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治療を受ける高齢者への看護
78歳の男性。肺炎のため急性期病院に入院中である。抗菌薬治療により症状は改善傾向にあるが、ベッド上で過ごす時間が長く、日常生活動作(ADL)の低下が懸念される。この患者への看護として最も適切なのはどれか。
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1
安静を徹底し、離床は医師の許可が出るまで行わない。
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2
転倒予防のため、歩行訓練は理学療法士のみに任せる。
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3
ADL低下は加齢によるものと説明し、受容を促す。
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4
早期離床と座位保持を促し、ADLの維持・向上を図る。
✓ 正解
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5
退院後の生活を見据え、すぐに介護保険サービスの導入を検討する。
解説
急性期治療中の高齢者では安静による廃用症候群の予防が重要である。症状が改善傾向にあるため、看護師は積極的に早期離床や座位保持を促し、ADLの維持・向上に努める必要がある。安静の継続やADL低下の受容を促す対応は、廃用症候群を進行させる可能性がある。
同じテーマの次の問題80歳の男性が、大腿骨頸部骨折の術後リハビリテーションのため回復期リハビリテーション病棟に入院している。患者は「家に帰りたい」と繰り返し訴えている。退院に向けた看護師の対応として最…この問題が収録された問題集老年看護学KRW 12,900
核心解説
この問題は、高齢者 (Elderly) の廃用症候群 (Disuse Syndrome) 予防と、急性期看護 (Acute Care Nursing) における早期離床 (Early Ambulation) の重要性を問うています。患者は肺炎の急性期治療により症状が改善傾向にあることから、次の段階として身体機能の維持・回復に焦点を当てる必要があります。ベッド上安静の長期化は、筋力低下(特に抗重力筋)、関節拘縮、起立性低血圧、肺活量低下、せん妄リスク上昇など、全身にわたる廃用症候群を引き起こすため、症状が落ち着いた時点で積極的な離床介入が不可欠です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 急性期治療中の高齢者では、安静による廃用症候群の予防が看護の最重要課題の一つです。症状改善傾向にあるため、看護師は積極的に早期離床と座位保持 (Early Ambulation & Sitting Position) を促し、日常生活動作 (ADL: Activities of Daily Living) の維持・向上に努める必要があります。「早期離床」は単なる身体機能の維持だけでなく、精神活動の活性化、せん妄予防、深部静脈血栓症 (DVT) 予防、呼吸器合併症予防にも効果的です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
- ①番の「安静を徹底し、離床は医師の許可が出るまで行わない」は、症状改善傾向にある患者に対して適切ではありません。医師の指示が必要なケースもありますが、看護師の判断で可能な範囲での座位・端坐位など、廃用予防のための介入は積極的に行うべきです。
- ②番の「転倒予防のため、歩行訓練は理学療法士 (PT: Physical Therapist) のみに任せる」は、看護師の役割を過小評価しています。看護師はベッドサイドでの日常生活動作 (ADL) 拡大や歩行介助の第一線の担い手であり、安全に配慮しながら患者の活動を支援する責任があります。転倒リスクを理由に訓練を制限するのではなく、リスクをアセスメントした上で安全な離床を促進することが看護の専門性です。
- ③番の「ADL低下は加齢によるものと説明し、受容を促す」は、疾病治療による改善可能性を無視した誤った対応です。ADL低下は疾病の影響が大きく、適切な介入で改善可能です。「加齢だから仕方ない」と説明することは、患者の回復意欲を削ぎ、廃用症候群を進行させる恐れがあります。
- ⑤番の「退院後の生活を見据え、すぐに介護保険サービスの導入を検討する」は、まだ急性期治療中の患者に対して時期尚早です。まずは現在のADLの維持・向上に取り組み、その結果を見てから退院支援を開始するのが適切なプロセスです。退院後の生活を見据えた準備は重要ですが、急性期の最中に「すぐに」サービス導入を検討する優先順位ではありません。
概念整理
- 廃用症候群 (Disuse Syndrome): 安静や不動状態の長期化により生じる全身性の二次的障害。予防には早期離床・座位保持・関節可動域訓練が有効。
- 急性期看護と廃用予防のジレンマ: 安静が必要な病態(心筋梗塞急性期、脳出血急性期など)では離床が禁忌となるが、肺炎のように症状改善が確認できれば積極的な離床が推奨される。
一目で比較!
| 概念 | 安静のメリット | 早期離床のメリット | 看護判断のポイント |
|---|
| 急性期治療 | 心負荷軽減・酸素需要低下・出血リスク抑制 | 筋力維持・心肺機能改善・血栓予防・せん妄予防 | 症状安定後は速やかに離床計画を開始 |
| 高齢者の肺炎 | 呼吸仕事量軽減・感染拡大防止 | 痰の排出促進・換気改善・ADL維持 | バイタルサイン安定・酸素化改善を確認後離床開始 |
看護過程ポイント
- アセスメント: バイタルサインの安定性、SpO2値、咳嗽・排痰能力、筋力(徒手筋力テストMMT)、現在のADLレベル、転倒リスク評価(Timed Up and Go Testなど)
- 看護診断 (Nursing Diagnosis): 【活動耐性低下 (Activity Intolerance)】または【廃用症候群リスク状態 (Risk for Disuse Syndrome)】
- 計画・実施: 安全な離床プロトコル(ベッドアップ30度→端坐位→立位→歩行)を段階的に実施。バイタルサインと自覚症状(息切れ・めまい)をモニタリングしながら進行させる。
- 評価: 離床中の血圧変動(起立性低血圧の有無)、SpO2低下の有無、疲労度、ADL拡大の達成度
暗記のコツ
「高齢者の安静=廃用の始まり」と覚えてください。特に「肺炎」で入院した高齢者は、急性期治療後に筋力低下(サルコペニア:Sarcopenia) が顕著になりやすいため、「症状改善→すぐ離床」が鉄則です。暗記フレーズ:「肺炎治ったら、まずは座ろう!」
国試頻出ポイント
- 高齢者の急性期入院における廃用症候群予防は、毎年必ず出題される核心テーマです。
- 選択肢に「安静」「離床」「ADL」「廃用症候群」のキーワードが含まれる問題は、必ず「早期離床・ADL維持」が正解になります。
- 混同注意! 「安静が必要な疾患」と「離床が推奨される疾患」の区別を意識しましょう。心筋梗塞急性期・脳出血急性期は安静が優先されますが、肺炎・術後・心不全安定後は早期離床が推奨されます。
出題パターン注意!
