
一目で比較!
症状特徴有効なキュー
すくみ足 (Freezing)足が床に張り付いたように動かせない床の線・目標物をまたぐ (視覚)
小刻み歩行 (Festination)歩幅が狭く、前傾姿勢で加速する「大きく歩いて」「かかとから着地」の声かけ (聴覚)
姿勢反射障害押されるとバランスを崩し転倒しやすい杖・歩行器の使用、環境整備

看護過程ポイント - アセスメント: すくみ足が出現する状況(場所、時間、活動内容)、転倒リスク、患者のADLレベル、服薬状況(特にL-ドパのオン・オフ現象との関連)。 - 看護診断: 転倒リスク状態 (Risk for Falls) / 身体可動性障害 (Impaired Physical Mobility)。 - 計画・実施: 患者・家族と共に、自宅で実践可能な視覚的キュー(床のテープ、模様、家具の配置)を具体的に計画する。歩行補助具の適切な選択と使用方法を指導する。服薬時間と症状の変動を記録し、タイミングに合わせた活動を支援する。 - 評価: 転倒の有無、すくみ足の出現頻度・重症度の変化、患者の活動範囲・QOLの変化。
暗記のコツ - 「**パ**ーキンソン病の**す**くみ足には**キュー(合図)**」と覚えましょう。「**パ**」と「**す**」で「**パス**」→ 患者の運動を「**パス**(通過)」させるための「**キュー**」。 - キューには「**見**る(視覚)」「**聞**く(聴覚)」の2種類があると意識しましょう。
国試頻出ポイント - 「すくみ足」と「小刻み歩行」の鑑別と、それぞれに有効な看護介入が問われます。 - 転倒予防のための「安静・外出制限」は常に誤答となる傾向が強いです。患者のQOLと活動性を最大限に尊重する視点が重要です。 - 「薬の効果が出ている時間帯(オン時)に活動を計画する」という時間管理の視点も併せて学習しましょう。
出題パターン注意! - 単純知識問題では「すくみ足への対応として適切なのは?」と問われます。 - 状況設定問題では、「自宅で転倒を繰り返すパーキンソン病患者への訪問看護師の指導」という形で発展します。その際、家族を含めた環境調整(段差の解消、手すりの設置、床の模様替え)や、具体的な声かけの方法(「右足、左足」「線をまたいで」など)まで問われる可能性があります。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
75歳男性、パーキンソン病歴8年。現在はL-ドパ製剤を内服しながら、デイサービスを週2回利用し、妻と二人暮らし。最近、自宅の廊下や玄関の上がり框で「足が動かなくなる」と訴え、先週も玄関で転倒しそうになった(幸いケガはなし)。今日、外来受診時に看護師に「家でできる転ばない方法はありませんか」と相談がありました。 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment) 1. 観察・アセスメント: まず、患者の実際の歩行状態を観察します(可能であれば診察室内で)。すくみ足が出現する具体的な場面(廊下の曲がり角、トイレのドア前、玄関の段差)を確認します。服薬時間(何時に薬を飲むと、何時間後に効果が切れるか)を聴取し、症状の日内変動(ウェアリングオフ現象)を評価します。 2. 計画・介入: - 最重要! 具体的な視覚的キューを指導します。「自宅の廊下や玄関に、縦の線(目印になるテープ)を1m間隔で貼ってみましょう。その線を『またぐ』ように意識して歩くと、足がスムーズに出やすくなります。」 - 家族(妻)にも協力を仰ぎ、「すくみ足が出たときは、『右、左』と声をかけたり、足元に『またぐ目標』を置いてあげてください。」と指導します。 - 歩行補助具として、T字杖や歩行器の適応を検討します。バランス障害が強い場合は歩行器が安全ですが、すくみ足が悪化する場合はT字杖の方が良いこともあります。 - 転倒リスクを軽減するため、玄関の段差にスロープを設置する、廊下の物を片付けるなどの環境調整を提案します。 3. 評価・フィードバック: 次回受診時に、実践した結果(転倒の有無、すくみ足の変化)を確認し、必要に応じて方法を調整します。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions) - 薬効が切れるオフ時の無理な歩行は危険です。 転倒のリスクが高い時間帯(特に朝の起床直後や、薬の効果が切れる就寝前)は、活動を制限するか、家族の介助を得るよう指導します。 - 急に「前に突進する」ような突進現象 (Propulsion) が出現した場合、その場でしゃがむか、壁や家具に手をついてバランスを取る方法を指導します。 - パーキンソン病患者は自律神経障害による起立性低血圧を合併しやすいため、立ち上がる際はゆっくりと行うよう指導します。
看護プロトコル - 観察項目: 歩行状態(すくみ足の有無・程度・頻度、小刻み歩行の有無)、転倒の有無と状況、服薬状況(時間・遵守率・副作用)、ADL(食事・更衣・排泄・入浴)、バランス機能、筋力。 - 報告基準(SBAR): - S: 「A氏、パーキンソン病の患者さんが、自宅で週2回の転倒を繰り返しています。」 - B: 「現在、L-ドパ 100mgを1日3回内服中。歩行時、特に方向転換時にすくみ足が出現し、転倒しています。」 - A: 「自宅環境の調整と、視覚的キューを用いた歩行指導を提案していますが、薬の調整も必要かもしれません。」 - R: 「医師による歩行状態の評価と、薬物療法の見直しをお願いします。」 - 記録のポイント: 具体的な指導内容(「廊下に目印のテープを貼ることを指導」)、患者・家族の理解度と反応、今後のフォローアップ計画。
先輩看護師の一言 「パーキンソン病の患者さんは、『動こうと思っても動けない』もどかしさと不安を抱えています。単に『気をつけて歩いてね』と声をかけるのではなく、『この線をまたぐつもりで歩いてみましょう』と、具体的な方法を一つ提案してあげることが、患者さんの自信と安全につながります。国試では『なぜこのキューが効くのか』を病態から理解しておくと、どんな応用問題にも対応できますよ!」

重要概念

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