この問題は基本知識問題ですが、以下のように状況設定問題に発展します。
【発展事例】「78歳男性。肺炎で入院。抗菌薬投与後、症状改善。バイタルサイン安定、酸素投与不要となった。ベッド上で過ごす時間が長く、ADL低下が懸念される。看護師は離床を試みたところ、患者から『まだしんどい』と言われた。この時、看護師の対応として最も適切なのはどれか。」→ 患者の訴えを尊重しつつ、段階的な座位保持から開始する選択肢が正解となります。
臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)「78歳男性、肺炎で第4病日。解熱し、酸素投与は終了。SpO2 97%(room air)。主治医から『今日から座位許可、可能なら歩行補助も』と指示が出ました。患者さんはベッド上で『まだフラフラする』と消極的です。あなたは看護師としてどのように介入しますか?」
看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)- 1観察ベッドアップ前の血圧(臥位)を測定。座位にする際の血圧変化(起立性低血圧の有無)を確認。患者の表情と訴え(めまい、ふらつき)をアセスメント。
- 2アセスメント症状改善傾向にあり、医師から離床許可も出ている。しかし高齢で長期臥床による筋力低下と起立性低血圧のリスクがある。「しんどい」という訴えは、身体的不調だけでなく心理的不安も含まれる可能性がある。
- 3報告(SBAR)医師に「症状安定しており離床開始可能と判断しましたが、患者が消極的です。バイタルサインは安定。段階的な離床計画を立てていきます」と報告。
- 4介入最重要! いきなり立位や歩行を強いるのではなく、まずギャッジアップ30度→60度→端坐位と段階的に進めます。「まずベッドを少し上げてみましょうね。気分はどうですか?」と声かけしながら、各段階で2~3分間の休息とモニタリングを実施。患者のペースに合わせて進行させ、成功体験を積み重ねることで自信と意欲を引き出します。
- 5評価座位でバイタルサイン安定(血圧低下なし、脈拍増加なし)、自覚症状(めまい・ふらつき)がなければ、次の段階(立位・歩行)へ進む。
患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
- 転倒リスク: 離床開始時は必ず2人介助または歩行器/シルバーカーを使用。ベッド周囲の環境整備(床の物を片付ける、履きやすい靴を準備)を徹底。
- 起立性低血圧 (Orthostatic Hypotension): 急な体位変換は禁忌。段階的なベッドアップと、血圧測定による確認が必須。- 心理的サポート: 「しんどい」「怖い」という患者の気持ちを否定せず、「今日は座るだけでも大丈夫ですよ。少しずつ慣れていきましょうね」と安心感を与える対応が重要。 看護プロトコル- 1観察項目離床前後のバイタルサイン(血圧、脈拍、SpO2)、自覚症状(めまい、胸痛、息切れ)、疲労度(Borg指数や修正Borgスケール)
- 2報告基準(SBAR)「S: 離床開始後、患者がめまいを訴えた。B: バイタルサインは血圧100/60(離床前120/70)、脈拍90bpm、SpO2 96%。A: 起立性低血圧が疑われる。R: 離床は一旦中止し、臥位に戻して経過観察を継続します。」
- 3記録のポイント離床の段階(座位・立位・歩行距離・時間)、患者の反応(自覚症状、バイタルサイン変化)、実施した介入、今後の計画を具体的に記載。
先輩看護師の一言
「急性期病棟で働く看護師は、『治療は医師、リハビリはPT』と思いがちですが、それは大きな間違いです!患者さんの24時間を最も近くで見ているのは看護師です。ベッド上での体位変換、食事時の座位、トイレ誘導など、私たちの一歩一歩の関わりが廃用症候群予防の要になります。『まだ安静が必要』と勝手に判断せず、医師と連携して『できることから始める』姿勢を持ちましょう。患者さんの『できた!』という笑顔が、何よりのやりがいです!」
- 廃用症候群 (Disuse Syndrome) — 安静・不動状態の長期化により生じる全身性の二次的障害。筋力低下、関節拘縮、起立性低血圧、骨粗鬆症、褥瘡、うつ状態などを含む。
- 早期離床 (Early Ambulation) — 手術後や急性期治療後、可能な限り早期に座位や歩行を開始すること。廃用症候群予防、呼吸器合併症予防、深部静脈血栓症予防、精神機能維持に効果的。
- 日常生活動作 (ADL: Activities of Daily Living) — 食事、排泄、入浴、更衣、移動など、日常生活を営む上で基本的な動作。Barthel IndexやFIM (Functional Independence Measure) などで評価される。
- 転倒リスク (Fall Risk) — 患者が転倒する可能性を評価する概念。高齢者、筋力低下、バランス障害、薬剤(特に降圧薬・睡眠薬・向精神薬)、環境要因などがリスク因子となる。
- サルコペニア — 加齢や疾患に伴う筋量・筋力の低下。特に長期臥床により急速に進行し、ADL低下・転倒リスク上昇・生活の質低下につながる。
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